残雪を残す南アルプスを背景に、大懸崖作りの豪壮な枝ぶりに真っ白な花を咲かせるヤマナシの巨木が見事な風景をつくりあげています。
 春の陽射しが満ちる車山高原のいたるところで、キジムシロやフデリンドウ・ラショウモンカズラが、早春らしい可憐な花を咲かせています。
 疎林となる白樺の根元近くでは、ムラサキケマン(紫華鬘)が、赤紫色の長さ2cm位の、独特の筒状の花を咲かせます。ムラサキケマンはケシ科ですが、シソ科のホトケノザ(仏の座)のような花の色と形で、見まがうばかりです。

 植物の花というのは、開花して受粉するのが普通です。花は「受粉して、結実するために開花する」のですから…
ところが、植物の中には、「開放花」を付けながら、「閉鎖花」もつける種が少なくありません。スミレがそのいい例です。車山でも、閉鎖花は、スミレのほかに、このムラサキケマンとホトケノザ・センボンヤリもそうです。ツリフネソウ・フタリシズカ・ヤマカタバミなどにもみられます。
 イネも開花はしますが、その前に自花受粉が行われ、この「閉花受精」により交雑を防ぎます。ムラサキケマンも有性生殖をしますが、その前に「閉鎖花」の中で、自家受粉しています。自分独自の種に誇りがあるのでしょう。