戦後、排水に含まれる栄養成分で諏訪湖が富栄養化し、アオコなどが大量発生して、その腐敗で水質が悪化するという状況が続きました。

それが水質汚濁防止法が制定され、厳しい排水規制と排水処理施設の稼働が行われ、水質が改善されました。

その結果、1978年には、透明度が上昇し、平均透明度が100㎝以上となったそうです。

その水質浄化と同時に漁獲量が低下しました。水質浄化により水中の植物性プランクトンが減少し、それを餌とする魚の繁殖を阻んだのです。

実は、時代を遡れば、水質がきれいだった時代の漁獲量は、多くはなく、水質が悪化していた時代の方が、漁獲量も増えていたのです。

諏訪湖では、水質浄化にともなって浮揚植物の「ヒシ」が大量発生するようになりました。「ヒシ」は、アオコが発生している時代には、増えることはできませんでした。アオコが抑えられると、その隙を埋めるように増殖しました。

一方、水質は改善されても、湖底に溜まったヘドロはなかなか分解せず、逆に湖面を覆う「ヒシ」のために、太陽光が底に届かずに分解が阻害されています。

「ヒシ」は、水中の窒素やリンを吸収するため、水質浄化に役立ちますが、漁船のスクリューに絡んで漁の支障となり、水中への日射を遮って他の水草の生育を妨げたりします。
「ヒシ」は、一年草の水草ですから、9月頃から枯れ出します。枯死すると湖底に腐敗沈殿します。さらに枯れた後の悪臭や、湖底に沈んだ際のヘドロ化が懸念されます。
湖底に堆積した有機物は、微生物などにより徐々に分解されます。この時酸素を消費します。その分解は、水温が高いほど活発となり、夏季には、湖底で、多量に酸素が消費されます。そのため、湖面からの酸素の供給が間に合わず、湖底付近では水中の酸素がなくなります。その深刻化な結果、諏訪湖の湖底の生物が全滅し、魚類も著しく減少しているそうです。

かつて、外来魚の捕食、護岸工事などが大きく取り上げられましたが、排水からの栄養分の流入の減少と、「ヒシ」の繁殖が、諏訪湖の漁業に深刻な影響を与えています。