冬の車山高原にて 本文へジャンプ

車山高原では、雪と氷に覆われる極寒のさなかでも多くの動物や野鳥が、頻発する寒風の嵐を避け、空腹に堪えながら巣籠りし、ようやく風雪がやみ、束の間の薄霧の最中、生存活動にひたすら邁進します。

車山周辺では、頭と胴の長さが10p位のハタネズミが、たくさん生息しています。

ハタネズミはホンドギツネの好物です。

外にいても周辺で多くの悪さをしますので、それを捕ろうとして、妻が窓の外に、牛肉の脂身を吊るすネズミ捕りを仕掛けました。

直ぐ掛かったのがシジュウカラでした。

随分と慌てふためき落ち着きません。

写真を撮ろうと近付くと、向かってくる素ぶりをしますが

直ぐ、奥の方に竦んで動きません。

それでも、恐怖に負けるものかと、デジカメを構える私に向かって来ますが

写す間もなく、奥に身を寄せふるえています。

シャッターチャンスがないと引き下がると、間もなくやや大きめのシジュウカラが来て

何度も助け出そうと、手立てを講じます。

互いに格子ごしに、嘴同士を重ねては、何かをうったえかけていました。

3枚目の写真奥に、雄のシジュウカラの姿が、見えませんか?

大きいので、シジュウカラの雄でしょう。

野鳥は、餌付が難しいといわれます。

囚われの身のシジュウカラは、懸命に抜け出そうと飛び回りますが、

それでも、いくども吊るされた牛肉の脂身をついばみます。

妻が、リンゴをネズミ捕りの格子の上に置くと、直ぐ引き入れて突っつきます。

妻はどうも、そのまま飼い続けたいらしいようです。

その夜、私はシジュウカラの生態が、よく分りませんので、安全のため屋内に入れました。

妻は、横浜に住む二人の娘に、興奮して、しきりにメールを送信します。

普段は妻と気の合う娘達なのに、直ぐ逃がすように懸命に説得しているようです。

翌朝、捕らわれのシジュウカラの周囲の空気が淀み、家の中に不快な臭いが漂います。

妻も堪らず、逃がす気になりました。

シジュウカラが慌てふためくネズミ捕りを抱え、南側の明るい濡れ縁で、

閉ざされた仕掛けをはずすと、すぐさま飛び立ち、庭の白樺の梢で一息つきます。そこに、やや大きめなシジュウカラが飛んできて並び、暫くは時間が止まったような光景が続きます。

その時、再び、ほぼ同時くらいに、二人の娘達から妻あてに、逃がすよう説得のメールが入ります。

野鳥の飼育は、傷病鳥獣を保護する以外、法令上難しいのです。でもできるだけ、過酷な自然の摂理に耐えて懸命に生きる野鳥ですから、優しく見守ることが人の優しさでしょう。

(冬の車山高原)