西日となって傾く斜光線に映える、銀波が眩しい車山高原のススキ野に、たった一本の黄色いコウゾリナは、あまりにも鮮明過ぎました。

 コウゾリナの名の由来は、茎や葉、総苞片に剛毛が密に生え、触れると「剃られる」ような感触が残るからです。それで「顔剃菜(かおそりな)」「剃刀菜(かみそりな)」「髪剃菜」と書くのです。
 キク科は世界に広く分布し、双子葉植物では最も進化し分化したため、1,100~1,200属に分類されますが、2万3,000を超える種があるため、キク亜科とタンポポ亜科の2亜科に分けられます。
 タンポポ亜科は、コウゾリナ・ニガナ・タンポポなどのタンポポ連だけです。そのいずれの植物体に共通するのが、乳管が発達し、葉や茎をちぎると白い乳液が出ることです。キク亜科の新鮮なレタスも、切ると苦い乳液を滲出します。レタスの和名のチシャ(チサ)は、「乳草(ちちくさ)」の略です。
 キキョウ科のキキョウ・キキョウソウ・ホタルブクロ・ツリガネニンジンなどにも乳管があります。
 コウゾリナの花は、車山高原では、夏から9月頃に、黄色い頭花を咲かせます。そのすべてが舌状花です。しかも、次々と咲かせるので花期が長いのです。
 キク科の例にもれず、コウゾリナの果実も、羽毛状の冠毛となる痩果(そうか)が頭状に密集します。痩果とは、小さな乾燥した果実で、果皮は硬く、ヒマワリの実のように、一つの果実に種子が一つだけしか存在しません。それは、艶やかなキンポウゲ科のセンニンソウなどにもみられます。
 実は、バラ科のイチゴも痩果です。イチゴの実の表面にあるツブツブは種ではなく、その一粒一粒が果実なのです。イチゴの美味しい実は、子房を支える花托(かたく)が進化したのでしょう。花托が成長しイチゴの果実が大きくなれば、痩果の数も多くなります。