日本列島の原型 構造線と断層
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  目次
 1)大地溝帯フォッサマグナ
 2)南部フォッサマグナの岩石
 3)日本列島「大地の動き」
 
 
 

 1)大地溝帯フォッサマグナ
 大地溝帯フォッサマグナは、かつて信州が海だった証であり、飯山・長野・上田・松本・車山・諏訪湖・八ケ岳・富士山などの地質は、日本海と太平洋をつなぐ深さ6,000mを超える海底にあったことを示す。
 新生代新第三紀中新世約2,000万年前~約1,500万年前にかけて日本海が誕生して、日本列島の元となる岩石などの地質が、現在の位置に配列した時に、糸魚川-静岡構造線は形成された。アジア大陸から離れた以降に、島々のうち西半分の西南日本が時計回り、東半分の東北日本側の島々が反時計回りにそれぞれが回転し、そのねじれで生じた深さ最大6,000メートル以上の窪地が、少なくとも新世代新第三紀中新世末期の600万年前頃までは太平洋と日本海を結ぶ水路となっていた。その当時でき上った日本列島の基盤となった地質帯により大きく時代分類できるようになった。
 日本列島の基盤は大陸プレート(ユーラシアプレート・北米プレート)に海洋プレート(フィリピン海プレート・太平洋プレート)が沈み込む「沈み込み帯」で造られてきた。それは日本海溝と平行に並んでいた。東北日本の地質帯は北海道~東北へ南北に並び、西南日本の地質帯は関東~沖縄へ東西に並んだ。やがて長い時間をかけて火山活動や隆起などを経て徐々に陸化した。

 その日本列島の地質が糸魚川-静岡構造線を境にして、東西で大きく異なるのは、日本列島の成り立ちを示す重要な構成要素の違いが数多く秘められていることによる。フォッサマグナの西端の糸魚川-静岡構造線「糸静線いとしずせん)」は、新潟県糸魚川市と静岡市の安倍川周辺を結ぶ総延長約250㎞の断層であり、その東端は1886年、フォッサマグナと命名したナウマンは、フォッサマグナの東縁を新潟県直江津と神奈川県平塚を結ぶラインと考えていた。その後の地質調査で、新発田-小出構造線や柏崎-千葉構造線にはさまれた地域などとされたが、浅間山・榛名山・草津白根山・赤城山などの火山灰と利根川流域の河川堆積物に阻まれ、西縁の糸魚川静岡構造線ほどに実態解明は進んでいない。

 地質学研究によると、西南日本は北西から南東に向かって、新しい時代の地層が順に分布しているのが分かっている。一方、東北日本は「フッサマグナの海」が誕生した新生代新第三紀以降の火山岩や堆積岩に広く覆われているため、それ以前の基盤岩類の詳しい分布と構造の調査が遅れている。
 東北日本が新第三紀以降の新しい地層に覆われているのは、日本海の形成と深く関係している。日本海は新第三紀当初には未だ完成されず、東北日本は大陸と一体であった。その日本海の形成時期とその形成メカニズムは、現在でも仮説の段階に留まる。ただ多くの研究の成果から次第に明らかになりつつある。
 東北日本の太平洋側や西南日本の基盤地質は主に中生代ジュラ紀約1億4,500年前~約2億年前の堆積岩類や火成岩類などであるのに対し、フォッサマグナ内は主に2,000万年前、新生代新第三紀中新世以降のものである。
 フォッサマグナの中央には、新潟焼山・火打山・妙高山・黒姫山・谷川岳・浅間山・車山連峰・八ヶ岳連峰・富士山・箱根山・天城山など、かつての海底火山の名残りを岩石に留めながら南北に並ぶ。そして、当時の海洋プレートの動きに伴い関東山地を境にして北の北部フォッサマグナ、南の南部フォッサマグナと地層が割れている。
 フォッサマグナ地域は日本海の拡大以降の堆積物(被覆層)に覆われて基盤は見えないが、関東山地ではその基盤が露出している。そこで関東山地を境に、北側の「北部フォッサマグナ」と南側の「南部フォッサマグナ」に分けている。実は、北部フォッサマグナと南部フォッサマグナは、それぞれ別の形成史をもった地層帯である。
 北部フォッサマグナは、新生代新第三紀の2000万年前~1500万年前にかけて日本列島の元となる島々が大陸から離れた時に、東西に引っ張られて折れ目が生じ、その地殻が伸びて割れて数千m沈降した地溝帯となった。その地殻変動が終わり、北部フォッサマグナは、海に深く水没していた。当時の海底から噴出した火山岩が海底の堆積層として埋まっている。

 新生代代四紀ジェラシアン紀の約200万年前から日本列島全体が隆起し、その逆断層の地殻変動により現在の日本列島の山野の地形がほぼ整った。北部フォッサマグナの中でも山地の隆起による断層盆地が生じた。また北部フォッサマグナを埋めた地層が極めて厚いので、上昇している山地でも侵食により失われずに山頂まで新しい時代の海底の堆積物で覆われている。
 
 甲斐駒ヶ岳は、赤石山脈を代表する名山で、標高2,967 mの巨大な山体が美しい。甲斐駒ヶ岳は、地質的には花崗岩でできている。この花崗岩体は、新生代代四紀カラブリアン期の約1,500万年前、この位置に元々あった堆積岩の層に対し、地下深くからマグマが貫入し、その後そのマグマ溜りが冷却固結した。その後の赤石山脈の隆起に伴い、地下から上昇して地表に現れ、さらに隆起を続けて、今では赤石山脈北部に聳える標高は2,967mの高峰となった。甲斐駒ヶ岳の山頂から400mほど南東に、独特の形をしたドーム状のピーク「摩利支天峰」も、この花崗岩の岩峰である。
 甲斐駒ヶ岳の山麓部に糸魚川静岡構造線が走り、その麓から急激に高度を上げて、かなりの急傾斜となり、そこに沢が食い込んでいて険しい谷を作っている。この急斜面を「釜無断層崖(かまなしだんそうがい)」と呼び、フォッサマグナの断層活動による隆起を目の当たりにする。
 甲斐駒ヶ岳と並んで、鳳凰三山(地蔵岳・観音岳・薬師岳)も、麓の甲府盆地や釜無川の流域から見ると、大きな壁のように聳え立つ。特に地蔵岳はその山頂部が「オベリスク」と呼ばれる、高さ 約20mの鋭い岩峰となっており、麓や遠方からも、それと知れる。
 鳳凰三山の山頂も甲斐駒ヶ岳と同様、約1,500万年前にマグマの貫入とその後の冷却固結によって形成された花崗岩類で出来ている。甲斐駒ヶ岳は岩石学的分類では「花崗岩」で、鳳凰三山は、「花崗閃緑岩」という。
 花崗岩は地殻を構成する主要な岩石で、世界中いたる所で産出されている。通常、花崗岩は無色鉱物が多量であるために白っぽく、鉱物結晶は数mmとほぼ等粒で、見掛けはザラザラしている。色彩は灰色から赤色まで多種にわたるが、それは造岩鉱物の割合の違いに由来する。白っぽく見えるのは石英の粒で、石英の量が多いことが特徴である。また、長石の粒も多く、斜長石よりもカリ長の方が多い。
 一口に花崗岩といっても専門的にはさらに細分されるが、花崗岩とされる領域は、カリ長石に富む典型的な花崗岩とカリ長石と斜長石がほぼ等量に含まれるアダメロ岩に大別される。またカリ長石が少なく斜長石が多くなると花崗閃緑岩と呼ばれるが、日本ではこの花崗閃緑岩が多く、これも単に花崗岩と称している。大陸の花崗岩はアルカリ長石分が多く、紅色~淡紅色を呈して白色の岩石ではない。日本の花崗岩は斜長石成分が多いため、白色勝ちであるのはこのためである。
 微妙に鉱物組成が異なるか、甲斐駒ヶ岳の花崗岩のほうが、白っぽさが際立ち、遠くから見るとまるで雪化粧したように見える。

 北部フォッサマグナ地域の西縁の糸魚川-静岡構造線は、糸魚川~松本平~諏訪湖~山梨県の北西部の北杜市白州町の横手駒ヶ岳神社付近にまで断層構造が確認されている。
 その駒ヶ岳神社付近の石空川(いしうとろがわ)は、鳳凰三山地蔵岳に源を発する大武川水系最大の支流である。ここには、フォッサマグナの西縁となる糸魚川静岡構造線の大断層が露頭している。この断層の西側の地蔵ヶ岳や甲斐駒ヶ岳をつくる白色の花崗岩帯が、東側の新生代第三紀層の黒色の砂岩泥岩層にのし上がる逆断帯となっている。
 この両者の境界付近は、破砕されて軟弱な破砕帯となっており、この断層は北西-南東の方向に伸び、北は石空川に沿って藪の湯鉱泉付近から、かつての北巨摩郡で最も西側、現在は北杜市白州町国界橋に延伸し、南は御座石鉱泉西 – 北岳の東麓・大馴鹿峠(おおなじかとうげ) - 山梨県南巨摩郡早川町に延伸しており、地質学的には大変貴重な露頭となっている。
 北部・西部を赤石山脈、東部を櫛形山系、南部を身延山地に囲まれた山間地域を流れる早川との合流地点に近い内河内川左岸、山梨県南巨摩郡早川町新倉に「新倉断層」があり、糸魚川ー静岡地質構造線の露頭を見ることができる。東側の新しい新第三紀中新世初頭約2,300万年前の地層の上に、西側の古い地層の古第三紀暁新世約6,000万年前の黒色千枚岩質粘板岩などが乗り上げている逆断層で、日本の地質構造上の重要な断層と評価されている。

 南部フォッサマグナの西縁の糸静線では、諏訪湖の南から赤石山脈の山麓に沿って、茅野から小淵沢と地質境界が走っている。
 山梨県韮崎市武川~鳳凰三山の南端に位置する赤石山脈の前衛の山にある夜叉神峠付近(標高1,770m)~早川~静岡市葵区にある身延山地の竜爪山(りゅうそうざん)稜線付近~静岡市内に延伸する。
 身延山地の竜爪山は、安倍川の源流にあり、その安倍川流域の地質は、流域の北部で東縁分水界の十枚山から竜爪山を連ねる山稜のわずかに東を南東に走り、南部では賤機山の東側に延引している。
 主として新生代新第三紀~第四紀に属する地層岩石が分布している。この構造線から西は、「フォッサマグナ海」ができる以前の新生代古第三系から古生代に属するユーラシアプレートと類似した地層が分布している。
 その先は、ほぼ安部川の流れに沿って静岡平野へと続いている。ただ、赤石山脈の東部から南東部は、火山岩である玄武岩体がバラバラと分布しているため東縁がとぎれとぎれになっており、きれいなラインにはなっていない。
 また、糸静線は、飛騨山脈東部から中部の松本と諏訪あたりでは、北部と中部の断層群の多くが活断層に認定されている。南部フォッサマグナ地域の西縁の糸魚川-静岡構造線は、赤石山脈の付近では、活断層として活動していない。富士川沿いにたどると、甘利山~櫛形山~身延山は、現在の地形では赤石山脈側の一部であるが、地質は海底火山の噴出物や海峡やトラフの堆積物で、南部フォッサマグナを構成する岩石と類似する。その一方では、富士川の流れに沿った細い谷沿いが、活断層帯になっている。日本列島を縦断する大断層帯としての糸静線は、南部では、富士川断層帯が実質的にはその役割を担っているようだ。

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 2)南部フォッサマグナの岩石
 火山灰は、火山の噴出物の一つで、主にマグマが発泡してできる細かい破片で、直径2mm以下の大きさのものを言う。物質としては火山ガラスVolcanic Glas、鉱物結晶、古い岩石の破片などである。そんな火山灰が地上や水中に堆積されると岩石になる。それが堆積岩の一種である凝灰岩である。
 火山ガラスの実態は、急速に冷却されたマグマが、結晶のような規則正しい配置を持たない非晶質の生成物である。火山ガラスは、過冷却によって、成分が固体結晶となるべき温度に達しても液体状態を保持することがあり、それをさらに冷やすと、ある温度点(ガラス転移温度)を境に、液体全体としての粘性が高くなりすぎて原子が移動できない固体状態となる。このように過冷却状態が、ある転移温度を境にして見かけ上固体となる転移を「ガラス転移」と呼ぶ。この明瞭にガラス転移現象を示す物質をガラスと呼ぶ。このシリカ(SiO2)含有量の高い流紋岩系ガラスが黒曜石で代表される。
 流紋岩は、火山岩の一種で主要な構成鉱物は、無色鉱物である石英と長石であり、これに10%程度の黒雲母や角閃石などの有色鉱物を伴う。流紋岩の外見は、基本的に白色から灰白色である。同じく火成岩である花崗岩と似た成分を持っている。色は白っぽいものが多いものの、なかには黒い流紋岩もあるため、色だけで判別することはできない。
 流紋岩は、マグマが流れつつ冷えて固まってできたものであるため、なかには、このマグマの流れ模様(流離構造)が、しま模様として見られるものもある。流紋岩は英語では「rhyolite(rai ora ite)」と呼ばれる。rheoはギリシャ語では「流れる」という意味を持つ。「rhyax」は「溶岩流」を意味し、これが英語の「rhyolite 」の由来となる。ただし実際に、しま模様が見られる流紋岩はあまり多くない。この他、鉱物ではなくガラス質部分を多く含むものも少なくない。大半がガラス質からなると黒曜岩と呼ばれる。
 伊豆・小笠原Bonin・マリアナ島弧Izu-Bonin-Mariana (IBM) Arc()は、フィリピン海と太平洋プレートとの境界における島弧をなす。言わばフィリピン海プレートの東縁にあり、フィリピン海プレートに太平洋プレートが沈み込む伊豆・小笠原海溝が島々の東方沖を南北に走っている。すなわち、伊豆諸島は伊豆・小笠原・マリアナ島弧の一部をなす。プレートの沈み込みに伴う火成活動で火山島からなる島弧が発達した。
 火成活動は、マグマの発生や移動を伴う現象全般を言う。必ずしもマグマを噴出するとは限らない。火山活動は火成活動の一部に過ぎない。島々を構成する岩石は伊豆大島三原山や三宅島雄山(おやま)を代表に玄武岩が多いが、新島と式根島は世界的にも珍しい多孔質で軽量、耐酸や耐熱性にも優れてコーガ石(黒雲母流紋岩)を産する。神津島も豊富な黒曜石を伴う流紋岩からなる。神津島の西にある無人島、2つの大きな岩礁と、多数の小岩礁群の総称・恩馳島(おんばせじま)の黒曜石は、斑晶鉱物が少なく石器石材として良質であることから、石器時代、日本列島各地に大量に搬送された。
 軽石とは火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)であるため、火砕物(かさいぶつ)とも呼ばれ、溶岩を含まないので、火山噴出物とは異なる。軽石には結晶構造がない。ガラス同様に整合された結晶とガスのように無秩序な構造の中間の物質であるため、火山ガラスに分類している。
  (火山砕屑物pyroclastic materialは、火山 から噴出された固形物のうち、溶岩以外のものの総称、pyroclastic=火砕性の)
 流紋岩は、花崗岩と同じく、二酸化ケイ素(SiO2)の鉱物、主に石英だが、70%前後と多く含む粘っこいマグマからできるが、花崗岩はそれが地下深部でゆっくり冷えて固まってできるのに対し、流紋岩はそれが地表付近で急に冷えて固まるなど、主に火山活動を伴う。
 流紋岩が形成される過程は、マグマが直接冷えて固まったものよりも、高温の火山灰や火山れきなどが急速に堆積(火砕流堆積物)することで、それ自身の高熱で凝結してできたものが多い(溶結凝灰岩)。このため、堆積作用でできた火山砕屑岩だが、堆積岩ではなく、火山岩とされる。流紋岩はきめが細かく、堅く水がしみ込みにくく、侵食作用に耐え、丘陵地を構成する場合が多い。
 珪長質岩なので石基は明色であることが多いが、流紋岩でも硫化鉄などの微粒子を含み暗色のものもある。斑晶を含むものは一部で、斑晶を含まない方が多い。流紋岩にみられる斑晶は石英や長石類が多く、時に黒雲母や普通角閃石などが見られる。
 角閃石は珪酸塩鉱物のグループ名で、一般的な造岩鉱物であり、様々なところに広く分布している。角閃岩は主に普通角閃石などの角閃石を主要な構成鉱物とする変成岩で、主に玄武岩質岩石を原岩とする変成度のやや高い変成岩の1種である。 見た目は通常黒色で、普通角閃石の結晶が針状~繊維状の集合を成している様子が観察できることが多い。 斜長石の結晶が白色の斑点のように成長している場合もしばしば見られる。 結晶構造と化学組成により細かく分類され、日本語名には「〜閃石」という名前がついている。水酸基 (OH-) を持つ含水鉱物としても有名である。
 含水鉱物は、水を結晶水として含む鉱物の総称であり、海洋プレートの沈み込み帯では、海水を含んだ地殻が温度と圧力の上昇による変性を受け、鉱物の結晶構造の中に取り込むことによって生じる。
 地表付近に大量に存在する水の一部が、プレートの沈み込みにより含水鉱物として運ばれる。プレートにより運ばれた含水鉱物が下部マントル付近において、「新たな含水鉱物」へと変化するという理論予測が発表されている(構造相転移)。「新たな含水鉱物」は地球のマントルから中心核の境界領域まで安定に存在する可能性が高くなり、地球深部における水の大循環やマントル-核境界での上昇流(プルーム)の発生、また地球中心核の主要物質である溶融鉄への溶け込みなど、地球深部の物質構成や物理運動にダイナミクスな影響を及ぼすと考えられている。
 マントルと核の境界付近の2,900kmまで水を運ぶことが可能となれば、水の存在は岩石の融点を下げるため、マントル最下部でのマグマの発生の誘発を容易にする。これがマントル最下部に観測される超低速度層や、この付近に起源を持つマントル上昇流(プルーム)などの要因になっているようだ。しかも、地球中心核の主要物質である溶融鉄への溶け込みなどが現実味を帯び、地球深部の物質やダイナミックな運動の解明に繋がり、「愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)」などの研究グループがこのほど発表した、超高温高圧でも安定した状態で水を地球内部のマントル深部へと運ぶことができる新しい結晶構造の「水酸化鉄」の発見に至った。
 研究グループなどによると、地球の表層の7割は海に覆われているが、地球の内部に貯蔵する水の質量は海水の数倍に及ぶと推定されている。このため水は地球表層だけでなく、地球の内部でも重大なな成分の一つとして地球に予測以上に大きな影響を及ぼしている。今回の研究で明らかになった新構造の「水酸化鉄」は、マントルと核の境界の高圧力下でも存在する可能性が高く、地球深部での水循環やマントルと核との境界でのマントルの上昇など地球深部が関わる物理運動などに大きな影響を及ぼしていることが想定されている。

 上部マントルで発生した玄武岩や安山岩などがマグマに取り込まれ、地表にもたらされた、くすんだ緑色で緻密均質で、おおむね、かんらん石からできているかんらん岩に含まれる輝石類は、マグマから初生的に結晶化したもので、数mm以下の小粒なものが多い。流紋岩はそれらをあまり含まない。なお、数mmから数cmくらいの白っぽい球状集合体が球顆で、それが豊富に入っているものは「球顆流紋岩」と呼ばれる。球顆は斑晶の一種で、マグマが急に冷える時、その中で針状のクリストバライトcristobalite(SiO2の組成を持つ正方晶系の酸化鉱物)や長石類などの鉱物が放射状集合体を呈したものである。
 正方晶系の結晶構造は、正方形の底面(a×a)と長方形の側面(a×c, a < c ) を持つ直角の角柱となる。
 かんらん石グループの中で、特にM = Mgである苦土かんらん石と、M = Feの鉄かんらん石の固溶体が最も一般的で、超苦鉄質岩や苦鉄質岩を構成する主要な造岩鉱物であり、単にかんらん石という場合は通常それらの固溶体(固体中に異種原子が均一に混入した状態の結晶質の固体)を指す。
 地球の上部マントル、深さ約440km付近までの大部分は苦土かんらん石からなるため、地球上に豊富に存在する鉱物である。 しかし大陸地殻の大部分は花崗岩類やそれに類似した組成の堆積岩・変成岩で構成されているので、 それらに含まれる主要な造岩鉱物である石英・長石・角閃石などと比べると、かんらん石を地表で見られる頻度は一般的には低い。

 カンラン石は、珪酸塩鉱物のグループ名
  多くのカンラン石は、地球マントル最上部の大部分を占め、地上に火成岩として出てきたカンラン岩もマントル由来である。
  一般式は (Mg,Fe)2SiO4。Mn、Ni、Ti を少量含む。
  ガラス光沢で、色は黄緑色。形状は、粒状または短柱状結晶。
  苦土かんらん石(白橄欖石
  苦土かんらん石のうち緑色で特に美しいものは、ペリドットとよばれ、宝石にされる。
  化学式 - Mg2SiO4。色 - 白色、黄緑色、条痕 - 白色。ガラス光沢。劈開(結晶や岩石の割れ方がある特定方向へ割れやすいという性質)なし。硬度 7。比重 3.2。
  鉄かんらん石(黒橄欖石
  化学式 - Fe2SiO4。色 - 褐色、黒色、条痕 - 淡褐色。ガラス光沢。劈開なし。硬度 6.5。比重 4.4。

 地球に近接する軌道を持つ小惑星イトカワは、太陽系形成の初期に、原始太陽系星雲を構成するダストが集積し、その太陽系で初めて誕生した微小天体であると考えられている。その小惑星のサンプルを解析すれば、太陽系形成当時の鉱物組成を知ることができる。
 日本の小惑星探査機「はやぶさ」が、イトカワの探査から地球へ持ち帰った鉱物試料には、カンラン石が最も多く、次にカルシウム (Ca) に乏しい輝石、Caに富む輝石、斜方輝石、量は少ないが良く含まれる鉱物として、トロイライト(硫化鉄)、テーナイト(鉄ニッケル金属)、クローマイトchromite(クロム鉄鉱)などであった。このような鉱物の組み合わせは地球岩石には存在していない。
 2011年6月2日 、NASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」が、オリオン座の星形成領域にある新星の周り、しかもオリオン座の外辺で、苦土カンラン石でできた緑色の鉱物の存在を捉えた。この発見は星がまさに形成されている領域では初めての観測であった。このような鉱物は高温の領域でしか作られないため、原始星の周辺には物質の移動が起こっている可能性が高いことがわかった。

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 3)日本列島「大地の動き」
 日本の国土面積は世界の僅か0.25%を占めるにすぎないが、全世界で発生する地震のうち実に20%が日本の領域内の岩盤で生じる。地球は、中心から、核(内核、外核)、マントル(下部マントル、上部マントル)、地殻という層構造を構成する。このうち「地殻」と地殻に近い上部マントルとで硬い板状の 岩盤を構成している。これが「プレート」である。地球の表面は十数枚のプレートに覆われている。
 世界中の地震を見ると、地震が発生する場所と発生していない場所がはっきりと分かれている。地震の多発地帯は、別のプレート同士が接しているプレー トの相境界にある。日本周辺では、海洋のプレートである太平洋プレートとフィリピン海プレートが、大陸のプレートである北米プレートとユーラシアプレートの方へ1年あたり数cmの速度で、陸のプレー トの下に沈み込んでいる。このため、日本周辺では、複数のプレート相互による力が複雑に作用して、世界でも有数の地震多発地帯となっている。

 ハワイや中国内陸部で発生している地震のように プレート内部で発生する地震もある。ハワイの群発地震など、頻発する火山活動により地震が多発するのは、地球のマントルから発生してくる熱が、地下の岩層を膨張させて割れることによって地震を発生させる。火山の噴火もこの熱エネルギーによって発生する。
 下降プレートは通常「スラブslab」と呼ばれる。プレートが沈み始めると、重力が働く。非常に古い海底が沈み込む場合、スラブはほぼ真っ直ぐに落下するが、若いプレートが沈み込む場合、スラブは浅い角度で下降する。重力による「スラブ引っ張り力」が働く沈み込みは、プレートテクトニクスplate tectonicsを誘発する最大の力となる。Tectonicsは「構造地質学」を意味する。つまりプレートテクトニクスとは「大地の動きによる地質構造の変化」という意味。プレートは、地球の表面を覆う、十数枚の厚さ100kmほどの岩盤を指す。つまり、地殻とマントルの最上部を合わせたものである。リソスフェアlithosphere(岩石圏=地殻 + マントル最上部)とほぼ同じで、プレートであるリソスフェアが柔らかいアセノスフェアの上を対流することで、大陸規模の消長さえも左右する。
 海洋プレートなどの下降プレート(slab)に働いている力のバランスが変わると、スラブはゆっくりと引き戻される。このため、沈み込み帯のプレート境界である海溝が海側に動くことになる。海溝が後退すると、スラブ先端から相境界phase boundaryへ掛かる加重が減少する。この作用によって、スラブは境界boundaryをすぐに通り抜けることができなくなり、下降プレートslabは滞留する。
 地表では、海溝が海側に移動すると、大陸プレートが引き延ばされて、大陸地の海溝に近い部分が大陸本体から剥がされていく。引き剥がされたところには、中央海嶺と同じように新しい海底ができる。このようにしてできたのが、現在の日本海や日本列島であると考えられている。
 日本のように沈み込み帯にある大陸プレート側の島々を島弧(弧状列島)、島弧の背後方向、つまり大陸プレート側を背弧と呼ぶ。また,背弧にある海洋のことを縁海marginal sea(えんかい)と呼ぶ。
 大陸の外縁にあたり、島・群島・または半島によって部分的に囲まれているが、外洋との流入が自由な海、つまり日本海・ベーリング海・黄海・北海などの海底のことを背弧海盆back-arc basinと言う(arcはɑ'ːrk「弧」)。
 日本海のように、海溝から海洋プレートが沈み込む大陸プレートの後方に位置する盆地状のくぼみを背弧海盆と呼ぶ。背弧海盆は、プレートが沈み込んでいる地域において、火山フロントよりも海溝から離れた位置に形成される海洋底であり、例えば、⽇本海は約2000万年前に拡大した典型的な背弧海盆である。
 日本列島における沈み込み帯にあたる火山フロントの火山は、千島海溝・日本海溝・伊豆−小笠原海溝を結ぶ線と平行に弧をなして連なっている。この火山帯のうち最も海溝側の火山を結んだ線よりも海溝側には同時代の火山は存在しない。また、日本列島では火山フロントより東側(太平洋側)には活火山はほとんど存在しない。また、火山フロント上では火山の数や噴出物の量が圧倒的に多いのに対して、火山フロントから西へ遠ざかるに従って火山堆積物が少なくなる。そのため火山前線とも呼ばれる。
 火山は、プレートが沈み込んで深さ100kmに達した地点の真上に出来るため、プレート境界の内側に帯状に火山が並ぶ、それで火山フロントと呼ばれた。火山フロントの地下のマグマは一旦マグマだまりに蓄えられるなどしてから地表に噴出し、火山となる。火山は、沈み込んだプレートの深さが100~150kmに達したところの地表に、海溝軸にほぼ平行に分布することとなる。有珠山・富士山・桜島など、日本のほとんどすべての活火山は、火山フロントから大陸側の数十kmの幅の範囲内に集中している。
 フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが1億年以上もかけて沈み込んできた。プレート沈み込み帯では、太平洋プレートによって持ち込まれる水の働きなどによって、上部マントルの一部の融点が下がり融けて流動化して上昇しマグマが形成される。
 マントルは地盤の下にあり、高温でありながら高圧によって固体の状態を保っている。マグマは上部マントルが一部溶融して液体になったもので、密度が小さく隙間から上昇するようになる。

 伊豆諸島西部の海底も、背弧海盆の一部である。フィリピン海プレート上にある伊豆・小笠原弧の東側の伊豆・小笠原海溝から太平洋プレートが沈み込む、伊豆諸島西部の背弧海盆の一部である。その伊豆諸島西部の海底で、青ヶ島リフト・明神リフト・スミスリフトと呼ばれるくぼ地が拡大している。これは、海溝から太平洋プレートが沈み込む背後に形成されるもので、伊豆・小笠原弧から太平洋プレートが沈み込む過程で生じている。この海底地域では火山活動が活発であり、地殻が引きちぎられつつある。将来的には、日本海のように海底が広がっていくと考えられている。
 背弧海盆は通常、非常に長く、比較的狭い。多くの場合、長さは数千km、幅はせいぜい数百kmにすぎない。背弧拡張を形成するには、沈み込みゾーンの働きが大きいが、すべての沈み込みゾーンに背弧拡張機能があるわけではない。背弧海盆は、海洋地殻の沈み込むプレートが非常に古い地域に見られる。背弧海盆の幅が限定されているのは、その火成活動が水に依存しており、マントル対流はスラブによる深い沈み込みに伴う海水によるマントル溶融能力に頼り誘発されいる。そのため沈み込み帯に沿って形成される。

 背弧海盆内に広がる尾根は、中央海嶺から噴出した玄武岩と同様の玄武岩を噴出する。ただ背弧海盆玄武岩はしばしばマグマ性水に非常に富んでいる。通常1〜1.5重量%H2Oに対し、中央海嶺玄武岩マグマは非常に乾燥していて0.3重量%以下のH2Oである。
 背弧海盆玄武岩マグマの高い含水量は、沈み込み帯を下って、上位マントルmantle wedgeに運ばれた水に由来する。更に追加される水源は、含水量をほぼ一定した値で保つ角閃石という鉱物は、水を結晶の中に取り込んでおり、角閃石の研究は、含水マグマの化学研究を進化させている。

 地震学的観測による研究で、地球の浅い部分だけでなく深い部分、例えば地下410km付近にもマグマ(珪酸塩液体)が存在していると推定され、地球内部科学の分野における重要な研究対象となった。
 高温高圧条件下でマグマとなる鉱物を融解するには何らかの融点降下の役目を担う物質が必要で、それが水とされている。水の働きによって鉱物の融点が下げられれば、地球内部の高圧高温下でもマグマの融解は十分可能と考えられる。しかも、地球内部に存在するマグマには水が含まれていた。このような高圧力下で生成された含水マグマは、無水状態のものと全く異なる物理化学的特性を持ち、例えば含水条件下で生成されるマグマは低圧の領域ではSiO2の成分(酸性成分)が富むことが知られていたが、最近の研究では高圧の領域では、MgOやCaOといった塩基性成分を急激に溶かしこみ始めることが明らかになった。物質の物理化学的な特性は固体、液体関係なくその構造によって支配され、その構造を読み解くことが物質をより理解する上で必要不可欠となっている。
 MgO-SiO2-H2O系の試料で、Mg(OH)2、SiO2粉末を目的の量比で調合し、含水の試料として準備した実験が、茨城県のつくば市にある大学共同利用機関法人・高エネル ギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設PF-AR及び兵庫県の大型放射光施設SPring-8で行なわれた。高圧マグマの構造解析には、両施設の強力な加速器で得られる大強度パルス放射光を用いて回折パターンを解析した。
 X線回折法では、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PF-ARや兵庫県の大型放射光施設SPring-8で、高強度の回折線を得ることで、含水マグマのX線回折データを収集している。
 この大強度パルス放射光回折を行うにあたり、新たに単結晶ダイヤモンドと白金の複合カプセルを試料用の容器として使用した。この封入法の開発により、含水マグマを完全に容器中に閉じ込めつつ試料からの高強度の回折線を得ることが可能となり、より正確な構造データを解析することに成功した。
 得られた含水マグマの回折データを解析することにより、マグマのような珪酸塩液体における中距離構造、主に…-Si-O-Si-…のようなSiO4四面体どうしがその酸素原子を複数個共有し連結することで網目状構造を構成している、この第一ピーク位置の圧力による変化に注目し、水の特性変化に由来すると考えられる不連続な中距離構造の変化をはじめて実験で見い出した。
 得られたX線回折データを解析することで、含水マグマの構造に関する情報を持ったX線干渉関数を得ることができた。更に、干渉関数を変換することによって実空間における局所構造に関する情報が得られる。この動径分布関数の解析結果から、このような液体の遷移的な構造変化は、構造に揺らぎが許される液体特有のものであった。珪酸塩液体の基本構造単位であるSiO4四面体中のSi-O結合距離は、圧力と共に徐々に伸びるという結果が得られた。特に、Si-O原子対由来のピークとMg-O由来のピークが重なり合うという結果もあり、局所構造においても大きな構造変化が生じていることが分かった。このSi-O結合距離のように、本来圧縮に対して収縮するべきものが長距離化するという現象は、その構造単位の配位数が増加していることを示している。つまり、低圧において安定な4配位状態からより高い6配位構造へと徐々に変化していることを意味する。このような液体の遷移的な構造変化は、構造に揺らぎが許される液体特有のものである。
 はじめて高圧含水マグマの構造データを高温高圧下で収集することに成功した実験研究で構築された手法と、得られたデータは、今後、更なる高圧マグマの構造や物性に関する研究を進化させる契機となった。
 また、中性子回折法による構造測定では、含水マグマの構造を観察するため、X線に加えて水素に鋭敏な中性子を用いる回折実験も行われ、高温高圧における含水マグマの構造をその場で観察する実験にも成功している。

 ホットスポットの地下では周りに比べてマントルが高温になっており、定常的にマグマが発生している。これは、地球の内部からマントルプルームmantle plumeと呼ばれる上昇流が発生しているためと考えられている。
 マントルプルームは、地球のマントル内の対流のメカニズムとして提唱され、異常な火山活動を説明するための仮説として提示された。プルームヘッドは深度が浅くなると部分的に溶けるため、プルームはハワイやアイスランドなどの火山ホットスポットや、デカン高原やロシアのウラル山脈の東のシベリアトラップなどの大規模な火成地域としてしばしば登場する。火山領域の中では、プレート境界付近でしばしば巨大な噴火を起こすが、地殻プレート境界から遠く離れた場所でも大噴火の痕跡を遺している。
 デカン高原は、インドの広大な地域で、デカン・トラップで知られている。この地域は、約6700万年前から6500万年前の白亜紀の終わりにかけて、マグマ噴出によって巨大な玄武岩台地を形成している。中生代白亜紀末から新生代第三紀初の約6800万年前~約6000万年前の間に、何度かの噴火による。この噴火は、恐竜を滅ぼしたK-T境界の大量絶滅の原因ともされている。
 世界の火山は、海溝沿いと海嶺にたるとプレートの相境界とプレート内のホットスポットに分布している。陸のプレートに沈み込んだ海のプレートから水のような成分が放出され、これにより上部マントルの一部が溶けてマグマが発生し、上昇する。このような過程でいったんマグマだまりに蓄えられるなど様々な作用を受けて地表に噴出し、これが海溝沿いの火山となる。それで、海溝にほぼ平行に火山が分布する。この火山分布の海溝側の境界を画する線を火山フロントと呼ぶ。
 火山フロント付近に火山が密集して、上部マントルから直接マグマが湧き出す。噴火は、火口が開いてマグマの圧力が減少すると、一斉に発泡し体積が増加し、火口からマグマが噴出する現象である。発泡が少ない場合には、溶岩流として噴出する。それらは、海溝にプレートを巻き込む力に対する巻き戻すの反発力による。海溝の長さは数百〜数千 kmに及びますが、幅は通常数百 kmと狭いことが多い。
 流紋岩質のマグマは温度が800℃程度と玄武岩質マグマや安山岩質マグマと比べて低く、粘性が高いため、溶岩ドームのような特徴的な火山体を形成し、しばしば爆発的な噴火を引き起こす。
 流紋岩の主な構成鉱物は、石英、長石(カリ長石・曹長石)などの無色鉱物を主とし、 有色鉱物である黒雲母や角閃石類、まれに輝石類や柘榴石、大隅石(珪酸塩鉱物)、磁鉄鉱などを伴う。流紋岩は白色から灰白色であることが多いが、噴出時の冷却条件、噴出前後の熱水やガスによる変質、また結晶化度によって見た目の色は様々に変化する。
 流紋岩が見られるのは、主に海面下では背弧海盆や一部のホットスポットなどの伸張場である。このような場所では玄武岩と流紋岩がペアになって噴出し、その中間の組成である安山岩は見られないことが多く、「バイモーダル火山活動」と呼ばれる。一方で、沈み込み帯での流紋岩の産出、および流紋岩質マグマの火山活動は稀で、通常はデイサイトである。
 日本では島弧が日本列島で、プレートが動いていく先に日本海溝があり、島弧である日本列島の西側の大陸との間、「背弧海盆」として日本海がある。海溝から見れば、島弧の日本列島の背後にある海となる。いうなれば、縁辺海のうち、島弧ー海溝系に組み込まれているものが背弧ということになるから日本海も背弧海盆である。
 背弧海盆の玄武岩質マグマには多量のマグマ水が含まれ、深海熱水孔などで微生物による有機物合成が活発に行われている。ホットスポットでも、減圧融解によって玄武岩質のマグマが生じる。海底に湧き出した場合は火山島を造る。過去の地球では何度も大規模なホットスポットの拡大があり、玄武岩の巨大な溶岩台地が造られた。海底の溶岩台地は「海台」と呼ばれる。
 世界では、北米ロッキー山脈(イエローストーンを含む)、ニュージーランドのタウポ火山帯、アイスランドなどにおいて、バイモーダル火山活動による流紋岩の噴出が特徴的に見られる。バイモーダル火山活動とは、異なる2つのマグマタイプが同じ火山で交互に噴出する現象を言う。通常、バイモーダル火山活動では、マントル由来の玄武岩質マグマと流紋岩質マグマ(下部地殻融解によるデイサイト質)が交互に噴出される。
 アフリカ大地溝帯やアメリカのイエローストーンなど、大陸地殻が割れようとしている地域(リフト帯)でバイモーダル火山活動が観察されいる。
 日本の火山で多く見られる安山岩質マグマのみでの火山活動は、ユニモーダル火山活動と言う。マントル由来の玄武岩質マグマと流紋岩質マグマ(下部地殻融解によるデイサイト質)の火山活動では安山岩質マグマは見当たらない。これをバイモーダル火山活動といい、アフリカ大地溝帯やアメリカのイエローストーンのように大陸地殻が割れようとしている地域(リフト帯)にも見られる。
 日本では伊豆諸島がそれにあたり、大島や三宅島が玄武岩質、新島や神津島が流紋岩質な、それぞれが近接している。
 日本の場合、伊豆諸島・伊豆半島や別府島原地溝帯は沈み込み帯火成活動に加えて背弧海盆拡大の要素を含んでいるため、流紋岩の噴出が見られる。 また、かつての背弧海盆拡大の痕跡として、日本海沿岸の各地に流紋岩が見られる。玄武岩であれば「海が裂けてできた海底火山」、その間の溝を埋めるのが堆積物である礫岩、砂岩、泥岩になる。

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