行者ニンニクが葉を伸ばし、リョウブの新芽が摘める頃、ニリンソウは渓流沿いや林床に大群落をつくると一斉に咲き始めます。このニリンソウが満開になると、それに呼応するかのようにヤマウド・アザミ・ウバユリなどの山菜が次から次へと芽生えます。
 車山高原に本格的な山菜の季節が到来しました!!
 ニリンソウは、種子による繁殖の他に、地下茎を伸ばす栄養繁殖により群生します。2個または3個の花をつけるといっても、それらは同時に咲くのではなく、数日ほどの日にちをおいて開花します。第1花が見頃であっても、第2花・第3花はまだ咲き始めかツボミにもなっていません。
 新緑のグリーンの中を大河ように流れる白い花の群れは、食用になる豊富な山菜の一つ。ただ、猛毒トリカブトと同じキンポウゲ科、しかも、若葉が似ているばかりか混生している場合が通常、そのため誤食事故が多いのです。花芽や花がなければ、ほとんど識別不能ですから、命をかけてまで食用にするほどの価値はないので、花芽や花を付けた若葉を採るのが原則です。
 花が美しい割にはアクが意外にあり、塩をひとつまみ入れた熱湯で湯がき、冷水にサァーと通して、三杯酢・煮物・汁の実・ごま和え・酢味噌和え・天ぷらなどに、長い花茎は山の幸料理の彩りに添えると感動を誘います。
(プロトアネモニンprotoanemoninは、キンポウゲ科の植物のウマノアシガタ・ニリンソウ・オキナグサ・キツネノボタンなどに含まれる有害な刺激性成分を含む有機化合物です。皮膚や粘膜を刺激し水疱となりかねず、また心臓毒です。ニリンソウの採取時には注意してください。特にキツネノボタンの茎などから出る汁はかぶれるます。生で食べると胃腸が荒れ、おう吐や下痢などの症状を起こすこともあります。
 プロトアネモニンは、根を日干しするとプロトアネモニンは無刺激結晶のアネモニンに変化します。乾燥や煮沸をすれば、プロトアネモニ分子同士が重合polymerizationして、無毒な二量体dimerアネモニンとなります。アネモニンanemoninは生薬イレイセンにも含まれており、キンポウゲ科植物に広く含まれています。生薬イレイセンは、神経痛や月経不順などを改善する薬方に配合され、弱い臭いがありますが、味はほとんどありません。)