前庭のニリンソウが、優しい小さな白い花を咲かせました。ニリンソウは、自己防衛本能が、強いようです。天気の良い日の10時過ぎから午後16時までしか花びらを開きません。夜露を避けているようです。また陽光に恵まれた見晴しのよい所には自生しません。
 レア・メモリーの前庭のドウダンツツジの灌木に隠れるように、離れ離れに小群落を作ります。しかも、ニリンソウとヤマトリカブトは、同じキンポウゲ科の多年草として、同一の環境条件下で生育します。ニリンソウなどの食用植物が有毒植物と同じ場所に混生するのも、防衛手段、植物の知恵なのでしょう。ただ、トリカブトは、ニリンソウが自生するはずのない、樹叢一つない車山の北麓・山彦尾根の日当たりのよい高原にも、秋の長い時季にわたり、のびのびと美しい青紫色の花の小群落を、いくつも作ります。
 ニリンソウには、独特のえぐ味がありますが、灰汁が余りないので、葉をゆでて水に晒すだけで、サラダ・味噌汁の具など、簡単に山菜として楽しめます。
 厄介なことに、トリカブトとニリンソウは、ニリンソウを山菜として食する若葉の時季、互いに混生して、しかも大変よく似ているため、見分けるのが至難です。山菜採りに慣れている人ほど、茸同様、間違えています。
 ヤマトリカブトは、「アコニチン」と呼ばれるアルカロイドを含む猛毒で、その解毒剤はいまだ開発されていません。トリカブトは、和名では附子と言われ、古来より有名な毒草で、毒空木・毒芹と共に日本三大毒草の一つに挙げられるほど猛毒です。明治9年に禁止されるまで、アイヌの人々はその毒を矢尻の先に塗って、狩猟に使用していました。そのトリカブトは、特に根が猛毒ですが、毒草の多くに共通するように全草に毒性があります。植物界でも最強の毒といわれ、死に至る危険性はキノコなどよりも格段に高いようです。
 花粉も有毒で、蜂蜜による中毒例があるともいわれています。秋には山の蜜はもう採らない、なぜならトリカブトの蜜が混じるからだそうです。養蜂屋さんはトリカブトがあれば、その一帯から離れるそうです。
 ミツバチたちは全く平気で、トリカブトの密毒を吸収しているようです。神経伝達物質が人と虫とでは、当然異なります。そのため蜜蜂には効かないようです。
 ニリンソウを山菜として楽しむには、美しい白い花と同時に適度に摘むようにしましょう。咲いた花と一緒に摘むといった具合に、山菜愛好者も防衛策を練らなければ大変なことになります。