日本列島の原型 構造線と断層
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  目次
 1)大地溝帯フォッサマグナ
 2)南部フォッサマグナの岩石
 3)日本列島「大地の動き」
 4)火成岩とは
 
 

 1)大地溝帯フォッサマグナ
糸魚川-静岡構造線
 大地溝帯フォッサマグナは、かつて信州が海だった証であり、飯山・長野・上田・松本・車山・諏訪湖・八ケ岳、そして富士山や御殿場、伊豆半島などの地質は、日本海と太平洋をつなぐ深さ6,000mを超える海底にあったことを示す。
 新生代新第三紀中新世約2,000万年前~約1,500万年前にかけて日本海が誕生して、日本列島の元となる岩石などの地質が、現在の位置に配列した時に、糸魚川-静岡構造線は形成された。
 アジア大陸から離れた以降に、島々のうち西半分の西南日本が時計回り、東半分の東北日本側の島々が反時計回りにそれぞれが回転し、そのねじれで生じた深さ最大6,000メートル以上の長大な窪地が、少なくとも新世代新第三紀中新世末期近くの600万年前頃までは太平洋と日本海を結ぶ水路となっていた。
 その当時でき上った日本列島の基盤は、時代と地質帯を大きく区分する大きな契機となった。日本列島の基盤は大陸プレート(ユーラシアプレートと北米プレート)に海洋プレート(フィリピン海プレートと太平洋プレート)が沈み込む「沈み込み帯」で造られてきた。それは海溝と平行に並んでいた。東北日本の地質帯は北海道~東北へ南北に並び、西南日本の地質帯は関東~沖縄へ東西に並んでいた。やがて長い時間をかけて火山活動や隆起などを経て徐々に陸化した。
 松本市北部の四賀地区の新生代新第三紀中新世の約1,500万~1,300万年の海底堆積物が蓄積されて間もない時代の地層からは、シガマッコウクジラ(世界最古のマッコウクジラ)の化石が出土した。
 1986年(昭和61年)、保福寺川の露頭で地元の小学5年生がクジラの化石の一部を発見した。これを受け、1988年に四賀村(当時)によって大規模な発掘が行われ、マッコウクジラの全身骨格化石の掘り上げに成功した。保福寺川は、長野県にある河川で、信濃川水系に属して
いる。この渓流は三才山や保福寺峠付近の尾根を源水にして、筑摩山地を流れ四賀村で犀川支流会田川に流れ込む。
 四賀地区は、長野県内屈指の海洋哺乳類化石の産出地で、ほかにシナノイルカ(世界最古のマイルカ類)やアシカやトドの仲間(鰭脚類:ききゃくるい)であるシナノアロデスムスの頭骨なども出土した。
 長野市北西部に位置する標高1,908mの戸隠山周辺の地層からは、約500万年前の戸隠の太古の海に生息していた貝類のヤマサキホタテやシガラミサルボウ(二枚貝)、クジラやダイカイギュウなどの哺乳類の化石が発見されている。かつて戸隠地域では、貝類の化石を鶏のエサにした。
 北部フォッサマグナは、巨大な地溝帯であり、新第三紀中新世の深成岩類が広く分布している。北部フォッサマグナ最南端の美ヶ原-霧ヶ峰地域には、和田岩体および余里岩体が分布 している。余里岩体は武石余里を中心として四方に点在し、和田岩体の北縁と不明瞭な境界で隣接している。茅野・下諏訪・松本・美ヶ原・落合には、和田岩体や余里岩体とは異なる、深成岩系の各種岩体が露出している。
 美ヶ原-霧ヶ峰地域における和田岩体と余里岩体は、主にトーナル岩(深成岩の一種。 花崗岩と閃緑岩の中間のような性質を持つ、石英閃緑岩よりも石英が多い。アルカリ長石KAlSi3O8をほとんど含まず、花崗閃緑岩よりもさらに斜長石【灰長石CaAl2Si2O8 と曹長石NaAlSi3O8の固溶体】に富む。)や花崗閃緑岩からなり、一部に花崗岩を伴う。
 
 北部フォッサマグナ南部の美ヶ原−霧ヶ峰地域に分布する和田岩体と余里岩体の全岩主成分・微量成分分析が行われた。
 和田岩体は余里岩体よりも相対的に石英や黒雲 母に富み、斜長石や角閃石に乏しい特徴が認められる。また、和田岩体は余里岩体よりもTiO2・Na2O・ガリウムGa・ニオブNb・ イットリウムY・ジルコニウムZrに乏しく、K2O・ Cu・パラジウムPb・ルビジウムRb・ストロンチウムSr・トリウムThに富む傾 向がみられ、特に和田岩体のK2O/Na2O比は余里岩体の それに比して極めて高くなっている。
 以上の岩石学的特徴と既報のストロンチウムSr同位体組成の検討から、和田岩体はマント ルの部分溶融の程度が小さいマグマからもたらされ、余里岩体は斑レイ岩質の下部地殻物質の溶融による形成 か、もしくは和田岩体の起源マグマが下部地殻物質と反応したことによって形成されたと考えられる
 和田岩体は大陸地殻物質と反応した可能性がある。一方、余里岩体の美ヶ原-霧ヶ峰地域の深成岩類は、伊豆弧火山岩類と斑レイ岩質捕獲岩との間の領域を占めている。つまり、伊豆弧火山岩類を形成した起源マグマを主として斑レイ岩gabbro質由来のマグマを被って美ヶ原-霧ヶ峰地域の深成岩類を形成したと考えられている。
 斑レイ岩は、深成岩の一種で、主要な構成鉱物は、有色鉱物では輝石類や角閃石類・カンラン石類、無色鉱物では斜長石である。通常、見た目は黒色で、少量の白くて細長い斜長石を伴うことがある。
 斑レイ岩は玄武岩質マグマから地殻の中部から深部で結晶して生成されるが、結晶過程で、玄武岩質マグマの結晶成長が周囲の環境の変化に伴う、マグマ成分の分配や濃度拡散層の生成 により、多様な岩石種からなる層状分化岩体が形成されることが多い。
 斑レイ岩は、緻密で大粒の結晶からなるため、特に黒色の斑レイ岩は黒御影としてよく建築石材や墓石として利用される。
 

 その日本列島の地質が糸魚川-静岡構造線を境にして、東西で大きく異なるのは、日本列島の成り立ちを示す重要な構成要素の違いが数多く秘められていることによる。フォッサマグナの西端の糸魚川-静岡構造線「糸静線いとしずせん)」は、新潟県糸魚川市と静岡市の安倍川周辺を結ぶ総延長約250㎞の断層であり、その東端は1886年、フォッサマグナと命名したナウマンは、フォッサマグナの東縁を新潟県直江津と神奈川県平塚を結ぶラインと考えていた。その後の地質調査で、新発田-小出構造線や柏崎-千葉構造線にはさまれた地域などとされたが、浅間山・榛名山・草津白根山・赤城山などの火山灰と利根川流域の河川堆積物に阻まれ、西縁の糸魚川静岡構造線ほどに実態解明は進んでいない。

 地質学研究によると、西南日本は北西から南東に向かって、新しい時代の地層が順に分布しているのが分かっている。一方、東北日本は「フッサマグナの海」が誕生した新生代新第三紀以降の火山岩や堆積岩に広く覆われているため、それ以前の基盤岩類の詳しい分布と構造の調査が遅れている。
 東北日本が新第三紀以降の新しい地層に覆われているのは、日本海の形成と深く関係している。日本海は新第三紀当初には未だ完成されず、東北日本は大陸と一体であった。その日本海の形成時期とその形成メカニズムは、現在でも仮説の段階に留まる。ただ多くの研究の成果から次第に明らかになりつつある。
 東北日本の太平洋側や西南日本の基盤地質は主に中生代ジュラ紀約1億4,500年前~約2億年前の堆積岩類や火成岩類などであるのに対し、フォッサマグナ内は主に2,000万年前、新生代新第三紀中新世以降のものである。
 フォッサマグナの中央には、新潟焼山・火打山・妙高山・黒姫山・谷川岳・浅間山・車山連峰・八ヶ岳連峰・富士山・箱根山・天城山など、かつての海底火山の名残りを岩石に留めながら南北に並ぶ。そして、当時の海洋プレートの動きに伴い関東山地を境にして北の北部フォッサマグナ、南の南部フォッサマグナと地層が割れている。
 フォッサマグナ地域は日本海の拡大以降の堆積物(被覆層)に覆われて基盤は見えないが、関東山地ではその基盤が露出している。そこで関東山地を境に、北側の「北部フォッサマグナ」と南側の「南部フォッサマグナ」に分けている。実は、北部フォッサマグナと南部フォッサマグナは、それぞれ別の形成史をもった地層帯である。
 北部フォッサマグナは、新生代新第三紀の2000万年前~1500万年前にかけて日本列島の元となる島々が大陸から離れた時に、東西に引っ張られて折れ目が生じ、その地殻が伸びて割れて数千m沈降した地溝帯となった。その地殻変動が終わり、北部フォッサマグナは、海に深く水没していた。当時の海底から噴出した火山岩が海底の堆積層として埋まっている。

 新生代代四紀ジェラシアン紀の約200万年前から日本列島全体が隆起し、その逆断層の地殻変動により現在の日本列島の山野の地形がほぼ整った。北部フォッサマグナの中でも山地の隆起による断層盆地が生じた。また北部フォッサマグナを埋めた地層が極めて厚いので、上昇している山地でも侵食により失われずに山頂まで新しい時代の海底の堆積物で覆われている。
 北部フォッサマグナ地域の西縁の糸魚川-静岡構造線は、糸魚川~松本平~諏訪湖~山梨県の北西部の北杜市白州町の横手駒ヶ岳神社付近に続いている。その駒ヶ岳神社付近の石空川(いしうとろがわ)は、鳳凰三山地蔵岳に源を発する大武川水系最大の支流である。ここには、フォッサマグナの西縁となる糸魚川静岡構造線の大断層がこの露頭している。この断層の西側の地蔵ヶ岳や甲斐駒ヶ岳をつくる白色の花崗岩帯が、東側の新生代第三紀層の黒色の砂岩泥岩層にのし上がる逆断帯となっている。
 この両者の境界付近は、破砕されて軟弱な破砕帯となっており、この断層は北西-南東の方向に伸び、北は石空川に沿って藪の湯鉱泉付近から白州町国界橋 - 長野県富士見町方面に延長し、南は御座石鉱泉西 – 北岳の東麓・大馴鹿峠 - 山梨県南巨摩郡早川町に延長しており、地質学的には大変貴重な露頭となっている。その早川との合流地点に近い内河内川左岸に「新倉断層」があり、糸魚川ー静岡地質構造線の露頭を見ることができる。新第三紀中新世初頭約2,300万年前の上に古第三紀暁新世約6,000万年前の黒色千枚岩質粘板岩などが乗り上げている逆断層で、日本の地質構造上の重要な断層と評価されている。

甲斐駒ヶ岳
 甲斐駒ヶ岳は、赤石山脈の北端に位置する南アルプスを代表する名山で、山梨県北杜市と長野県伊那市にまたがる標高2,967 mの巨大な山体が美しい。甲斐駒ヶ岳は、地質的には深成岩を代表する花崗岩でできている。この花崗岩体は、新生代代四紀カラブリアン期の約1,500万年前、この位置に元々あった堆積岩の層に対し、地下深くからマグマが貫入し、その後そのマグマ溜りが冷却固結した。その後の赤石山脈の隆起に伴い、地下から上昇して地表に現れ、さらに隆起を続けて、今では赤石山脈北部に聳える標高は2,967mの高峰となった。甲斐駒ヶ岳の山頂から400mほど南東に、独特の形をしたドーム状のピーク「摩利支天峰」も、この花崗岩の岩峰である。
 甲斐駒ヶ岳の山麓部に糸魚川静岡構造線が走り、その麓から急激に高度を上げて、かなりの急傾斜となり、そこに沢が食い込んでいて険しい谷を作っている。この急斜面を「釜無断層崖(かまなしだんそうがい)」と呼び、フォッサマグナの断層活動による隆起を目の当たりにする。
 鳳凰三山(地蔵岳・観音岳・薬師岳)も同様に花崗岩で形成されている。地蔵岳の岩峰は「オベリスク」と呼ばれる高さ約18mの鋭い岩峰も、甲斐盆地から眺めると青天に映える。 鳳凰三山の山頂も甲斐駒ヶ岳と同様、約1,500万年前にマグマの貫入とその後の冷却によって形成された花崗岩類で出来ている。甲斐駒ヶ岳は岩石学的分類では「花崗岩」で、鳳凰三山は、「花崗閃緑岩」という。甲斐駒・鳳凰花崗岩体は、新生代新第三紀中新世(約1,600万年前~ 約1,200万年前)に形成された。ヨーロッパのアルプス山脈と北アメリカのロッキー山脈で造山運動が始まり、日本がユーラシア大陸から分離し、日本海が形成され、フォッサマグナ海が形成された時期と重なる。
 花崗岩は地殻を構成する主要な岩石で、世界中いたる所で産出されている。通常、花崗岩は無色鉱物が多量であるために白っぽく、鉱物結晶は数mmとほぼ等粒で、見掛けはザラザラしている。色彩は灰色から赤色まで多種にわたるが、それは造岩鉱物の割合の違いに由来する。白っぽく見えるのは石英の粒で、石英の量が多いことが特徴である。また、長石の粒も多く、斜長石(NaAlSi₃O₈ または CaAl₂Si₂O₈)よりもカリ長(KAlSi₃O₈)の方が多い。
 一口に花崗岩といっても専門的にはさらに細分されるが、花崗岩とされる領域は、カリ長石に富む典型的な花崗岩とカリ長石と斜長石がほぼ等量に含まれるアダメロ岩に大別される。またカリ長石が少なく斜長石が多くなると花崗閃緑岩と呼ばれるが、日本ではこの花崗閃緑岩が多く、これも単に花崗岩と称している。大陸の花崗岩はアルカリ長石分が多く、紅色~淡紅色を呈して白色の岩石ではない。日本の花崗岩は斜長石成分が多いため、白色勝ちであるのはこのためである。
 微妙に鉱物組成が異なるか、甲斐駒ヶ岳の花崗岩のほうが、白っぽさが際立ち、遠くから見るとまるで雪化粧したように見える。

南部フォッサマグナ
 北部フォッサマグナ地域の西縁の糸魚川-静岡構造線は、糸魚川~松本平~諏訪湖~山梨県の北西部の北杜市白州町の横手駒ヶ岳神社付近にまで断層構造が確認されている。
 その駒ヶ岳神社付近の石空川(いしうとろがわ)は、鳳凰三山地蔵岳に源を発する大武川水系最大の支流である。ここには、フォッサマグナの西縁となる糸魚川静岡構造線の大断層が露頭している。この断層の西側の地蔵ヶ岳や甲斐駒ヶ岳をつくる白色の花崗岩帯が、東側の新生代第三紀層の黒色の砂岩泥岩層にのし上がる逆断帯となっている。
 この両者の境界付近は、破砕されて軟弱な破砕帯となっており、この断層は北西-南東の方向に伸び、北は石空川に沿って藪の湯鉱泉付近から、かつての北巨摩郡で最も西側、現在は北杜市白州町国界橋に延伸し、南は御座石鉱泉西 – 北岳の東麓・大馴鹿峠(おおなじかとうげ) - 山梨県南巨摩郡早川町に延伸しており、地質学的には大変貴重な露頭となっている。
 北部・西部を赤石山脈、東部を櫛形山系、南部を身延山地に囲まれた山間地域を流れる早川との合流地点に近い内河内川左岸、山梨県南巨摩郡早川町新倉に「新倉断層」があり、糸魚川ー静岡地質構造線の露頭を見ることができる。東側の新しい新第三紀中新世初頭約2,300万年前の地層の上に、西側の古い地層の古第三紀暁新世約6,000万年前の黒色千枚岩質粘板岩などが乗り上げている逆断層で、日本の地質構造上の重要な断層と評価されている。

 南部フォッサマグナの西縁の糸静線では、諏訪湖の南から赤石山脈の山麓に沿って、茅野から小淵沢と地質境界が走っている。
 山梨県韮崎市武川~鳳凰三山の南端に位置する赤石山脈の前衛の山にある夜叉神峠付近(標高1,770m)~早川~静岡市葵区にある身延山地の竜爪山(りゅうそうざん)稜線付近~静岡市内に延伸する。
 身延山地の竜爪山は、安倍川の源流にあり、その安倍川流域の地質は、流域の北部で東縁分水界の十枚山(じゅうまいさん)から竜爪山を連ねる山稜のわずかに東を南東に走り、南部では賤機山(しずはたやま)の東側に延引している。
 主として新生代新第三紀~第四紀に属する地層岩石が分布している。この構造線から西は、「フォッサマグナ海」ができる以前の新生代古第三系から古生代に属するユーラシアプレートと類似した地層が分布している。
 その先は、ほぼ安部川の流れに沿って静岡平野へと続いている。ただ、赤石山脈の東部から南東部は、火山岩である玄武岩体がバラバラと分布しているため東縁がとぎれとぎれになっており、きれいなラインにはなっていない。
 また、糸静線は、飛騨山脈東部から中部の松本と諏訪あたりでは、北部と中部の断層群の多くが活断層に認定されている。南部フォッサマグナ地域の西縁の糸魚川-静岡構造線は、赤石山脈の付近では、活断層として活動していない。富士川沿いにたどると、甘利山~櫛形山~身延山は、現在の地形では赤石山脈側の一部であるが、地質は海底火山の噴出物や海峡やトラフの堆積物で、南部フォッサマグナを構成する岩石と類似する。その一方では、富士川の流れに沿った細い谷沿いが、活断層帯になっている。日本列島を縦断する大断層帯としての糸静線は、南部では、富士川河口断層帯が実質的にはその役割を担っているようだ。
 富士川河口断層帯は、富士山の南西山麓から静岡県東部の駿河湾奥に流れ込む富士川の河口付近にかけて、ほぼ南北に延びる活断層帯である。静岡県富士宮市から、富士市を経て静岡市清水区(旧庵原郡由比町および旧同郡蒲原町)に至る断層帯で、長さは約26km以上で、概ね南北方向に延びており、断層の西側が東側に対して相対的に隆起する逆断層である。その平均的な上下方向のずれの速度は、約7m/千年と推定されている。本断層帯近傍の地表面では、その活動時に西側が東側に対して相対的に10m程度隆起した可能性があると言う。「地震本部」は西側が東側に対して相対的に10m程度高まる段差や撓(たわ)みが生じる可能性があり、将来の地震発生確率には幅がありますが、その最大値をとると、本断層帯は、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループに属することになると言う。また陸上部で認められている断層が単独で活動して、マグニチュード7.23程度の地震が発生する可能性があり、その際、断層近傍の地表面では、西側が東側に対して相対的に数m程度高まる段差や撓(たわ)みが生じる可能性があるとも言う。
 富士川河口断層帯は、駿河トラフのフィリピン海プレートと大陸側ユーラシアプレート境界との陸上延長部にあたり、日本列島の陸域では最大クラスの平均変位速度を示す大規模な活断層と言われる。この断層帯は主に、富士川河口付近から北に延びる東列の断層帯と、その西方の由比町付近から北に延びる西列の断層帯からなる。
 フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界である南海トラフでは、マグ二チュード9を超える大地震の発生が予測されている。駿河湾は南海トラフの東端部に位置し、更に駿河湾から富士川沿いの北方には富士川河口断層帯がある。富士川河口断層帯は、陸上に露出したプレート境界として、日本でも最大級の活動度を示している。
 南部フォッサマグナは、日本列島とフィリピン海プレートの東縁部に位置する伊豆・小笠原諸島との衝突帯で形成された付加体を起源にする。特に身延地域はこれらの地質学的な歴史が全て盛り込まれた貴重な地域で、また、身延地域は東海地震の想定震源域北端に位置している。
 富士山の西部に位置する身延地域では、日本列島を分断する重要な地質境界である糸魚川−静岡構造線が中央を南北に走っており、これを境に西側は地質学的に、中生代白亜紀~新生代新第三紀中新世(1億数千万年前~約1,500万年前)にアジア大陸東縁部の沈み込み帯で形成された付加体で構成され長久な地質史が刻まれている。しかも、南部フォッサマグナ地域は、中新世中期(約1,500万年前)から現在まで、日本列島と、フィリピン海プレートの東縁部に位置する伊豆・小笠原諸島との衝突帯で形成された付加体からなる。
 この南部フォッサマグナ地域は、中新世中期から現在までの地層の歴史が詳細に記録されている。丹沢山地は、伊豆・小笠原弧(弧状列島)の一つであった丹沢地塊の衝突によって形成された。丹沢山地の地層は、海底に堆積した新生代の新第三紀の層で、ほとんどは海底火山活動の産物である。
 約1,700万年前、西南日本が時計回りに回転したことで、日本海がほぼ現在の形まで拡大した。この時期に誕生した秩父湾は、200万年もの間、秩父はずっと海の下であった。さらに、大型のサルが現れ、ヒト科の生物が出現した。
 丹沢はこの約1,700万年前に太平洋の海底火山として誕生し、その後、フィリピン海プレートに乗って年数cmの速度で北上し、500万年前頃、本州孤に衝突したが、海洋底の堆積物は沈み込めずに収束境界に付加し褶曲した。丹沢山地には中新統(中新世に堆積した地層)の丹沢層群が分布している。この地域は大規模な深成岩体を中心に持ち、典型的なドーム状構造で知られている。丹沢の地層からは、海底火山からの厚い火山灰堆積物や、海底に流れた枕状溶岩(海底で噴出したマグマが海水で急激に冷やされ、米俵のような形になった岩石)などの他に、熱帯を示す25-30℃ほどの高水温で形成される珊瑚礁の化石が、丹沢各地で発見されている。珊瑚礁に生息したサンゴや石灰藻、大型有孔虫やオウムガイ(殻に入った頭足類)などの化石であった。
 緑色系統の色調を呈する凝灰岩の地層に挟まれて、小規模ながら、山北町・松田町・清川村・道志村・大月市・秋山村・河口湖町で、これらの化石を含む石灰岩が見つかっている。これらの化石は、かつて丹沢が、オウムガイが生息する熱帯の海域であったことを物語っている。
 さらにその後の新生代更新世カラブリアン期、約100万年前の伊豆半島の衝突により、丹沢は隆起し侵食がかさなり、今日の原形が作られた。
 登山道で踏みしめている緑色凝灰岩green tuffや大理石、花崗岩などから、丹沢の成り立ちがうかがえる。グリーンタフのグリーンは緑色を指し、タフとは火山灰が固まってできる凝灰岩を指す。「緑色凝灰岩」は、火山活動による火山灰が熱水の影響で、岩石に含まれる輝石・角閃石などの造岩鉱物が変質し粘土鉱物の1種の緑泥石に変化したためである。

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 2)南部フォッサマグナの岩石
 火山灰は、火山の噴出物の一つで、主にマグマが発泡してできる細かい破片で、直径2mm以下の大きさのものを言う。物質としては火山ガラスVolcanic Glas、鉱物結晶、古い岩石の破片などである。そんな火山灰が地上や水中に堆積されると岩石になる。それが堆積岩の一種である凝灰岩である。
 火山ガラスの実態は、急速に冷却されたマグマが、結晶のような規則正しい配置を持たない非晶質の生成物である。火山ガラスは、過冷却によって、成分が固体結晶となるべき温度に達しても液体状態を保持することがあり、それをさらに冷やすと、ある温度点(ガラス転移温度)を境に、液体全体としての粘性が高くなりすぎて原子が移動できない固体状態となる。このように過冷却状態が、ある転移温度を境にして見かけ上固体となる転移を「ガラス転移」と呼ぶ。この明瞭にガラス転移現象を示す物質をガラスと呼ぶ。このシリカ(SiO2)含有量の高い流紋岩系ガラスが黒曜石で代表される。
 流紋岩は、火山岩の一種で主要な構成鉱物は、無色鉱物である石英と長石であり、これに10%程度の黒雲母や角閃石などの有色鉱物を伴う。流紋岩の外見は、基本的に白色から灰白色である。同じく火成岩である花崗岩と似た成分を持っている。色は白っぽいものが多いものの、なかには黒い流紋岩もあるため、色だけで判別することはできない。
 流紋岩は、マグマが流れつつ冷えて固まってできたものであるため、なかには、このマグマの流れ模様(流離構造)が、しま模様として見られるものもある。流紋岩は英語では「rhyolite(rai ora ite)」と呼ばれる。rheoはギリシャ語では「流れる」という意味を持つ。「rhyax」は「溶岩流」を意味し、これが英語の「rhyolite 」の由来となる。ただし実際に、しま模様が見られる流紋岩はあまり多くない。この他、鉱物ではなくガラス質部分を多く含むものも少なくない。大半がガラス質からなると黒曜岩と呼ばれる。
 伊豆・小笠原Bonin・マリアナ島弧Izu-Bonin-Mariana (IBM) Arc()は、フィリピン海と太平洋プレートとの境界における島弧をなす。言わばフィリピン海プレートの東縁にあり、フィリピン海プレートに太平洋プレートが沈み込む伊豆・小笠原海溝が島々の東方沖を南北に走っている。すなわち、伊豆諸島は伊豆・小笠原・マリアナ島弧の一部をなす。プレートの沈み込みに伴う火成活動で火山島からなる島弧が発達した。
 火成活動は、マグマの発生や移動を伴う現象全般を言う。必ずしもマグマを噴出するとは限らない。火山活動は火成活動の一部に過ぎない。島々を構成する岩石は伊豆大島三原山や三宅島雄山(おやま)を代表に玄武岩が多いが、新島と式根島は世界的にも珍しい多孔質で軽量、耐酸や耐熱性にも優れてコーガ石(黒雲母流紋岩)を産する。神津島も豊富な黒曜石を伴う流紋岩からなる。神津島の西にある無人島、2つの大きな岩礁と、多数の小岩礁群の総称・恩馳島(おんばせじま)の黒曜石は、斑晶鉱物が少なく石器石材として良質であることから、石器時代、日本列島各地に大量に搬送された。
 軽石とは火山砕屑物(かざんさいせつぶつ)であるため、火砕物(かさいぶつ)とも呼ばれ、溶岩を含まないので、火山噴出物とは異なる。軽石には結晶構造がない。ガラス同様に整合された結晶とガスのように無秩序な構造の中間の物質であるため、火山ガラスに分類している。
  (火山砕屑物pyroclastic materialは、火山 から噴出された固形物のうち、溶岩以外のものの総称、pyroclastic=火砕性の)
 流紋岩は、花崗岩と同じく、二酸化ケイ素(SiO2)の鉱物、主に石英だが、70%前後と多く含む粘っこいマグマからできるが、花崗岩はそれが地下深部でゆっくり冷えて固まってできるのに対し、流紋岩はそれが地表付近で急に冷えて固まるなど、主に火山活動を伴う。
 流紋岩が形成される過程は、マグマが直接冷えて固まったものよりも、高温の火山灰や火山れきなどが急速に堆積(火砕流堆積物)することで、それ自身の高熱で凝結してできたものが多い(溶結凝灰岩)。このため、堆積作用でできた火山砕屑岩だが、堆積岩ではなく、火山岩とされる。流紋岩はきめが細かく、堅く水がしみ込みにくく、侵食作用に耐え、丘陵地を構成する場合が多い。
 珪長質岩なので石基は明色であることが多いが、流紋岩でも硫化鉄などの微粒子を含み暗色のものもある。斑晶を含むものは一部で、斑晶を含まない方が多い。流紋岩にみられる斑晶は石英や長石類が多く、時に黒雲母や普通角閃石などが見られる。
 角閃石は珪酸塩鉱物のグループ名で、一般的な造岩鉱物であり、様々なところに広く分布している。角閃岩は主に普通角閃石などの角閃石を主要な構成鉱物とする変成岩で、主に玄武岩質岩石を原岩とする変成度のやや高い変成岩の1種である。 見た目は通常黒色で、普通角閃石の結晶が針状~繊維状の集合を成している様子が観察できることが多い。 斜長石の結晶が白色の斑点のように成長している場合もしばしば見られる。 結晶構造と化学組成により細かく分類され、日本語名には「〜閃石」という名前がついている。水酸基 (OH-) を持つ含水鉱物としても有名である。
 含水鉱物は、水を結晶水として含む鉱物の総称であり、海洋プレートの沈み込み帯では、海水を含んだ地殻が温度と圧力の上昇による変性を受け、鉱物の結晶構造の中に取り込むことによって生じる。
 地表付近に大量に存在する水の一部が、プレートの沈み込みにより含水鉱物として運ばれる。プレートにより運ばれた含水鉱物が下部マントル付近において、「新たな含水鉱物」へと変化するという理論予測が発表されている(構造相転移)。「新たな含水鉱物」は地球のマントルから中心核の境界領域まで安定に存在する可能性が高くなり、地球深部における水の大循環やマントル-核境界での上昇流(プルーム)の発生、また地球中心核の主要物質である溶融鉄への溶け込みなど、地球深部の物質構成や物理運動にダイナミクスな影響を及ぼすと考えられている。
 マントルと核の境界付近の2,900kmまで水を運ぶことが可能となれば、水の存在は岩石の融点を下げるため、マントル最下部でのマグマの発生の誘発を容易にする。これがマントル最下部に観測される超低速度層や、この付近に起源を持つマントル上昇流(プルーム)などの要因になっているようだ。しかも、地球中心核の主要物質である溶融鉄への溶け込みなどが現実味を帯び、地球深部の物質やダイナミックな運動の解明に繋がり、「愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)」などの研究グループがこのほど発表した、超高温高圧でも安定した状態で水を地球内部のマントル深部へと運ぶことができる新しい結晶構造の「水酸化鉄」の発見に至った。
 研究グループなどによると、地球の表層の7割は海に覆われているが、地球の内部に貯蔵する水の質量は海水の数倍に及ぶと推定されている。このため水は地球表層だけでなく、地球の内部でも重大なな成分の一つとして地球に予測以上に大きな影響を及ぼしている。今回の研究で明らかになった新構造の「水酸化鉄」は、マントルと核の境界の高圧力下でも存在する可能性が高く、地球深部での水循環やマントルと核との境界でのマントルの上昇など地球深部が関わる物理運動などに大きな影響を及ぼしていることが想定されている。

 上部マントルで発生した玄武岩や安山岩などがマグマに取り込まれ、地表にもたらされた、くすんだ緑色で緻密均質で、おおむね、かんらん石からできているかんらん岩に含まれる輝石類は、マグマから初生的に結晶化したもので、数mm以下の小粒なものが多い。流紋岩はそれらをあまり含まない。なお、数mmから数cmくらいの白っぽい球状集合体が球顆で、それが豊富に入っているものは「球顆流紋岩」と呼ばれる。球顆は斑晶の一種で、マグマが急に冷える時、その中で針状のクリストバライトcristobalite(SiO2の組成を持つ正方晶系の酸化鉱物)や長石類などの鉱物が放射状集合体を呈したものである。
 正方晶系の結晶構造は、正方形の底面(a×a)と長方形の側面(a×c, a < c ) を持つ直角の角柱となる。
 かんらん石グループの中で、特にM = Mgである苦土かんらん石と、M = Feの鉄かんらん石の固溶体が最も一般的で、超苦鉄質岩や苦鉄質岩を構成する主要な造岩鉱物であり、単にかんらん石という場合は通常それらの固溶体(固体中に異種原子が均一に混入した状態の結晶質の固体)を指す。
 地球の上部マントル、深さ約440km付近までの大部分は苦土かんらん石からなるため、地球上に豊富に存在する鉱物である。 しかし大陸地殻の大部分は花崗岩類やそれに類似した組成の堆積岩・変成岩で構成されているので、 それらに含まれる主要な造岩鉱物である石英・長石・角閃石などと比べると、かんらん石を地表で見られる頻度は一般的には低い。

 カンラン石は、珪酸塩鉱物のグループ名
  多くのカンラン石は、地球マントル最上部の大部分を占め、地上に火成岩として出てきたカンラン岩もマントル由来である。
  一般式は (Mg,Fe)2SiO4。Mn、Ni、Ti を少量含む。
  ガラス光沢で、色は黄緑色。形状は、粒状または短柱状結晶。
  苦土かんらん石(白橄欖石
  苦土かんらん石のうち緑色で特に美しいものは、ペリドットとよばれ、宝石にされる。
  化学式 - Mg2SiO4。色 - 白色、黄緑色、条痕 - 白色。ガラス光沢。劈開(結晶や岩石の割れ方がある特定方向へ割れやすいという性質)なし。硬度 7。比重 3.2。
  鉄かんらん石(黒橄欖石
  化学式 - Fe2SiO4。色 - 褐色、黒色、条痕 - 淡褐色。ガラス光沢。劈開なし。硬度 6.5。比重 4.4。

 地球に近接する軌道を持つ小惑星イトカワは、太陽系形成の初期に、原始太陽系星雲を構成するダストが集積し、その太陽系で初めて誕生した微小天体であると考えられている。その小惑星のサンプルを解析すれば、太陽系形成当時の鉱物組成を知ることができる。
 日本の小惑星探査機「はやぶさ」が、イトカワの探査から地球へ持ち帰った鉱物試料には、カンラン石が最も多く、次にカルシウム (Ca) に乏しい輝石、Caに富む輝石、斜方輝石、量は少ないが良く含まれる鉱物として、トロイライト(硫化鉄)、テーナイト(鉄ニッケル金属)、クローマイトchromite(クロム鉄鉱)などであった。このような鉱物の組み合わせは地球岩石には存在していない。
 2011年6月2日 、NASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」が、オリオン座の星形成領域にある新星の周り、しかもオリオン座の外辺で、苦土カンラン石でできた緑色の鉱物の存在を捉えた。この発見は星がまさに形成されている領域では初めての観測であった。このような鉱物は高温の領域でしか作られないため、原始星の周辺には物質の移動が起こっている可能性が高いことがわかった。

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 3)日本列島「大地の動き」
 日本の国土面積は世界の僅か0.25%を占めるにすぎないが、全世界で発生する地震のうち実に20%が日本の領域内の岩盤で生じる。地球は、中心から、核(内核、外核)、マントル(下部マントル、上部マントル)、地殻という層構造を構成する。このうち「地殻」と地殻に近い上部マントルとで硬い板状の 岩盤を構成している。これが「プレート」である。地球の表面は十数枚のプレートに覆われている。
 世界中の地震を見ると、地震が発生する場所と発生していない場所がはっきりと分かれている。地震の多発地帯は、別のプレート同士が接しているプレー トの相境界にある。日本周辺では、海洋のプレートである太平洋プレートとフィリピン海プレートが、大陸のプレートである北米プレートとユーラシアプレートの方へ1年あたり数cmの速度で、陸のプレー トの下に沈み込んでいる。このため、日本周辺では、複数のプレート相互による力が複雑に作用して、世界でも有数の地震多発地帯となっている。

 ハワイや中国内陸部で発生している地震のように プレート内部で発生する地震もある。ハワイの群発地震など、頻発する火山活動により地震が多発するのは、地球のマントルから発生してくる熱が、地下の岩層を膨張させて割れることによって地震を発生させる。火山の噴火もこの熱エネルギーによって発生する。
 下降プレートは通常「スラブslab」と呼ばれる。プレートが沈み始めると、重力が働く。非常に古い海底が沈み込む場合、スラブはほぼ真っ直ぐに落下するが、若いプレートが沈み込む場合、スラブは浅い角度で下降する。重力による「スラブ引っ張り力」が働く沈み込みは、プレートテクトニクスplate tectonicsを誘発する最大の力となる。Tectonicsは「構造地質学」を意味する。つまりプレートテクトニクスとは「大地の動きによる地質構造の変化」という意味。プレートは、地球の表面を覆う、十数枚の厚さ100kmほどの岩盤を指す。つまり、地殻とマントルの最上部を合わせたものである。リソスフェアlithosphere(岩石圏=地殻 + マントル最上部)とほぼ同じで、プレートであるリソスフェアが柔らかいアセノスフェアの上を対流することで、大陸規模の消長さえも左右する。
 海洋プレートなどの下降プレート(slab)に働いている力のバランスが変わると、スラブはゆっくりと引き戻される。このため、沈み込み帯のプレート境界である海溝が海側に動くことになる。海溝が後退すると、スラブ先端から相境界phase boundaryへ掛かる加重が減少する。この作用によって、スラブは境界boundaryをすぐに通り抜けることができなくなり、下降プレートslabは滞留する。
 地表では、海溝が海側に移動すると、大陸プレートが引き延ばされて、大陸地の海溝に近い部分が大陸本体から剥がされていく。引き剥がされたところには、中央海嶺と同じように新しい海底ができる。このようにしてできたのが、現在の日本海や日本列島であると考えられている。
 日本のように沈み込み帯にある大陸プレート側の島々を島弧(弧状列島)、島弧の背後方向、つまり大陸プレート側を背弧と呼ぶ。また,背弧にある海洋のことを縁海marginal sea(えんかい)と呼ぶ。
 大陸の外縁にあたり、島・群島・または半島によって部分的に囲まれているが、外洋との流入が自由な海、つまり日本海・ベーリング海・黄海・北海などの海底のことを背弧海盆back-arc basinと言う(arcはɑ'ːrk「弧」)。
 日本海のように、海溝から海洋プレートが沈み込む大陸プレートの後方に位置する盆地状のくぼみを背弧海盆と呼ぶ。背弧海盆は、プレートが沈み込んでいる地域において、火山フロントよりも海溝から離れた位置に形成される海洋底であり、例えば、⽇本海は約2000万年前に拡大した典型的な背弧海盆である。
 日本列島における沈み込み帯にあたる火山フロントの火山は、千島海溝・日本海溝・伊豆−小笠原海溝を結ぶ線と平行に弧をなして連なっている。この火山帯のうち最も海溝側の火山を結んだ線よりも海溝側には同時代の火山は存在しない。また、日本列島では火山フロントより東側(太平洋側)には活火山はほとんど存在しない。また、火山フロント上では火山の数や噴出物の量が圧倒的に多いのに対して、火山フロントから西へ遠ざかるに従って火山堆積物が少なくなる。そのため火山前線とも呼ばれる。
 火山は、プレートが沈み込んで深さ100kmに達した地点の真上に出来るため、プレート境界の内側に帯状に火山が並ぶ、それで火山フロントと呼ばれた。火山フロントの地下のマグマは一旦マグマだまりに蓄えられるなどしてから地表に噴出し、火山となる。火山は、沈み込んだプレートの深さが100~150kmに達したところの地表に、海溝軸にほぼ平行に分布することとなる。有珠山・富士山・桜島など、日本のほとんどすべての活火山は、火山フロントから大陸側の数十kmの幅の範囲内に集中している。
 フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが1億年以上もかけて沈み込んできた。プレート沈み込み帯では、太平洋プレートによって持ち込まれる水の働きなどによって、上部マントルの一部の融点が下がり融けて流動化して上昇しマグマが形成される。
 マントルは地盤の下にあり、高温でありながら高圧によって固体の状態を保っている。マグマは上部マントルが一部溶融して液体になったもので、密度が小さく隙間から上昇するようになる。

 伊豆諸島西部の海底も、背弧海盆の一部である。フィリピン海プレート上にある伊豆・小笠原弧の東側の伊豆・小笠原海溝から太平洋プレートが沈み込む、伊豆諸島西部の背弧海盆の一部である。その伊豆諸島西部の海底で、青ヶ島リフト・明神リフト・スミスリフトと呼ばれるくぼ地が拡大している。これは、海溝から太平洋プレートが沈み込む背後に形成されるもので、伊豆・小笠原弧から太平洋プレートが沈み込む過程で生じている。この海底地域では火山活動が活発であり、地殻が引きちぎられつつある。将来的には、日本海のように海底が広がっていくと考えられている。
 背弧海盆は通常、非常に長く、比較的狭い。多くの場合、長さは数千km、幅はせいぜい数百kmにすぎない。背弧拡張を形成するには、沈み込みゾーンの働きが大きいが、すべての沈み込みゾーンに背弧拡張機能があるわけではない。背弧海盆は、海洋地殻の沈み込むプレートが非常に古い地域に見られる。背弧海盆の幅が限定されているのは、その火成活動が水に依存しており、マントル対流はスラブによる深い沈み込みに伴う海水によるマントル溶融能力に頼り誘発されいる。そのため沈み込み帯に沿って形成される。

 背弧海盆内に広がる尾根は、中央海嶺から噴出した玄武岩と同様の玄武岩を噴出する。ただ背弧海盆玄武岩はしばしばマグマ性水に非常に富んでいる。通常1〜1.5重量%H2Oに対し、中央海嶺玄武岩マグマは非常に乾燥していて0.3重量%以下のH2Oである。
 背弧海盆玄武岩マグマの高い含水量は、沈み込み帯を下って、上位マントルmantle wedgeに運ばれた水に由来する。更に追加される水源は、含水量をほぼ一定した値で保つ角閃石という鉱物は、水を結晶の中に取り込んでおり、角閃石の研究は、含水マグマの化学研究を進化させている。

 地震学的観測による研究で、地球の浅い部分だけでなく深い部分、例えば地下410km付近にもマグマ(珪酸塩液体)が存在していると推定され、地球内部科学の分野における重要な研究対象となった。
 高温高圧条件下でマグマとなる鉱物を融解するには何らかの融点降下の役目を担う物質が必要で、それが水とされている。水の働きによって鉱物の融点が下げられれば、地球内部の高圧高温下でもマグマの融解は十分可能と考えられる。しかも、地球内部に存在するマグマには水が含まれていた。このような高圧力下で生成された含水マグマは、無水状態のものと全く異なる物理化学的特性を持ち、例えば含水条件下で生成されるマグマは低圧の領域ではSiO2の成分(酸性成分)が富むことが知られていたが、最近の研究では高圧の領域では、MgOやCaOといった塩基性成分を急激に溶かしこみ始めることが明らかになった。物質の物理化学的な特性は固体、液体関係なくその構造によって支配され、その構造を読み解くことが物質をより理解する上で必要不可欠となっている。
 MgO-SiO2-H2O系の試料で、Mg(OH)2、SiO2粉末を目的の量比で調合し、含水の試料として準備した実験が、茨城県のつくば市にある大学共同利用機関法人・高エネル ギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設PF-AR及び兵庫県の大型放射光施設SPring-8で行なわれた。高圧マグマの構造解析には、両施設の強力な加速器で得られる大強度パルス放射光を用いて回折パターンを解析した。
 X線回折法では、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設PF-ARや兵庫県の大型放射光施設SPring-8で、高強度の回折線を得ることで、含水マグマのX線回折データを収集している。
 この大強度パルス放射光回折を行うにあたり、新たに単結晶ダイヤモンドと白金の複合カプセルを試料用の容器として使用した。この封入法の開発により、含水マグマを完全に容器中に閉じ込めつつ試料からの高強度の回折線を得ることが可能となり、より正確な構造データを解析することに成功した。
 得られた含水マグマの回折データを解析することにより、マグマのような珪酸塩液体における中距離構造、主に…-Si-O-Si-…のようなSiO4四面体どうしがその酸素原子を複数個共有し連結することで網目状構造を構成している、この第一ピーク位置の圧力による変化に注目し、水の特性変化に由来すると考えられる不連続な中距離構造の変化をはじめて実験で見い出した。
 得られたX線回折データを解析することで、含水マグマの構造に関する情報を持ったX線干渉関数を得ることができた。更に、干渉関数を変換することによって実空間における局所構造に関する情報が得られる。この動径分布関数の解析結果から、このような液体の遷移的な構造変化は、構造に揺らぎが許される液体特有のものであった。珪酸塩液体の基本構造単位であるSiO4四面体中のSi-O結合距離は、圧力と共に徐々に伸びるという結果が得られた。特に、Si-O原子対由来のピークとMg-O由来のピークが重なり合うという結果もあり、局所構造においても大きな構造変化が生じていることが分かった。このSi-O結合距離のように、本来圧縮に対して収縮するべきものが長距離化するという現象は、その構造単位の配位数が増加していることを示している。つまり、低圧において安定な4配位状態からより高い6配位構造へと徐々に変化していることを意味する。このような液体の遷移的な構造変化は、構造に揺らぎが許される液体特有のものである。
 はじめて高圧含水マグマの構造データを高温高圧下で収集することに成功した実験研究で構築された手法と、得られたデータは、今後、更なる高圧マグマの構造や物性に関する研究を進化させる契機となった。
 また、中性子回折法による構造測定では、含水マグマの構造を観察するため、X線に加えて水素に鋭敏な中性子を用いる回折実験も行われ、高温高圧における含水マグマの構造をその場で観察する実験にも成功している。

 ホットスポットの地下では周りに比べてマントルが高温になっており、定常的にマグマが発生している。これは、地球の内部からマントルプルームmantle plumeと呼ばれる上昇流が発生しているためと考えられている。
 このマントルプルームは、地球のマントル内の対流のメカニズムとして提唱され、異常な火山活動を説明するための有力な学説として提示された。
 プルームヘッドは深度が浅くなると部分的に溶けるため、ハワイやアイスランドなどの火山ホットスポットや、デカン高原やロシアのウラル山脈の東のシベリアトラップなどの大規模な巨大火成岩岩石区などにおける溶岩噴出はマントルプルームによる。火山領域の中では、プレート相境界付近でしばしば巨大な噴火を起こすが、地殻プレート相境界から遠く離れた地域でも大噴火の痕跡を遺す。

 デカン高原は、西インドの起伏に富む広大な台地、デカン・トラップが有名である。中生代白亜紀末から新生代第三紀始の約6800万年前~約6000万年前の間に、何度かの大規模なマグマ噴出があり、巨大な玄武岩台地を形成した。デカントラップの中には、火山層の厚みが2kmを超える地区もあり、陸上では過去2番目の大規模火山噴火があったと見て取れる。
 冷える溶岩の中で形成される鉱物の内部に閉じ込められた微量の元素を解析して、火山性の硫黄とフッ素の当時の放出量を計測し得たことで、地球への小惑星衝突が起こる前に、火山噴火によって大気中に放出された硫黄は、成層圏まで到達したようだ。
 硫黄は大気中に放出されると酸化され二次粒子・二酸化硫黄になる。これはエアロゾルの前駆体となる物質で、硫酸エアロゾルに化学変化する。 この硫酸エアロゾルは透明で、成層圏で漂うことで太陽光を散乱させ、大気も地表面も含めて冷却させる。また大気中のその物質がもたらす環境への影響は大きく、群棲・生態・気候などに衝撃を与える。
 エアロゾルの間接効果には、雲の生成・分布・特性に影響し、その結果、雲の放射収支や降水のパターンが変化することで、間接的に気候への影響を及ぼす。
 (雲は地球大気の放射収支に重要な役割を担う。太陽放射を宇宙へ反射して地表に到達するエネルギーを減少させ、地球を冷却する役割を果たす【日傘効果or冷却効果】。
 地表から宇宙への熱の放射を妨げ、エネルギーを地球大気にため込む作用があり、この効果により、地球は保温される【毛布効果or温室効果】。)
 その一方、大規模な火山噴火によって大気中に放出される微粒子やエアロゾルには温室効果と冷却効果がある。そのため過去にも巨大噴火によって、さまざまな気候変動が記録されている。噴火で気温が低下し、地球温暖化を抑えた事例もあるが、火山活動による気温低下が継続する期間は約1〜2年を超えることもある。
 小惑星衝突による恐竜の絶滅より前の時代に、何十年も続いた大規模噴火により、既に気候条件が悪化していたことが、ほぼ確実になった。
 この気候変動の苛烈さが、あらゆる種類の動植物の生存を困難にさせ、この時、既に恐竜絶滅の様相を呈していたと考えられる。哺乳類の台頭と進化に繋がったこの重大な恐竜絶滅事象に関する新説が登場する切っ掛けとなった。
  2021年に発表された調査結果により、デカントラップから、暴走する温室効果を引き起こすのに十分な量の二酸化炭素が放出された可能性が極めて高くなった。火山を起源とする冬に続いて、地球温暖化に逆転する苛烈さは、生物の環境ストレス応答能力を遥かに超える事態である。その最中での小惑星の衝突は、恐竜にとってまさに最期の一撃となった。
 高濃度の火山起源のガス【フッ化水素(HF)やフッ化物】は、爆発的な噴火の際に、噴煙内部の火山灰などの噴出粒子に集積凝縮し、フッ素による外膜を形成する。また、その集積した小さい粒子は火山灰に乗り、遠くまで運ばれるので、 フッ素の被害を拡大させる。しかも、フッ素は水に非常に溶けやすい。その火山灰が濡れた地面や雨に接触すると瞬時に水資源に含まれる。
 (フッ素原子のファンデルワールス半径は水素と同じくらい小さく、どんなものでも酸化する。化合物の一部の水素をフッ素に置換しても生体が区別することができず、同じ標的として認識される。フッ化物の急性中毒量は、体重1kgあたりフッ化物の量2mg。例えば、体重20kgの子供が40mgのフッ化物を摂取することで生じる。
 有機フッ素化合物PFOSは、難分解性が高く廃棄物処理が難しかったが、「PFOS」およびその関連物質を、環境に無害な「水」と「鉄」を使って効果的に分解・無害化することに成功した。
 世界的にフッ素は、半導体製造や次世代電池、液晶パネルなどの産業で広く使用されている。需要が増加して貴重となりつつあるフッ素資源のリサイクルを目指している。)


 シベリア・トラップは、シベリアのタイミル半島プトラナにある洪水玄武岩流である。ロシアの大規模な火山地帯の広大な火山性台地は、実に、数千km3もの玄武岩質溶岩流が何層にも積み重なっている。ペルム紀末期の大量絶滅が起きたのと同じ時期の2億9,900万から2億5,200万年前にかけての地質学時代特有の巨大噴火が重なった。このシベリア地帯の岩盤は、他の多くの火山地帯のように構造プレート相境界の上にあるわけではない。そのため比較的安定していた。しかし「生物大絶滅時代」に、地球の深度100km~300kmの広範囲におけるマントルプルームなどの上部マントル内の大規模な対流運動が活発化していた。このプルームは、100万年以上もの間続いていたようで、過去比類のない最大級の火山噴火を暴発させ、グリーンランドをも上回る広大なシベリアの台地を溶岩で覆い尽くした。
 度重なる巨大噴火は、大量の二酸化炭素やメタンを大気中に放出したため、海水は突然酸性になり、加えて温度が10度ほど上がり、酸素がほとんど含まない状態になった。メタンの単位当たりの温室効果は二酸化炭素の20倍以上とされている。
 海底に堆積しているメタンハイドレートは、低温かつ高圧の条件下で水とメタンによって形成される物質であるため、温室効果ガスとしても知られるメタンガスが、火山の巨大噴火で放出されることで海洋温暖化が進み、海底のメタンハイドレートが解け出し、海中にメタンガスが放出されると、そのメタンガスが原因となってさらに海洋温暖化が進む。
 大気と海面との間で酸素の交換が行われるため、その海水に溶けることができる上限の量付近まで酸素が溶ける。
 酸素を含めて気体は水温が低いほど水に溶けやすくなる。そのため海水の酸素濃度は、一般的に海面付近が最も高い。海面付近の海水の酸素量は、海水温が低い高緯度で多く、海水温が高い低緯度では少なくなる。海洋温暖化により海水の酸素濃度が低下すれば、海洋生物は生きていけない。
 溶岩が放出されると、その周りの岩も熱せられて変質する。これを接触変成作用と呼ぶ。何百万年にも及ぶ地質学的活動によって形作られた岩石には、多くの炭素や炭層が含まれている。 溶岩との接触によって料理された岩石は、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスを生み出し、排出するようになる。また、近年のフロンのようにオゾン層をむき出しにする化合物であるハロゲン化炭素化合物も放出する。
 そのために膨大な量の火山ガスが発生は、炭素循環の大変動の引き金となり、生物に壊滅的な打撃になる。恐竜が誕生する少し以前のことで、鳥や哺乳類は登場していないが、爬虫類や両生類が闊歩し、シダに覆われ、昆虫たちが行き交っていた。それが、たった20万年の間に、地球上の海生と陸生両方の生物の90パーセント以上がその姿を消してしまった。

  中国南西部四川省にある峨眉山の周辺には、玄武岩溶岩が広がっている。古生代ペルム紀末期末期の2億6200万から2億6100万年前に主な火山活動を起こし、その活動は2億5900万年前には終わっている。
 この一連の噴火で、100万km2の大量の溶岩を流出させた。初期では水蒸気噴火を伴う海底火山の噴火であったため、大量のメタンと二酸化炭素が放出され、それが大噴火に伴う大規模な各種塵象の発生と重なり「史上最大の生物大量絶滅」を引き起こした。ペルム紀の末期には激しい気温上昇が起こり、地球の平均気温は23℃にも達したが、それぞれの大噴火は、大気中に大量の塵と硫黄を送り込み日照を遮り、地球の表面を冷やし、氷河を作り、既に海水位を下げつつあった気候の寒冷化に拍車をかけた。

 峨眉山が噴出したマグマに大量の海洋地殻物質が含まれており、そのために膨大な量の火山ガスが発生し、地球規模の環境危機を引き起こした。
 特定の場所の火山活動が地球規模の大災害を引き起こす場合、そこには火山ガスの放出が関与する。火山ガスに豊富に含まれる二酸化硫黄(SO2)やハロゲン(周期表 17 族のうちフッ素・塩素・臭素・ヨウ素・アスタチンの五元素の総称。最も典型的な非金属元素で、生物体には必須の元素であるが、多量となれば有毒となる。)は短期的な寒冷化と酸性雨を引き起こす。一方、二酸化炭素(CO2)は温室効果を及ぼす。そのため巨大火成岩岩石区で溶岩が噴出する際に放出される火山ガスの量を計測すれば、その程度を評価することができる。
 峨眉山で上昇してくるマントルプルームには海洋地殻が含まれている。 この海洋地殻は、海溝を経由してマントルへとリサイクルされ、プルームの成分の最大20%を占めている可能性がある。実は、プルームに含まれる海洋地殻は、マグマが地表に到達する機構を変え、放出されるガスの量を大幅に増やす。
  海洋地殻成分を含むプルームは、マントル物質のみからなるプルームに比べてかなり密度が高いため、その上昇は純粋に熱的なプロセスではなく、力学的なプロセスが加わる。それにより、マントルの最上部と地殻を「侵食」していく。 地殻の下部の熱的・力学的な侵食が起こすためには、よりも多くのマグマが必要となり、その分、ガスの量も多くなる。そのガスはリサイクルされた海洋地殻からもたらされる。 
 その揮発性の火山ガスは、玄武岩の溶融が起こる先端部からが抜けていくので、巨大火成岩岩石区の火山活動は大量のガス噴出から始まることになる。こうした大規模な爆発が活動初期にあったことは、大量の生物絶滅イベントと密接に関連しているシベリア・トラップや峨眉山(がびさん)トラップなど複数の巨大火成岩岩石区の調査で裏付けられている。

 大噴火により太陽光が遮断されたため、地表は暗く、しかも急激に気温が低下する。さらに、ちりやガスに含まれていた窒素酸化物や二酸化炭素が酸性雨となって、地表に降り注ぎ、その後、大気中に蓄積した二酸化炭素による温室効果が温暖化をもたらす。このような短期間に起る環境変化は、動植物にとって強いストレスとなる。特に、食物連鎖の基礎である光合成の停止は致命的であった。この光合成の停止による酸素濃度の低下が、陸上・海中ともに生物の生息環境を極度に悪化させ、ペルム紀と次の三畳紀の境目に、地球史上最初で最大となる生物大量絶滅を招いた。

 ペルム紀とは、今から約2億9900万年前から約2億5190万年前までを指す地質時代で、それはパンゲア大陸の時代でもあり、ユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・インド大陸・オーストラリア大陸・南極大陸など、すべてが一つになった超大陸が存在していた。 人類が誕生する前の時代であったが.、さまざまな巨大な両生類や爬虫類生物群として3億年前に両生類から進化した爬虫類が急速に多様化し進化した)が生息していた。 他にも、恐竜や鳥類の祖先となる双弓類や哺乳類の祖先となる単弓類が繁栄していた。 植物はシダ植物(古生代の後半である石炭紀とペルム紀はシダ植物とシダ種子類の時代。樹木のように大きくなるシダ植物であるリンボクやカラミテスが繁り、これらの大森林は石炭となって地層に残されている。)の他に、イチョウ類やソテツ類のような裸子植物が存在していた。 気候については、ペルム紀の初期は寒冷だったものの、末期の平均気温は23℃と、6億年前から現在まででもっとも高い気温だったと見られている。

 世界の火山は、プレートの相境界の海溝に沿う火山フロントと高温のマントルが浅いところまで上昇し、マグマが発生する海底火山活動が盛んな「海嶺」がある。「海嶺」の中で、海洋底の拡大に繋がる大規模な海底山脈を「中央海嶺」と呼ぶ。代表的な中央海嶺である「大西洋中央海嶺」では、大西洋の中央部に南北に連なる大きな裂け目となり、それが東西方向に引っ張られて海洋プレートを拡大させている。
 またホットスポットでは、陸のプレートに沈み込んだ海のプレートから放出され水の成分が、これにより上部マントルの一部を溶融しマグマを発生させ上昇させる。このような過程でいったん蓄えられたマグマが、様々な作用を受けて地表に噴出する。ホットスポットの地下では、周りに比べてマントルが高温になっており、定常的にマグマが発生する。

 火山フロント付近に火山が密集して、上部マントルから直接マグマが湧き出す。噴火は、火口が開いてマグマの圧力が減少すると、一斉に発泡し体積が増加し、火口からマグマが噴出する現象である。発泡が少ない場合には、溶岩流として噴出する。それらは、プレートを巻き込む力に対し、海溝に巻き戻す反発力による。海溝の長さは数百〜数千 kmに及ぶが、幅は通常数百 kmと狭いことが多い。
 流紋岩質のマグマは温度が800℃程度と玄武岩質マグマや安山岩質マグマと比べて低く、粘性が高いため、溶岩ドームのような特徴的な火山体を形成し、しばしば爆発的な噴火を引き起こす。
 流紋岩の主な構成鉱物は、石英、長石(カリ長石・曹長石)などの無色鉱物を主とし、 有色鉱物である黒雲母や角閃石類、まれに輝石類や柘榴石、大隅石(珪酸塩鉱物)、磁鉄鉱などを伴う。流紋岩は白色から灰白色であることが多いが、噴出時の冷却条件、噴出前後の熱水やガスによる変質、また結晶化度によって見た目の色は様々に変化する。
 流紋岩が見られるのは、主に海面下では背弧海盆や一部のホットスポットなどの伸張場である。このような場所では玄武岩と流紋岩がペアになって噴出し、その中間の組成である安山岩は見られないことが多く、「バイモーダル火山活動」と呼ばれる。一方で、沈み込み帯での流紋岩の産出、および流紋岩質マグマの火山活動は稀で、通常はデイサイトである。
 日本では島弧が日本列島で、プレートが動いていく先に日本海溝があり、島弧である日本列島の西側の大陸との間、「背弧海盆」として日本海がある。海溝から見れば、島弧の日本列島の背後にある海となる。いうなれば、縁辺海のうち、島弧ー海溝系に組み込まれているものが背弧ということになるから日本海も背弧海盆である。
 背弧海盆の玄武岩質マグマには多量のマグマ水が含まれ、深海熱水孔などで微生物による有機物合成が活発に行われている。ホットスポットでも、減圧融解によって玄武岩質のマグマが生じる。海底に湧き出した場合は火山島を造る。過去の地球では何度も大規模なホットスポットの拡大があり、玄武岩の巨大な溶岩台地が造られた。海底の溶岩台地は「海台」と呼ばれる。
 世界では、北米ロッキー山脈(イエローストーンを含む)やニュージーランドのタウポ火山帯、そしてアイスランドなどにおいて、バイモーダル火山活動による流紋岩の噴出が特徴的に見られる。バイモーダル火山活動とは、異なる2つのマグマタイプが同じ火山で交互に噴出する現象を言う。通常、バイモーダル火山活動では、マントル由来の玄武岩質マグマと流紋岩質マグマ(下部地殻融解によるデイサイト質)が交互に噴出される。アフリカ大地溝帯やアメリカのイエローストーンなど、大陸地殻が割れようとしている地域(リフト帯)でバイモーダル火山活動が観察されいる。
 日本の火山で多く見られるのは、安山岩質マグマのみでの火山活動は、ユニモーダル火山活動と言う。マントル由来の玄武岩質マグマと流紋岩質マグマ(下部地殻融解によるデイサイト質)の火山活動では安山岩質マグマは見当たらない。
 日本では伊豆諸島がそれにあたり、大島や三宅島が玄武岩質、新島や神津島が流紋岩質な、それぞれが近接している。
 日本の場合、伊豆諸島・伊豆半島や別府島原地溝帯は沈み込み帯火成活動に加えて背弧海盆拡大の要素を含んでいるため、流紋岩の噴出が見られる。 また、かつての背弧海盆拡大の痕跡として、日本海沿岸の各地に流紋岩が見られる。玄武岩であれば「海が裂けてできた海底火山」、その間の溝を埋めるのが堆積物である礫岩、砂岩、泥岩になる。

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 4)火成岩とは
 太陽が生まれて間もない頃、太陽の材料の余り物の塵やガスから原始惑星系円盤が形成された。原始惑星系円盤は、誕生直後の星の周囲に存在するガスとダスト(珪酸塩silicateなどの固体成分)から成る回転円盤である。
 ケイ素siliconは、半金属に分類される。地球地殻の質量の74.32 %は酸素(46.60%)とケイ素(27.72%)で占められており、地球の主要な構成元素のひとつである。石英quartzは、二酸化ケイ素 SiO2が結晶してできた鉱物石英の成分であり
地殻の大部分の構成要素になる。純粋な二酸化ケイ素は無色透明な水晶であるが、自然界には不純物を含むため有色の岩石が多い。また、圧力や温度の条件により、石英以外にもシリカ鉱物の多様な結晶相(結晶多形)が存在する。例えば、二酸化ケイ素 SiO2に富んだ流紋岩質の溶岩が急激に冷やされることで黒曜岩が生じるのが、黒曜岩の化学組成も流紋岩(まれにデイサイト)で、石基はほぼガラス質(化学的にはケイ素・酸素・水素の珪酸化合物がガラス状態になる)で少量の斑晶を含む。その流紋岩質マグマが水中などの特殊な条件下で噴出し、急激に冷やされ鉱物の結晶を形成する間も無く急に固結すると、黒色の天然ガラスになる。
 地殻の造岩鉱物の92%は、珪酸四面体SiO4のを結晶構造の基本単位とする珪酸塩鉱物である。珪酸四面体SiO4は、地殻の60%を占めると言われる二酸化ケイ素SiO2が高温・高圧で変化したもので、主要造岩鉱物は多数のSiO4四面体が規則的に結合して形成されている。この四面体は中性の珪酸塩の結晶構造の単位で、ケイ素原子が中心にあって、4つの酸素原子が頂点に配置されている。

 珪酸塩は、火山岩・深成岩・変成岩・堆積岩など幅広く多くの岩石に含まれている。そのため珪酸塩が成長することにより惑星が生まれる。円盤中の塵はお互いの重力によって集まり、直径数kmほどの微惑星にまとまる。およそ46億年前に起こった微惑星の衝突・合体の繰り返しによって、数百万年かけて、現在の水星から火星までの範囲に20個ほどの原始惑星が誕生した。原始惑星はしばらく安定して太陽の周りを回っていたが、やがてもう一つの原始惑星と衝突合体した。このような原始惑星同士の衝突を「巨大衝突giant-impact」と呼ぶ。
 原始惑星の軌道が他の原始惑星の重力により、しばしば大きく乱される。この不連続性により、原始惑星同士の軌道が交差し巨大衝突が起こる。地球の衛星である月も、この巨大衝突によって形成されたとも考えられている。
 更に原始惑星同士の衝突によって合体し、この20個の原始惑星から最終的に約一億年かけて、現在の太陽系に見られるような水星・金星・地球・火星など4個の地球型惑星が出来上がった。
 地球型惑星とは、珪酸塩鉱物が主体の岩石と、鉄を主成分とする金属から構成される惑星を指す。固体惑星、岩石惑星とも呼ばれる。地球型惑星の内部構造は、中心に金属からなる中心核、厚い岩石質のマントル、最も外側の密度の低い岩石質の地殻で構成されている。地球のマントルの主成分はカンラン岩(Mg2SiO4)であり、他の地球型惑星や月でもそれに近いと考えられている。
 地球は、太陽系で唯一、地表に豊富な液体の水を湛える環境により、生命体が存在する天体となった。しかも、窒素や酸素を主体とする大気層は600km以上の厚さがあり、そのままでは強力すぎる太陽からのエネルギーを和らげ生物圏を拡大させた。
 火成岩は、地球の地殻や上部マントルから噴出した溶岩で、その化学組成によって分類される。塩基性岩は、二酸化ケイ素SiO₂の含有量が重量比で45~52%の範囲にある火成岩を指す。一般的には、鉄・マグネシウム・カルシウムなどを多く含み、比重が大きく、黒色をしている。具体的な例としては、玄武岩や斑レイ岩がある。これらの岩石は、火山活動やプレートテクトニクスに関連して形成される。火成岩は地球の岩石の中でも重要なものであり、その成因や特性を理解することは地球科学の一環として興味深い。
 「安山岩」は、火山岩であり、海洋地殻を構成する岩石であるが、玄武岩よりも二酸化ケイ素を多く含んでいるため「塩基性岩」には含めない。具体的には、52〜57wt%が玄武岩質安山岩、57〜63wt%が安山岩と定義されている。

 「アンカラマイトankaramite」は海洋地殻をつくる玄武岩であり、海底火山のマグマ源マントルから直接形成された岩石であるため、マントルの成分やマグマの上昇過程を解明する鍵とされている。ひいては、大陸形成過程を解明する手掛かりが潜んでいる。
 アンカラマイトは苦鉄質組成の火山岩であり、豊富な輝石とかんらん石の斑晶石を含む玄武岩の暗い岩石の変種である。細粒の石基には有色鉱物オージャイトaugite(Caに富む単斜輝石の一種) と少量の黒雲母と斜長石、加えてアパタイトと酸化鉄が含まれている。
 アパタイトは、リンとカルシウムを主成分としたリン酸塩鉱物の燐灰石(りんかいせき)に分類される。世界各国で産出される鉱物であるが、ブルーやグリーン、イエローや赤など透明度が高い色合いが美しい。透明で大きく色の美しいものは宝石となるが、希少過ぎて採取は容易でない。
 小さなものが様々なアクセサリー用に加工されている。天然に数多く産出されるため一般に値段は安いが、硬度が小さいため、宝飾品にはあまり適さない。最もメジャーなものがブルーアパタイトで爽やかなブルーとその高い透明度により、人気は高い。

 輝石pyroxene(パイロキシン)は、珪酸塩鉱物の一種で、多くの火成岩や変成岩に含まれる代表的な造岩鉱物である。輝石は無色・緑色・褐色・黒色などの色があり、ガラス光沢を示す。自形結晶は短柱状で、二方向に岩石の割れる方向があり、割れやすいという性質が顕著に観察できる。角閃石に似ているが、割れる方向が交わる角度により区別されている。輝石は地殻の主要な岩石でもあり、火成岩や変成岩、上部マントルの岩石、月の岩石、隕石などに広く見出される。
 玄武岩は含まれる鉱物の種類でさらに分類され、単斜輝石(たんしゃきせき)とかんらん石olivineの大きな結晶をたくさん含むものがアンカラマイトと呼ばれる。一般的な玄武岩の結晶は、肉眼で見えるサイズの結晶が少ないが、アンカラマイトには大きな結晶がたくさん含まれているので目立つ。暗緑色の結晶が単斜輝石、黄緑色の結晶がかんらん石である。
 玄武岩や斑レイ岩などの塩基性の火成岩に見られる鉱物、カルシウム成分をかなり含む単斜輝石clinopyroxeneは、細長いことの多い角閃石に比べると、平たい板状の結晶・短柱形をしている。オープンな観察では、無色~うすい緑色に見え、屈折率が高いため周りの鉱物より少し飛び出して見える。かんらん石は丸い形や紡錘形を示すことが多い。オープンな観察では、無色透明な鉱物の周囲が風化して茶色になっていることが多い。
 マグマの周囲のかんらん石が壊れ、その岩片がマグマ中に落ち込んで、上部マントルで発生した玄武岩などのマグマに取り込まれ地表にもたらされた、言わばゼノリスxenolith(捕獲岩)として取り込まれたかんらん石や輝石類は、マグマから初生的に結晶化したため、数mm以下の小粒なものが多い。
 透輝石は1mm程度で少量のクロムを含み鮮やかなエメラルド緑色のものが多い。
 頑火輝石enstates(ギリシャ語で「対抗する」を意味する)は、ケイ酸塩鉱物の一種で、主成分はマグネシウム、化学組成はMg₂Si₂O₆で、鉄珪輝石ferrosilite(FeSiO3)と連続固溶体を形成する。頑火輝石は高い融点を持ち、約1400℃で溶け始める。火成岩や変成岩を構成する造岩鉱物の一つとして存在する。頑火輝石は透輝石より暗色で暗緑色~暗オリーブ緑色のことが多く、しかもやや大粒で、数mmに達するものは黒く見える。

土曜海山
 土曜海山は水深約3,200mの海底から立ち上がる、高さ約2,800m、直径約30kmの円錐形をした巨大な海底火山である。東京湾から南に1,000kmほど、小笠原諸島の火山島「西之島」の北、約50kmの位置にある。アンカラマイトの採取は、水深2,000〜3,000mの土曜海山の山腹で行われた。
 土曜海山や西之島は、フィリピン海プレートの下に太平洋プレートが沈み込む伊豆・小笠原海溝に由来する「伊豆・小笠原弧」と呼ばれる火山弧である。土曜海山という名前は、伊豆諸島の最南端に位置する孀婦岩(そうふがん)に近い方から順番に、日曜海山、月曜海山……、土曜海山まで7つの海山が並んでいる。それをまとめて「七曜海山(しちようかいざん)」と呼ぶ。
 通常、海底火山では、流れ出した溶岩が固まると、玄武岩よりも二酸化ケイ素を多く含む安山岩ができる。玄武岩も安山岩も、地下のマグマが噴出して固まってできた火山岩である。安山岩より玄武岩のほうが熱い・深いところでできる。
 土曜海山は、西之島から地続きで、50kmの距離、当然、安山岩があるだろうと考えられていた。しかし、潜航調査を行ってみると、土曜海山には「アンカラマイト」が豊富にあった。
 現在の西之島では、比較的浅い深さ約20kmまで、マグマをつくるマントルが上がってきている。そこでは安山岩マグマが生成され地上に安山岩溶岩として噴出する。土曜海山では、マグマをつくるマントルが深さ約50kmまでしか上がってきていない。そのマグマ源マントルが西之島よりも深くにあるため、そこからマグマが上がってくる間に輝石の多いアンカラマイトができるのだと考えられている。

 地下の岩石が溶融したのがマグマであり、地殻表層に上昇してくると周辺の温度が低いので、マグマが冷却するにしたがって鉱物結晶が晶出し、これらが集合して火成岩となる。このマグマが地表に噴出するか、あるいは地表付近で固結したものを火山岩と呼び、火山の噴火現象によりできる岩石の典型的な火山岩である。それに対して、マグマが地下深部で固結したものを深成岩と呼ぶ。火山岩と深成岩の中間的なものは半深成岩と呼ばれるが、量的には多くない。一般には、マグマの固結が地表か、あるいは地下で行われたかによって、火山岩と深成岩に2つに大別される。
 火成岩は、マグマが固結する際に、冷却速度が速いか、あるいは遅いかによって、固結した岩石の見た目や原子構造が完成される。火山岩のように、地表周辺で早く冷えて固結する場合は、鉱物の結晶が成長する余裕がなく、小さな結晶の集合体になるか、ガラスと呼ぶ非結晶質になる。これが火山現象でできる火山岩の特徴である。黒曜石も、火山岩の流紋岩であり、非結晶質のガラス質である。黒曜石は高温のマグマが急速に冷えることで形成され、鉱物が結晶化できないまま、特徴的な外観を持つ。
 火成岩の鉱物の組み合わせ、つまり鉱物組成にはある共通性が認められる。それぞれの鉱物の晶出温度(融点)に相違があるためで、同程度の融点をもつ鉱物同士が集まって岩石を形成する。このように、マグマから次々と鉱物を晶出していく作用を、結晶分化作用crystallization differentiationと言う。このようにして、融点の高い鉱物が集合した火成岩を苦鉄質岩(塩基性岩)と呼び、融点の低い鉱物の集合した火成岩を珪長質岩(酸性岩)と呼ぶ。その中間組成の火成岩は中性岩と呼ばれる。
 塩基性岩は、火山活動や地殻変動によって形成される、珪酸SiO₂の含有量が45~52%の岩石を指すが、この「塩基性」という語には、鉄・マグネシウム・カルシウムなどが豊富に含まれており、珪酸の含有量が比較的少ない特徴を示す。塩基性岩の玄武岩は、火山活動によって噴出される火山岩であり、緑色を帯びた輝緑岩(きりょくがん)は、化学組成や主な構成鉱物は玄武岩とほぼ同じで、斜長石(珪酸塩鉱物)と輝石からなり、かんらん石を含むこともある。
 斜長石は、純粋であれば無色である。灰長石CaAl2Si2O8曹長石NaAl Si3O8同士の固溶体を指す。微量成分や放射線、微小な包有物などの影響で白色・灰色・淡黄色・淡緑色・赤褐色など様々な色を帯びる。しかも、様々な種類の火成岩や変成岩に含まれるため、地球表層のあらゆるところで普通に存在する。)
 塩基性岩である斑レイ岩は、正しくは「斑糲岩」と書き、「斑(はん)」は“まだら”、「糲(れい)」とは“くろごめ・玄米”または”粗末な・荒い”であり、、言わば「粒状の黒い斑点のある石」と言う意味になる。無色鉱物である灰長石と有色鉱物である輝石類やかんらん石を主な構成鉱物とする深成岩、その組成は、苦鉄質火山岩の玄武岩におおよそ対応するが、必ずしも斑レイ岩は苦鉄質ではなく、斜長石を90体積%(vol%)も含む場合もある。この岩石は、含有鉱物の量比によってかんらん石斑レイ岩、角閃石斑レイ岩、また石英((SiO2が結晶してできた鉱物)やアルカリ長石はほとんど含まないが、石英を斑晶に持つものは「石英斑岩」、カリ長石の斑晶を持つものは「花崗斑岩」として細分される。カリ長石K-feldsparはアルカリ長石の一種で、カリウムとアルミニウムを含み、白色や灰色などの色を帯びることがある。
 マグマが地下深くでゆっくりと固まってできた斑レイ岩の見た目は、有色鉱物である角閃石(イノ珪酸塩鉱物のグループ;2個の頂点を共有したSiO4四面体が多数つながる, 鎖のような構造を持つ珪酸塩鉱物のグループ. 「イノ」とはギリシャ語で「鎖」という意)や輝石を多く含んでおり、全体が黒っぽい岩石が多い。同じ条件下の深成岩には花崗岩や閃緑岩があるが、無色鉱物はほとんどが斜長石であり、石英やアルカリ長石はほとんど含まない。暗緑色のかんらん石や黒色の輝石を主として、白色の灰長石を伴うようなものから、逆に白色の灰長石を主として、輝石やかんらん石を少量伴うものまでさまざまである。
 斑レイ岩は、緻密で大粒の結晶からなるため、岩石カッターで切断し表面を研磨して光沢を出す。建築石材や墓石として利用する。 日本では、花崗岩の石材名である「御影石」と対比して、「黒御影(くろみかげ)」という石材名で呼ばれている。
 斑レイ岩は、地中でマグマが固結した深成岩であり、島弧の玄武岩質マグマの結晶分化による集積岩であれば斑点模様を持つ岩石となる。玄武岩質マグマが地下で固結すると、層状構造の発達した斑れい岩体(層状分化岩体)を形成することがある。斑レイ岩体では、異なる鉱物組成や結晶構造を持つ層が、岩石中のそれぞれの鉱物が異なる速度で結晶化することにより、交互に現れる。
 マグマの中での結晶作用の研究には際限がない。
 南アフリカ共和国のトランスバール州にあるブッシュフェルト貫入岩体の分布面積は約6万7000km2、東西に460km、南北に245km、厚さは7000m以上に達する、それは5つの層状貫入岩体の集合体である。この巨大な岩体には、世界最大のクロムと白金の鉱床を含む。
 中国南西部の主要な四川省にある最南端の都市攀枝花にある鉱山では、層状斑レイ岩体中のチタン磁鉄鉱を採掘している。攀枝花は豊富な鉱物資源に恵まれ、チタンとバナジウムの埋蔵量はそれぞれ、世界最大と第3位である。


 火成岩を化学組成に基づいて分類する際、二酸化珪素SiO₂含有量が66%以上のものは酸性岩acid rockとされる。
 酸性岩は、火成岩の一種で、化学組成によって分類される。SiO₂の含有量が66%以上の岩石で、一般的には白色を帯びる花崗岩や流紋岩など。その酸性岩には、鉄・マグネシウム・カルシウムの含有量が比較的低い。
 花崗岩graniteは、ガラス質を含まない全体が細粒結晶の集合体であるため、流紋は見られない。この地殻深部で冷却・結晶化した深成岩の主成分は、無色鉱物の石英と長石であるため、外見は灰白色で、ゴマのように黒い粒が入っているのが普通である。主成分の長石がカリウムに富む場合は赤味を帯びるため、赤色や桃色の花崗岩もよく見られる。これに10%程度の黒雲母や角閃石などの有色鉱物を伴う。
 また、黒雲母などの有色鉱物を1割程度含む。この黒雲母が、黒色の輝石として、花崗岩の結晶構造において重要な役割を果たしている。黒雲母は、ケイ素・酸素・カリウム・鉄・マグネシウム・アルミニウム・水素・フッ素・塩素を主成分とする珪酸塩鉱物で、黒雲母自体は光沢のある黒色からやや褐色を帯びた黒色をしており、結晶の形は薄い板状、またはそれが積み重なったもので、自形結晶では六角板状になる。主に花崗岩や珪長質火成岩に広く含まれ、変成岩にも見られる。黒雲母を花崗岩の有色鉱物とする黒雲母花崗岩は、花崗岩の中でも最も一般的である。大陸地殻上部を構成する主要な岩石として、広く世界各地に分布する「御影石(みかげいし)」と呼ばれる石材の大半は、岩石学的には黒雲母花崗岩に分類される。
 花崗岩は大陸や島弧などの陸地を構成する岩石として、地球上に広く分布し、花崗岩の大きな結晶構造が、美しい模様を作り出しいる。非常に硬い岩石であり、耐久性があり、風化に対する耐性にも優れている。白色からピンク、灰色、黒色までさまざまな色を持ち、その美しい外観は、建築の外装や内装デザインにおいて重視されている。

火成岩とは?
 地下にマグマが存在していることは、日本列島には火山が多いので、日本人なら理解しやすい、地下の物質(岩石)が溶融したのがマグマであり、地殻表層に上昇してくると周辺の温度が低いので、マグマが冷却するにしたがって鉱物結晶が晶出し、これらが集合して火成岩となる。
 このマグマが地表に噴出するか、あるいは地表付近で固結したものを火山岩と呼び、火山の噴火現象によりできる岩石がこの典型となる。これに対して、マグマが地下深部で固結したものを深成岩と呼ぶ。火山岩と深成岩の中間的なものは半深成岩と呼ばれるが、量的には多くない。一般には、マグマの固結が地表かその周辺、あるいは地下深部で行われたかによって、火山岩と深成岩に2大別される。
 岩石を構成する鉱物を造岩鉱物と呼ぶ。造岩鉱物の大きさやその集合状態を組織と呼び、岩石の見掛けの状態を表している。火成岩の場合、マグマが固結する際に、冷却速度が速いか、あるいは遅いかによって、固結した岩石の見掛けが変わる。早く冷えると、結晶が成長する余裕がなく、小さな結晶の集合体となるか、結晶する余裕がなければ非結晶質(ガラスと呼ぶ)となる。これが火山現象でできる火山岩の特徴である。

 マグマの冷却の速さが遅いと、マグマから晶出する鉱物結晶が十分に成長することができ、ガラス質の固体は生まれない。マグマはすべて結晶化し、しかも数mmの大きさに達する。このような結晶質(等粒状組織または完晶質組織という)の岩石は、マグマの固結が地下深部で行われ、しかもマグマの体積が大きい場合が多い。深成岩はこのような環境のもとに形成された火成岩で、地殻の大半を占める。通常、マグマの冷却の速さは、早いか極端に遅いかのどちらかに分かれており、半深成岩的な組織を示す火成岩はそれほど多くはない。
 火成岩の鉱物の組み合わせ、つまり鉱物組成はある原則が伴う。このことは、それぞれの鉱物の晶出温度(融点)に相違があるためで、同様の融点をもつ鉱物が集まって岩石を形成する。このように、マグマから次々と鉱物を晶出していく作用を、結晶分化作用という。このようにして、融点の高い鉱物が集合した火成岩を苦鉄質岩あるいは塩基性岩と呼び、融点の低い鉱物の集合した火成岩を珪長質岩あるいは酸性岩と呼ぶ。その中間組成の火成岩は中性岩と呼ばれる。
 地球の表面である地殻を構成する主要な元素は、酸素O・珪素Si・アルミニウムAl・鉄Fe・カルシウムCa・ナトリウムNa・カリウムK・マグネシウムMg・チタンTi で、これだけでほぼ99%を占める。
 また、マントルは主に、O・Mg・Si・Feからなっていると考えられている。火成岩のもととなるのは、高温の流体であるマグマであるが、日本列島のような島弧 (または火山弧) でマグマが発生する領域は、マントル上部から地殻の範囲にある。したがって、マグマを構成する元素もこれらの元素が主体であると言える。厳密には、地殻やマントルを構成する鉱物の種類によって融点が違うことや、マグマのような液体に優先的に溶けやすい元素もあることから、マグマを構成する元素は地殻やマントルの標準とは一致しない。
 物質は高温状態ほど多くのエネルギーを保持している。地下で発生したマグマの温度は1,500℃以上にもなるが、マグマの中に溶けている元素も、同様に高温のうちは多くのエネルギーを得て単独に存在することができる。地下の場合は温度とともに圧力も上昇し、圧力も物質にエネルギーを与えるので、地下の高温・高圧の環境では、物質は地表と比べてはるかに大きなエネルギーを保持している。
 しかし、マグマが上昇して温度と圧力が低下すると、元素はエネルギーを失い、単独では存在できなくなる。そこで、安定な状態になるために別の元素と結びついてできるのが結晶である。
 結晶の安定性を決めるのは、その骨格となる構造である。結晶をつくるとき、元素はイオンとして電荷を持つが、全体の合計がプラスマイナス0にならなければならない。また、元素はそれぞれ大きさが異なる。
 結晶の構造は、例えてみれば大きなボールの隙間に小さなボールが入り込むような形になっている。しかし、元素の大きさがさまざまなので、電荷の合計がプラスマイナス0でも隙間だらけの組み合わせもあれば、緻密な組み合わせもできることになる。結晶が安定なのは、なるべく緻密な構造をとれる組み合わせである。
 このように、結晶をつくる元素の組み合わせには電荷と構造の制限があるために、通常のマグマから出現する鉱物の種類はある程度限定される。
 更に結晶にも温度・圧力との関係が生じる。つまり、高温で安定な結晶や高圧で安定な結晶など、結晶の種類によって性質が違う。例えば、高温で安定であった結晶も、マグマの温度が更に下がると安定ではいられなくなり、分解してしまう。そして、より低温でも安定な別の結晶を作る。色の付いた有色鉱物では、マグマの温度が下がるにしたがい、一般に次の順で晶出・分解する。
  かんらん石 → 斜方輝石、単斜輝石 → 普通角閃石 → 黒雲母
 色の付いていない鉱物 (無色鉱物) では、一般に次の順
  斜長石 → 石英 → カリ長石
 このため、例えば高温のマグマが噴出してできた玄武岩と、それよりは低温のマグマからできた流紋岩とでは含まれる結晶、つまり鉱物の種類)が異なる。
 サイズがほぼ同じで、イオンの電荷も同じ元素の場合、一種類の結晶の中でもお互いに置き換わることがある。これは固溶体と呼ばれ、置き換わる割合は主に温度によって決まっている。
 一般の岩石は、原子が規則正しく3次元に並んだ結晶構造を採っている。そのもっとも安定した結晶構造は、温度や化学組成などによって変化する。ある金属の結晶構造の中に他の原子が入り込んでも、元の結晶構造の形を保って固体状態で混じり合っている状態を固溶、そのものを固溶体と呼ぶ。固溶体として他の元素が入り込める限界の量を固溶限と呼ぶ。固溶限を越えて、元の結晶構造の固溶体(母相)の中に違う結晶構造を持つ相(析出物)が現れる現象を析出と呼ぶ。また,析出物が温度の変化によって、母相に溶け込む現象を固溶と呼ぶ。

アルカリ岩と非アルカリ岩
 鉱物はOとSiを含む。ところが、何らかの理由でSiに乏しいマグマが存在することが知られている。このようなマグマはSiの不足のため、温度が下がっても斜方輝石や斜長石の結晶をつくることができる。代わりにSi含有量の少ない別の鉱物 (ネフェリンなど) をつくりもする。このようなSiに乏しいマグマからできる岩石の多くは、相対的に(KやNa) を多く含んでいるため、アルカリ岩に区分される。普通にSiを含むマグマからできる岩石の多くは、非アルカリ岩に区分される。
 造岩鉱物には、苦鉄質鉱物として、カンラン石・輝石・角閃石・黒雲母があり、マグネシュームMg・鉄Fe成分が多く、相対的にSiO2成分は少ない。一般に、前者の鉱物ほど融点が高い傾向がある。有色鉱物・苦鉄質岩mafic rockでは、石英の主成分であるケイ素の量が少なく、代わりに鉄FeやマグネシウムMgといった金属元素が多く含まれて、その含有量が色の濃淡として現れ、この塩基性火成岩では、黒色から濃い灰色であり、玄武岩や斑レイ岩に多く含まれる。このように苦鉄質鉱物の含有量は岩石の色調を示しているので、有色鉱物全体の体積百分率を基として、火成岩分類の基準の一つとしている。これを色指数という。ただ、色指数という語は、天文学で星の明るさを表す用語として使われるが、それぞれ別次元の「見地」に依拠している。
 有色鉱物の量比にもとづく色指数による分類として、現在では色指数35、65、90を基準として、分類されている場合が多い。ただ、色指数による分類は確定されていないが、火成岩、とくに深成岩を肉眼で識別する場合には都合がよい。
 珪長質鉱物には長石と石英がある。石英はSiO2の結晶鉱物で、純粋なものは無色透明であるが、微量成分や放射線の影響で白色・灰色・黒色・紫色・黄色・桃色などを呈する。灰色の着色原因は、流紋岩自身に微量に含まれるウラン,トリウムなどの放射性元素からでるγ線(放射線)により、石英中の微量のアルミニウム原子の電子状態が変わることで光の吸収を起こしているためである。この石英はできた当初は無色だが、長い年月にわたるγ線の影響で徐々に光の吸収部が増え、無色→淡灰色→灰に変化する。自形結晶は先端の尖った六角柱状で、肉眼的なサイズとなれば特に水晶と呼ばれる。
 長石には、Ca・Na・Kの各成分に富む灰長石・曹長石・カリ長石の3種が含まれる。カリ長石は、KAl Si3 O8の組成を持つ長石の代表的な主要成分の1つで、石英と同様におおむね単独に存在するが、造岩鉱物として花崗岩類や変成岩、それらの砕屑物からなる砂岩などの堆積岩に広く含まれている。カリ長石の色は純粋なものは無色~白色であるが、放射線や微小な包有物の作用などで黄色・桃色・オレンジ色・赤色・褐色・青緑色などの色を帯びる。白い花崗岩には、カリ長石が20%以上含まれ、主成分のカリウム元素には、同位体カリウム40が極く微量含まれ、放射線を放出する。カリ長石は、宝飾品としての用途のために採掘されている。アメリカ合衆国コロラド州には、カリ長石(青色のアマゾナイト)と石英(黒色の煙水晶)からなるペグマタイトpegmatite晶洞(鉱物結晶が特に大粒【数cm~数十cm以上】になった火成岩の総称。大半のペグマタイトは花崗岩質であるが、閃緑岩質・斑レイ岩質・閃長岩質など様々な成分のペグマタイトが採取される)がある。造岩鉱物として花崗岩類や変成岩、それらの砕屑物からなる砂岩などの堆積岩に広く含まれている。
 灰長石と曹長石は固溶体をつくって一つの鉱物として振る舞い、灰曹長石oligoclaseと呼ばれる。灰長石成分の高い斜長石は融点が高いが、他は融点が低い。いずれにしても、Mg・Fe成分は少量で、逆にSiO2成分は多い。灰曹長石は、斜長石の一種で、曹長石に灰長石成分を10%から30%含む。花崗岩や角閃岩などに含まれている。曹長石はナトリウムに富んだ斜長石を指し、カルシウムに富む斜長石は灰長石と呼ばれる。変成岩中では、斜長石の組成は温度と圧力によって変化し、低温条件では灰長石、高圧下では曹長石として現れる。
 苦鉄質の鉱物は、通常の大きさをmmオーダーで見た場合、色づいて見えるので、有色鉱物と呼ばれている。一方、珪長質の鉱物は、無色又は白色であるため、無色鉱物と呼ばれる。通常、造岩鉱物は、この有色鉱物・無色鉱物の名称がよく使われる。
 他方、有色鉱物・酸性火成岩では、白色から灰色を呈している。無色鉱物:石英・斜長石・カリ長石など無色~白色のもの。主にケイ素やアルミニウム、ナトリウムに富んでいる。花こう岩や流紋岩に多く含まれる。
 マグマの冷却の速さが遅いと、マグマから晶出される鉱物結晶が充満し、ガラス質の固体は生まれない。すべて結晶化したマグマは、数mmの大きさに達し、このような結晶質は等粒状組織と言う。その岩石は、マグマの固結が地下深部で行われ、しかもマグマの体積が大きい場合が多い。深成岩はこのような環境のもとに形成された火成岩で、地殻の大半を占める。通常、マグマの冷却の速さは、早いか極端に遅いかのどちらかに分かれており、半深成岩的な組織を示す火成岩はそれほど多くはない。
地球の構造
 地球の構造は、均質な球体ではなく、地殻・マントル・外核・内核が層状に積み重なる成層構造をなしている。地球の内部構造を分けるのには、2種類の方法がある。1つは地殻-マントル-核という物質や岩質の組成の違いに基づいた区分で、地殻が固体地球の表層を形づくる。その厚さは、大陸では平均30~40kmと厚く、海洋底では約6kmと薄い。大陸の地殻は上・下に分けられ、上部地殻は花崗岩質岩石、下部地殻は斑レイ岩質岩石(玄武岩質岩石)から成り、また海洋底地殻は斑レイ岩質岩石(玄武岩質岩石)から成ると考えられている。
 深成岩は、マグマが地下深くでゆっくり冷えて固まった岩石。大きく花崗岩類・ 閃緑岩・斑れい岩類から構成され、かんらん岩もしばしばその仲間に含められる。斑レイ岩は、玄武岩と同じく、ケイ酸分SiO2が少ない50%程度のマグマからできる。 玄武岩はそれが地表付近で急に冷えて固まってできるのに対し、斑レイ岩はそれが地下深部でゆっくり冷えて固まってでき、玄武岩よりきめが粗く、平均して1mmより粗い。
 それぞれの深さで、地震波の速度が不連続的に変化するモホロビチッチ不連続面(モホ面)が存在する。この不連続面を地殻とマントルの境とする。1909年、クロアチアの地震学者A.モホロビチッチがこの不連続面の存在を示唆したことによって命名された。モホ面を境にして、地震波のP波速度は 6~7km/s から約 8km/s に、S波は約 3.5km/s から約 4.5km/s に,密度は 2.7~3.0g/cm3 から 3.3g/cm3 にそれぞれかなり急に変化することが世界的に観測された。このようにモホ面を境にした地殻とマントルの物性の差異を、地殻は玄武岩、マントルはかんらん岩でできているためと説明するモデルが提示されている。
 地殻は上部マントルの一部と一体になってプレートを構成する。両者を合わせたこの層を「リソスフェアlithosphere(岩石圏)」と呼ぶ。リソスフェアはプレートテクトニクスにおいて重要であり、地震発生や火山噴火のメカニズムにも関連している。それは地球内部の一部を流動しやすさの違いで分けたもので、リソスフェアの下には、比較的軟らかい「アセノスフェアasthenosphere(岩流圏)」と呼ばれる層があり、プレート運動の潤滑剤的な役割をすると考えられている。
 もう1つは、剛体であるかないかという力学的な違い、つまり流動しやすさによる分け方である。剛体とは、一定の大きさがあり、変形しない物体を指すが、通常、スーパーボールであっても跳ね返る際に「変形」する。剛体のようにまったく変形しない物体は、実際には存在しえない仮想的な概念であり、物体の細かい運動を考える際に役立つため、力学的な違いに基づいて分類される。地球の内部構造を考える際にも、物質の組成だけでなく、剛体であるかどうで分類される。
 地球が大きくなったために内部の熱を現在までずっと保ち続けている。球内部は主に固体から構成されているが、マントルは長い年月をかけて対流し、液体のようになっている。緩やかなマントルは上昇し、冷たいマントルは核に向かって落ちる。この熱源があるため、マントルは対流し、地球環境や地殻変動など、そこに暮らしている生物に大きな影響を与えている。
 また、プレートテクトニクス(地球の地殻プレートが移動する現象)の主要な原動力となり、マントル対流によって、地球の表面のプレートが移動により、地震や津波、火山活動が発生する。
 地球の半径はおよそ6,378km、地球は誕生当時から地球内部のマントルの対流によって、その表面は絶えず姿を変化した。そのため、40億年以上の起源をもつ岩石やクレーターはほとんど現存していない。

 地球は約46億年の歴史をもつ、その歴史は主に生物の進化の過程を基に、多くの時代に区分されている。ただ日本列島が火山列島であると言う特殊性から、日本列島の地質の発達と地球レベルの生物の進化とは必ずしも共通しない。
 新生代古第三紀の始新世約4,000 万年前~漸新世約3,000万年前に、九州北部に石炭層が形成された。1960年代までは日本有数の炭田地帯であった筑豊炭田の石炭層は、新生代古第三紀始新世にこの北部九州にあった平野部(しばしば浅い海にもなった地域)に生えていた森林由来の石炭であった。筑豊ではヌマスギやメタセコイアなど、何れもヒノキ科の針葉樹が湿地に堆積して厚い石炭層を作った。筑豊炭田・唐津炭田・佐世保炭田・大牟田炭田を含む北部九州一体の石炭層の分布から見ると、新生代古第三紀において、一体的な地形区だったとようだ。地質時代の区分では、古生代石炭紀は、もっと古く約3億5920万年前から約2億9900万年前の時期を指す。

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