春菜を採もうと、若草色のつぼみを摘みます。
残雪の多い車山高原では、雪が溶け切らないうちに、
雪の下から、淡い緑の総苞に包まれたまま、顔をのぞかせます。

「蕗の薹(ふきのとう)」は、キク科植物の花の典型です。
その花の大まかな特徴は、密に集まった乳緑色の数百の小花群からなる花序と、
その基部を包み込んでいる、葉状の総包片で、頭花を作り上げていることです。

「フキ」は、本来、雌雄同株でした。
やがて雌雄異株に分化しました。
「蕗の薹」の数百の小花群を、よく観察しますと、
雌株の頭花の中央部には、不稔の雄花が数個あります。
雄株の頭花の周辺部には、まれに不稔の雌花が見られます。
「蕗の薹」一つ一つの小花に、進化の歴史が、細やかに刻まれているのです。