原始地球 primitive earth   TOP  お知らせ  諏訪歴史散歩  太陽系のメカニズム  さわやか信州
 

The atmosphere of the early Earth was rich in volcanic gases.

Life may have originated in the oceans of the early Earth.

In the primitive Earth, fire and stone danced beneath a sky of chaos,
     whispering the first breath of life.

 目次

 川の水の色が違って混じり合わないのは、河川支流の密度や水温の違い、また合流地点の流れも緩慢であれば、水は容易には合流しない!
 1)超大陸の創基
  安定陸塊 バルト楯状地 ロディニア超大陸 アバロニア微大陸
  カレドニア造山運動 ロディニア超大陸
 
 
  
 1)超大陸の創基
 ロディニアRodinia超大陸の形成は、地球史の中でも最も壮大な大地のドラマであった。ロディニアは、原生代の約13億年前から11億年前にかけて、複数の古代クラトンcraton(大陸の核)がプレート運動によって集結し、形成されたと考えられている。
 ロディニアのような超大陸を構成する「クラトン」や「安定陸塊」は、地球のダイナミックな活動を語り続ける存在でもある。
 クラトンとは、地球の地殻の中でも特に古く、安定した部分を指す。さらに細分化され、地表に古い岩石が露出している楯状地Shieldと古い岩盤の上に堆積岩が覆っているプラットフォームPlatformが定義されている。
 安定陸塊Stable Continental Blockは、そのクラトンを含む広域の概念で、クラトンと周辺の安定した地質構造を指し、プレート境界から離れていて、地震や火山活動が少ない長期的に地殻変動がほとんどない領域と定義されている。
 つまりクラトンは安定陸塊の「核」とも言える。

 安定陸塊の「規模」に関しては、明確な数値的基準は存在しない。地質学的には、安定陸塊とは長期間にわたって大きな地殻変動や火成活動を受けていない地殻の、非常に古くて安定した部分を指し、その定義は主に構造的・年代的特徴に基づいており、面積や厚さなどの物理的な「規模」は、あくまで参考値に過ぎない。
 安定陸塊の特徴と規模に関しては
  ① 通常、先カンブリア時代の約25億年以上前の太古代に形成された岩石で構成される。
  ② 地殻の厚さは約35〜45km、場合によってはそれ以上(地球平均より厚い)。
 代表的な安定陸塊の例
  • カナダ楯状地(北米クラトン
  • バルト楯状地(東欧クラトン
  • アフリカ楯状地(コンゴクラトンなど
  • オーストラリア楯状地
  • インド楯状地(デカン高原を含む

 これらはそれぞれ数百万km2に及ぶ広大な領域であるが、地質学的には「どれだけ古く、しかも変動を受けていないか」が本質的な基準になる。つまり、「規模」よりも「年代と安定性」が安定陸塊と断定する評価指標となる。
  ③ 面積の目安としては、数十万〜数百万km2、しかしカナダ楯状地は約500万km2にも及ぶ。
  ④ 地震活動は、地殻が安定していることが最重要な評価軸となれば、非常に稀でなければならない。
  ⑤ 構造は、まさに『楯状地(露出した古い岩盤)』か『プラットフォーム(その古い岩盤が堆積物で覆われた部分)』になる。

 『バルト楯状地Baltic Shield』は、フェノスカンディアン楯状地とも呼ばれる。フェノスカンディア半島は、スカンジナビア半島(約75万km2、ヨーロッパ最大の半島、ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの一部、そしてロシアの一部を含む)とコラ半島約 10万km2、ロシア領の最北西端にある半島であり、ムルマンスク州の大部分を占める。ほぼ完全に北極圏内にあり、北はバレンツ海、東と南東は白海に隣接している。)、フィンランド本土やその東に隣接するカレリア1940年から1956年までは、ソビエト連邦のカレロ・フィンランド・ソビエト社会主義共和国、1956年に再び自治共和国、1991年のソビエト連邦解体後もロシアの一部であり続けた。)を含むヨーロッパの半島である。
 東ヨーロッパのクラトンに属する地殻の一部であり、フェノスカンディア、ロシア北西部、バルト海北部の大部分を表している。それは主に太古代と原生代の花崗岩と花崗岩の変成岩(片麻岩)と緑岩(主に閃緑岩として知られ、マグマが地下深くでっゆっくりと冷えて固まることで形成される。花崗岩より黒っぽい。)で構成されており、地中深いところで高温と高圧にさらされた結果、時間の経過とともに物理的および化学的変化を受けているが、造山運動や地震、火山活動も極めて少ない。それでも地殻変動によって多くの変形が生じているが、厚さ250〜300 kmのヨーロッパ大陸最古の岩が含まれている。 
 デンマークの一部にもの、バルト楯状地の地下には、先カンブリア時代の結晶質岩(花崗岩・花崗閃緑岩)や石英・斜長石・有色鉱物からなる花崗岩に近い深成岩トーナライトtonalite、高度に変成された片麻岩Gneissは、花崗岩起源のものが多く、複雑な構造を持つ。有色鉱物組成の黒雲母や角閃石を含むが層広がっている部分もある。
 火山性堆積物からなる岩石帯では、緑色片岩や角閃岩、グラニュライト相の変成岩が含まれる。先カンブリア時代、深部での形成されるグラニュライト相岩石は、地殻の下部〜中部(深さ20〜40km)で形成される。高温(700〜900℃)、高圧(6〜12 kbar)という極限環境下で、原岩が再結晶化し、脱水反応を経て無水鉱物が優勢になる。
 古生代前期のオルドビス紀〜シルル紀(約4億9千万年前〜4億年前)におけるスカンジナビア造山運動により、地殻が厚くなり、深部の岩石が変成さた。この時期に、グラニュライト相岩石は地殻の根orogenic rootとして形成され、安定したクラトンの一部となった。数億年にわたる風化・浸食作用により、上部の堆積岩や火成岩が削られていき、 楯状地は造山運動が少ないため、準平原化peneplanationが進み、現在では片麻岩・花崗岩・グラニュライト相岩石などが基盤岩として地表に現れて平坦化された。
  地殻にはたらく浮力が、地殻に働く重力より大きいため、地殻が浮力で上昇する『地殻のアイソスタシーisostasy(均衡浮力)』により、上部が削られると深部の密度が高い厚い地層が浮き上がる。これにより、かつて地殻深部にあったグラニュライト相岩石が地表に露出する。現在ではスウェーデン・フィンランド・ノルウェー東部などバルト楯状地の露岩、太古代後期の約30〜25億年前のグラニュライト相岩石が地表に広く分布している。地表に現れたグラニュライト相岩石の特徴は、斜方輝石・斜長石・石英などが粒状に並ぶ粒状組織、 鉱物の配列による縞模様構造などが見られる。特に乾燥した鉱物相であるため、含水鉱物が少なく、無水鉱物が卓越している。

 変成堆積岩Metasedimentary rocksは、古い堆積岩が変成を受けたもので、石英片岩などに代表される。これらの岩石は厚い堆積層を形成し、古生代〜新生代の地層に覆われて、地表には露出していない。言わば、地質構造的には楯状地の延長部とみなされるが、地形的・地表的には楯状地とは異なる様相を呈している。 その一方、デンマークでは、デンマーク・バシンDenmark Basinと呼ばれる堆積盆地にあって、これは古い基盤岩の上に厚い堆積岩層を形成している。この堆積盆地は、バルト楯状地の南西縁にあたるため、そのクラトンの縁辺部に形成されたプラットフォームと言える。
 デンマークは、ユーラシアプレートの安定陸塊Stable Land Mass上にあり、そのため地震活動や造山運動が少ない。これはバルト楯状地と同様の特徴であり、しかも地殻の安定性という点では楯状地的性質を共有している。地表には楯状地の特徴は見られないが、デンマークの地下構造としては
   基盤岩は、先カンブリア時代の変成岩・花崗岩(バルト楯状地の延長)。
   中間層は、古生代デボン紀〜石炭紀の海成堆積物。
   地表は、新生代〜古生代の堆積岩(石灰岩・砂岩・頁岩など
 デンマークの地表は主に新生代以降の堆積岩で覆われており、楯状地の基盤岩は地下深くに埋もれている。そのため、地表からは直接観察できないが、地質調査によってバルト楯状地の延長が地下に存在することが確認されている。

 バルト楯状地は、いくつかのブロックと複合体に分割され、太古代後期の約35億年前〜25億年前当時の先カンブリア時代の岩石で形成されている。最も若い岩石は、フェノスカンジア地塊の南西部にあたるスウェーデン南西部とノルウェー南部に、中原生代(約11.4〜9.8億年前)の壮大な地殻変動の痕跡となって露出している。その複雑な地質構造と多相変成作用の原因には複数の仮説があり、地球史の解釈に深い余白が生じている。
 一連の変成作用では、温度や圧力の値は一定に保たれずに変化する。この変化が異なった鉱物相にまたがり、かつ個々の変成相で再結晶作用が起こる場合に『多相変成作用』と言う。つまり、この多相変成作用は、岩石が異なる温度や圧力条件を通る際に発生し、変成岩が形成される過程を示す。楯状地内ではグラニュライト相・角閃岩相・緑色片岩相など、異なる温度圧力条件下で形成された変成岩が広く分布する。これらの相は、地殻深部から浅部への熱流量の変化や、構造運動の強度差を反映しており、地質構造の進化を読み解く鍵となっている。ただ、局所的な構造の複雑性、例えば断層系や地向斜の累重などにより生じる変成作用で、空間的・時間的不連続性の分析解明にはまだ課題が残っている。
 地向斜は、大陸辺縁や造山帯に形成される沈降性の堆積盆地であれば、長期間にわたり堆積物が蓄積される。例えば、初期には浅海性の堆積が中心であっても、沈降が進むにつれて深海性の堆積物のチャート・粘板岩・凝灰岩なども加わる。
 「累重」により、異なる時代・異なる構造運動によって形成された地向斜が、同一地域に重なって記録される。例えば、ある地向斜が造山運動によって変形・隆起した後、その上に新たな地向斜が形成され、再び堆積と沈降が起こる。このようなプロセスが繰り返されることで、地層の構造が複雑化し、変成作用も多相的になる。累重された地向斜は、複数の造山期を記録する地質アーカイブarchive(岩石・鉱物・化石・ボーリングコアなど地球の過去の記録を保存・管理するための資料群やデータベース)として機能する。
 変成岩の鉱物組成や構造、年代測定によって、それぞれの地向斜形成期の熱履歴や圧力条件などが復元されれば、これにより、バルト楯状地のような古代地殻領域で、多相変成作用の解明には不可欠な記録・資料となる。このような多相変成作用が繰り返されることで、地層の構造が複雑化し、変成作用も多相的になる。今後も、高分解能の地球化学分析や熱年代学的手法の導入により、より精密な変成履歴の復元が期待されている。
 スヴェコノルウェジアン造山帯には、地質的特異性があり、比較的カルシウムに富み、アルカリに乏しい火成岩系カルクアルカリ性の火成岩が卓越し、古代の沈み込み帯に由来する可能性がある。また角閃岩からグラニュライト相への変成作用が見られる。火山岩・深成岩・変堆積岩などから構成され、局所的に再加工された大陸地殻で、エクロジャイトグラニュライト相の変成作用が確認される。
  一部地域では、岩石が深さ35〜40kmに達し、高温高圧下でできた変成岩エクロジャイトeclogiteや先カンブリア時代に深部での形成されるグラニュライト相に変成している。 造山運動中に部分溶融が起こり、花崗岩の貫入とともにミグマタイトが形成された。現在のスヴェコノルウェジアン造山帯には、ノルウェー南部〜南西スウェーデンに広がる、片麻岩・ミグマタイト・花崗岩などが露出している。となれば、地質学的には、グレンヴィル造山帯の一部とみなされることもあり、超大陸ロディニアの再構築において重要な鍵を握っている。 地表に現れた岩石は、多変成・多期構造の証人として、地球の深部で起こった激変を静かに物語っている。
 (グラニュライト相は、変成岩の生成において、比較的一定の高温【500~650℃】と高力【数千気圧】で形成される鉱物相を指す。この相には、主に普通角閃石 hornblende・輝石・黒雲母・柘榴石・斜長石・石英などが含まれ、それらの成分は条件に適した新しい鉱物に再結合する。変成相の概念は、岩石中の鉱物の集合を調べ、それらが形成されたときに存在した圧力と温度【P / T】条件の潜在的な範囲を決定する体系的な方法となる。)

 かつては古代大陸の一部であったと考えられていたバルト楯状地は、近隣の地殻の破片との衝突によってサイズが大きくなり、特に古生代前期のオルドビス紀〜デボン紀(約4億8千万〜3億9千年前)における大規模なカレドニア造山運動Caledonian orogenyは、ローレンシア大陸(北米)とバルティカ大陸(北欧)およびアバロニアAvalonia微大陸の衝突を起因とする。
 アバロニアは、古生代のオルドビス紀からデボン紀にかけて、ローレンシア大陸やバルティカ大陸と衝突し、ユーラメリカ大陸Laurussiaの形成に寄与した。この微大陸は、現在の南東イングランド・ウェールズ・アイルランド南部、そしてベルギー・オランダ・北フランス、東部カナダ(カナダ東部の大西洋に面する隣接する州、ノバスコシアとニューブランズウィック)、米国北東部(ニューヨーク州など)の地域に分散されている。アバロニアはヨーロッパ西部と北米東部の一部に分かれて吸収され、現在のユーラシア大陸と北アメリカ大陸の一部を構成している。
 アバロニアは、カレドニア造山運動の主役の一つであり、イアペトゥス海の閉鎖とともに他の大陸と融合した。 その結果、ユーラメリカ大陸が形成され、後にパンゲア超大陸の一部とる。 微大陸とは言え、この融合は、地球の気候・海洋循環・生物進化にも影響を与え、脊椎動物の陸上進出など重要な進化的転換点にもなった。

 カレドニア造山運動は、スカンジナビア半島・スコットランド・アイルランド・グリーンランド、そして北アメリカのアパラチア山脈にまで及ぶ、広範囲な地質変動を引き起こし、その影響によりスカンジナビア山脈やアパラチア山脈などが形成された。それが、スカンジナビア半島からスコットランドにかけて分布するカレドニア山地、および北アメリカ大陸のアパラチア山脈が、その地域の造山運動による表現によるとしたこともあるが、現在はプレートの運動、ローレンシア大陸とバルティカ大陸の衝突が成因とされている。その後の数億年にわたる風化と氷河作用により、地形は根元まで侵食され、平坦に近い丘陵地帯や低い山地となっている場合が多い。
 特に、5 回の連続した更新世の氷河作用とその後の後退を通じて、バルト楯状地はその上にある堆積物が洗い流され、この広大な地域のほとんどが、特にスカンジナビア内では露出したままになった。そのため、東ヨーロッパの地質学的歴史とダイナミズムを研究する地球物理学者にとって、ノルウェー〜イギリス北部のカレドニア造山帯やロシア平坦地では古生代以降の堆積岩層が広く分布しているためもあって極めて重要な地域となっている。
 この地域は、バルト海を囲むように広がっており、湖が多く、衝突クレーターも多数存在している。 更新世後期の氷河時代(約2万年前)に厚い氷床で覆われていたため、氷が溶けた後の地殻が「アイソスタシーisostasy(地殻均衡)」により隆起も始めていた。
  新生代更新世後期(約12万9000年前〜1万1700年前)の最後の氷河期は、わずか16,000年前に発生し、巨大な厚さ3.2km程の氷のシートが地球の北半球の大部分を覆っていた。北半球の高緯度地域に広大な氷床が形成された時代であり、バルト海周辺も例外ではなかった。この氷床の形成と融解は、地殻の動態に深い影響を与えた。バルト海周辺と氷河性アイソスタシーの関係の始まりは、氷床による地殻沈降 による。氷河期にスカンジナビア半島は2〜3kmの分厚い氷床に覆われていた。この巨大な質量が地殻に加わることで、地殻はマントルに沈み込んだ。地殻は数百m規模で沈降した。氷が溶けた後に地殻が浮き上がる「アイソスタシー回復Isostatic recovery」が現在も進行中である。

 
完新世の始まり(約1万1700年前)は、ヤンガードリアス期という寒冷期の終焉とともに訪れた。グリーンランドの氷床コアでは、わずか10年間で気温が8.3℃も上昇したという記録もある。主な原因は、地球軌道の変化による日射量の増加である。これは「ミランコヴィッチ・サイクル」と呼ばれる天文学的な周期変動に基づいている。このサイクルは、地球の軌道や自転軸の変化によって、北半球の夏季に届く太陽エネルギー(日射量)が増減した。地軸の傾き(傾斜角)が変わることで、季節の強度が変化する。地球の公転軌道の形(離心率)が変わることで、太陽との距離が変化 する。地軸の向きの変化は、季節のタイミングが変化する。これらが組み合わさることで、約10万年周期で氷期と間氷期が交互に訪れる。
 この急激な変化が氷床の融解を本格化させ、海面上昇(縄文海進などの地球規模の変動を引き起こした。 約1万年前から始まった完新世の間氷期に氷床が融解すると、氷の重みが消失し、地殻は反発的に隆起し始めた。氷期が終わり、氷床が融けると荷重が消失し地殻は浮力によってゆっくりと元の位置へ戻ろうとする。これが『アイソスタシー回復運動』である。特にフィンランド北部のボスニア湾では、現在も年間約10mmの隆起が続いている。
  一方、氷床が融解し海水が増えたことにより、氷床から離れた海域では、海水による重みが増した海底が沈降する。 マントルは粘性体であるためすぐには反応しないが、ゆっくりと時間をかけて、海底の下にあるマントルが陸側に移動する。 その結果、陸域が隆起し、見かけ上、海面水位が低下するという現象が起こる。隆起により、海岸線が沖へと後退し、古い海岸線は内陸の高地に残されている。約8,500年前の海岸線が現在の200m高地に位置するという記録もある。
 これら一連の現象を、氷河性地殻均衡Glacial Isostatic Adjustment(
GIA)と呼ぶ。
 
( [英語] isostasyは、 地学用語で、地球内の深さ100km前後の層で均衡に達している。地表の地形上の相違にかかわらずかかわらず、その面から上の圧力が一定になり、全体として均衡が保たれているということが、重力測定によって立証されている【 地殻均衡説】。
 地殻は密度が比較的低く、流動性のある上部マントル(アセノスフェア)の上に浮いている。 そのため地殻の厚さや密度によって、浮力の大きさが変わり、地形の標高が決まる。 例えば、厚くて密度の低い地殻 は、高い山岳地帯 。薄くて密度の高い地殻 は、 海底など低地や海に浮かぶ。氷山のように、地殻の「見えている部分」は一部であり、地下にはそれを支える「根」が存在する。
 19世紀半ば、ヒマラヤ山脈での重力測定から、山の質量に対して重力異常が小さいことが発見され、この均衡を説明するために『アイソスタシーの概念』が提唱された。重力異常や人工衛星の軌道変化から、地殻の均衡状態を間接的に測定することができる。)

 地殻とマントル上部の硬い層、リソスフェアでは、氷床の荷重で沈降する。流動性のあるマントル層、アセノスフェアでは、沈降したリソスフェアを支える。その後の氷床融解後には、リソスフェアが浮上し、均衡を回復する。このプロセスは、数千年単位で進行する地球の「呼吸」とも言える現象である。バルト海周辺のアイソスタシーは、地球が過去の重みから解放され、静かに立ち上がり続ける。
 その 隆起速度はかつて年間9cm、現在でもボスニア湾奥では約1cm/年で続いている。 地震や火山活動は、プレート境界から遠く離れているため、地震や火山活動はほとんどなく、地質的に非常に安定している。

 バルト楯状地は、特に中部スウェーデンから南フィンランド〜ロシアのラドガ湖の東に分布しているラパキビ花崗岩や、変成作用による岩石の部分融解、言わばマグマの変成岩への貫入など花崗岩質の部分と変成岩質の部分を含むミグマタイトの露頭が豊富で、花崗岩・片麻岩研究の発祥地とされている。特に、新生代第四紀の氷河作用よる削剥で岩石の新鮮な露頭が多く、地質学的観察に理想的な環境にある。その安定陸塊の地盤を活かした鉱物資源の探査が行われる一方、自然保護区としての価値も高まっている。鉄・ニッケル・銅・白金族金属などの重要な工業用鉱物や鉱石を産出する。カナダ楯状地やアフリカのコンゴクラトンや西オーストラリア州のオーストラリア楯状地と類似しているため、バルト楯状地は長い間ダイヤモンドと金の産地が期待されていた。現在、北部の中央ラップランドグリーンストーンベルトは未踏地域であり、開発可能な金鉱床を保持する可能性があると考えられている。 最近の探査により、コラ半島ではダイヤモンドを含むキンバーライトが相当数、フィンランドでは金の鉱床が発見された。

 ロディニア超大陸は厚生代の約12.6〜9億年前に、こうしたクラトン同士が衝突・融合して約12.3億年も掛けて集積された。それぞれのクラトンは、地球の初期の地殻形成やマントル対流の痕跡を現代にも明瞭に遺存させている。このロディニアの再構築により集積されたクラトンの古地磁気データや構造地質学的証拠が、現代地球物理学の幅広い領域における研究の端緒なっている。
 ロディニアは、原生代(25億年~5億4,100万年前)の地質学的時代、約4億5,000万年もの間、地球上のほぼすべての陸地を組み込んだ超大陸であった。ロディニアは、いくつかの接続された陸地と近くにある他の大きなクラトンの融合で構成され、約12億年前のステニア紀Stenian(約12億年~10億年前)の初めに形成され、7億5000万年前、トニアン紀Tonian(約10億年~7億2000万年前)の終わり近くまで一緒に保持されていた。
 原生代の時代区分は、厳密な年代地層学測定により、地球規模の地質・生物イベントをもとに定義されている。
 ステニア紀(約12億年~10億年前)に地球の大陸プレートが集まり、巨大な超大陸「ロディニア」が形成された。これにより、地球の気候・海洋循環・生物分布などに大きな影響が生じた。
 また、プレートの衝突による造山活動が活発になり、地質構造が大きく変化した。複雑な細胞構造を持つ真核生物Eukaryotesが多様化し始め、後の多細胞生物への布石となった。
 ステニア紀は、地球自体がその骨格を整え、静かに未来の生命の活動舞台を築いていく時代でもあった。

 ロディニアからパノティアへの超大陸の変遷は、地球史の中でも特に劇的で章であるため、特に『新原生代』という時代の枠組みで捉えている。新原生代は原生代の最終期で、約10億年前から約5億4千万年前まで続いた。以下の3つの紀に分けられる。
 トニアン紀(約10億年~7億2,000万年前)は、ロディニアの安定期と初期分裂の時代であった。超大陸ロディニアが再び分裂を始め、地球の地形と海洋環境が劇的に変化した。これが後のスノーボールアース(全球凍結)への前兆にもなる。
 真核生物の生物多様性の拡大とさらなる進化が重なり、初期の多細胞生物の出現が見られる。特に藻類の繁栄が顕著で、酸素濃度の上昇が貢献した。
 多くの藻類、特にシアノバクテリアや緑藻は、太陽光エネルギーを利用して水を分解し、その水素を電子供与体として利用し、有機物を生成する。この光合成の際に酸素を発生させる。これは陸上植物と同じ仕組みで、地球の酸素供給の半分以上が海洋の藻類による。藻類は生息する水深や光環境に応じて、異なる色素を持つ。これにより、太陽光の様々な波長を効率的に吸収できる。
  | 藻類の種類 | ⇒ | 主な光合成色素 | ⇒ | 吸収する光の波長 |
 藻類が光を集めて反応中心へ伝える「アンテナ色素」が豊富で、その藻類の色彩はこれらの色素に由来する。これにより、限られた光環境でも効率的な光合成が可能になる。
 水中では赤色光が吸収されやすく、青色光は深くまで届く(水深による光の選択性)。
 藻類はこの特性に応じて色素を進化させ、深海でも光合成を可能にした。
 微細藻類はCO2を吸収し、酸素を放出するだけでなく、炭素を有機物として固定する(地球環境への貢献)。
 (微細藻類は光合成によって大気中や水中のCO2を取り込み、カルビン回路を通じてグルコースなどに変換する。このプロセスは、地球温暖化対策にも注目されている。
 光合成の「光反応」では、太陽光のエネルギーを使って水を分解し、電子を取り出す。この電子は電子伝達系を通じて移動し、その過程で、ATP(アデノシン三リン酸)が生成され、細胞内のエネルギー通貨として使われる。またNADPHは還元力を持つ分子で、C2固定のための還元反応に使われる。)
 主に水中で 光合成する緑藻・ラン藻などの微細藻類は、陸上植 物よりも太陽エネルギー利用効率が高く、培養する 液体に分散して利用することができるため、他の微生物と同様、工業的に扱い易い性質を持っている。この固定された炭素は食物連鎖を通じて他の生物へと渡り、地球の炭素循環を支えている。
 
  バイオマーカーbiomarkerの研究の進展により、化学的痕跡(ステロイドなど)から、特定の生物群の存在が確認されるようになり、生命の痕跡がより明瞭に分析されるようになった。
 トニアン紀には、その登場舞台に光が差し込み、生命がその輪郭を描き始めた黎明の時代でもあった。
 クライオジェニアン紀(約7億2,00~6億3,500万年前)の地質時代は、超氷河期に見舞われ、両極から赤道までの地球全体が凍結した(全地球凍結Snowball Earth)の時代であった。この「スノーボールアース」を生命がどのようにして生き延びたかは、科学者の間で長年の疑問となっている。表面の大部分が氷で覆われたため、太陽光がほぼ海洋に届かなかった上、凍結した大陸では風化がまったく起こらないため、海に流れ込む栄養分もなかった。おそらく氷の下の深海底にある熱水噴出孔が、生命の生き残りのために最後に残された場所となったかもしれない。クライオジェニアン紀の前後に真核生物が存在した証拠が化石記録で確認されているが、その間にどこに生息していた可能性があるかに関する直接的な証拠はほとんどない。
 米マサチューセッツ工科大学(MIT)地球大気惑星科学部、英ロンドンの自然史博物館、ニュージーランド・ワイカト大学などの研究者チームが行った最新の研究では、英探検家ロバート・スコットによる1903年の南極遠征の隊員が初めて「汚れた氷」と表現した領域、南極のマクマード棚氷に位置する様々なクリオコナイトホール(氷河で見られる小さな水溜り)と融氷水溜りから採取したサンプルを分析した。研究チームはすべての水溜りで明らかな生命の痕跡を発見した。さらに驚くべきことには、水溜りによって異なる生物群集が生息しており、生物多様性に富んでいることが明らかになった。
 エディアカラン紀(約6億3,500〜5億4,100年前)は、原生代最後の地質時代、いわゆる「先カンブリア期」の最後の時代でもある。スノーボールアースとして知られるクライオジェニアン全球氷河期の終焉後に、複雑な多細胞 動物相が初めて広範囲に出現した。約 5億3,900万年前のエディアカラ紀末の絶滅イベント中に絶滅した。超大陸パノティアは、この時代の終わりまでに形成されたが、エディアカラン紀末〜カンブリア紀初頭にかけて(約5.3億年前)、パノティアは急速に分裂した。 この分裂により、イアペトゥス海が形成され、後のパンゲア形成へとつながるプレート配置が始まった。
 ロディニアの分裂と全球凍結は、海洋化学や気候に大きな変化をもたらし、真核生物の多様化を促進した。パノティアの形成と分裂は、浅海域の拡大をもたらし、エディアカラ生物群の繁栄とカンブリア爆発の引き金となった。 
 「パノティア」はギリシャ語の「pan(全て)」+「notos(南)」に由来する。 南極を中心に配置していたため、この名が付けられた。
 約6億年前の先カンブリア時代末期、原生代のクライオジェニアン期(約7億2,000万年前~約6億3,500万年前)から原生代最後の地質時代エディアカラン期(約6億3,500万年前〜約5億4,100万年)にかけて、複数の安定陸塊が南半球で集合し、超大陸「パノティア」を誕生させた。
 ロディニアの崩壊と前兆
 • 約7億5000万年前、先行する超大陸「ロディニア」が分裂を始める。
 • コンゴクラトンがロディニアに衝突し、造山運動(山脈形成)が活発化。
 • この衝突は約6億4,000万年〜6億1,000万年前まで続いたとされる。
 クラトンの集合
  • アフリカ・南アメリカ・アラビア・インド・マダガスカル・南極・オーストラリアなどの安定陸塊が合体し、「元ゴンドワナ大陸」を形成した。
  • ローレンシア・バルティカ・シベリアなどの安定陸塊がこれと対峙する位置に集まり、最終的に南半球中心にパノティアが形成された。
 クラトン同士の衝突によって、現在の西アフリカやブラジルなどに変成岩や楯状地が形成された。 これらの地質構造が、パノティア形成の痕跡として残っている。
  パノティア形成後、地球は原生代末期の「スノーボールアース(約7億3,000~6億3,500万年前)」と呼ばれる全球凍結状態から脱出。
 • 氷が溶け、海面が急上昇。浅海域が拡大し、生物の生息環境が一変。

 パノティアの分裂(約5億3000万年前)
  • 分裂によって「イアペトゥス海」が誕生。
  • この海洋の形成は、エディアカラ生物群の出現と、カンブリア爆発(生物多様性の急増)を引き起こす要因となった。
 エディアカラ生物群は、約6億〜5億5千万年前の先カンブリア時代(エディアカラ紀)に存在した、地球最古級の多細胞生物群、その姿は、現代の動物とも植物とも異なる、まるで夢の中の生命体のような不思議な形態をしている。
 多くは殻や骨格を持たず、柔らかい組織のみで構成されているため化石として残りにくいが、泥流などで急速に埋没したことで印象化石として保存されていた。 地球上で最初期の多細胞生物とされ、クラゲ状・葉状・楕円形など多様な形態が確認されている。
 ディッキンソニアは、楕円形で体節状の構造を持つ印象化石。ネミアナは、クラゲ状の放射対称構造。カルニアは、葉状で繰り返し構造を持ち、海底に固着。スプリッギナは、三葉虫に似た体節構造を持つ可能性がある。
 多くは海底の微生物マット上に生息し、移動痕跡が残されているものもある。地球全体が氷に覆われた「スノーボールアース後に出現」し、環境の安定化とともに多様化したと考えられている。
 カンブリア紀初期に出現した硬い外骨格を持つバージェス動物群などとは異なり、エディアカラ生物群はその直前に絶滅したとされている。新たな捕食者の出現や環境変化が絶滅の要因と考えられている。

 ロディニアからパノティアへの大陸の消長過程
  ロディニアの分裂(約7.5億年前〜
 ロディニアは約11億年前に形成され、トニアン紀後半には分裂を開始した。分裂は北米(ローレンシア)を中心に、地溝帯の形成によって進行した。この分裂はプレート境界の活動によるもので、気候の寒冷化を引き起こし、全球凍結Snowball Earthへとつながった。
 クラトンの再集結とパノティアの形成(約6億年前
 ロディニアの分裂後、南半球で複数のクラトン(アフリカ・南米・インド・南極など)が再び集結した。この再集結によって形成されたのがパノティア超大陸であった。パノティアは「全ての南の地」を意味し、南極を中心に広がっていたとされる。
 パノティアの分裂とイアペトゥス海の誕生(約5.3億年前
 エディアカラン紀末〜カンブリア紀初頭にかけて、パノティアは急速に分裂した。この分裂により、イアペトゥス海が形成され、後のパンゲア形成へとつながるプレート配置が始まった。

  ロディニアは、21億年~18億年前に存在したコロンビア(またはヌナ)と呼ばれる超大陸の断片の収束から始まった。コロンビア超大陸は、約21億年前に複数のクラトンが集まり「安定陸塊」を形成し始め、約18億年前にはかなり統合された状態になっていたと推定されている。構成する「安定陸塊」としては、ローレンシア(現在の北アメリカの一部) • バルティカ(現在の北ヨーロッパ) • アマゾニア(南米の一部) • オーストラリア、そしてシベリア・北部中国・カラハリ(現在の南部アフリカ、主にボツワナ・ナミビア・南アフリカ共和国)などが広がる「安定陸塊」が、約15億年前まで安定して存在していたが、その後分裂していったと考えられている。
 コロンビアは「超大陸」として分類される程、複数の大陸塊が結合して形成された巨大な陸地であった。つまり、現代の「大陸」とは様相を異にするが.、地質学的には「大陸として存在していた」。
 この時代は地球の酸素濃度が上昇し始めた「大酸化イベント」も重なり、生命の進化に大きな影響を与えた。また コロンビアの形成は、プレートテクトニクスの初期段階を示す重要な証拠を遺存する。

 ロディニアを形成した大陸衝突の証拠は、13億年~10億年前に世界中の多くの場所で起こったいくつかの造山イベント、または造山運動を語る岩石の痕跡に現れる。この時期に発生した最もよく研究された造山運動はグレンビル造山運動であり、超大陸ロディニアの形成と関連して原生代中期~後期(約12億5000万年前~9億8000万年前)と長期間続いた。その記録が、ラブラドルLabradorからメキシコ、そしてスコットランドまで、北アメリカ大陸のかなりの部分にわたる顕著な造山帯である。ラブラドルは、カナダのニューファンドランド・ラブラドール州の大部分、州面積の71%を占める。原生代中期から後期のグレンヴィル造山地殻は世界中で発見されているが、一般的にはローレンシア山脈の南縁と東縁で発生したものだけが『グレンヴィル』の名で知られている。これらの造山運動は、アフリカではキバラン造山運動、西ヨーロッパではダルスランディアン造山運動としても知られている。現在の北アメリカ東部にはローレンシア(現在の北アメリカとグリーンランドから主に構成される安定陸塊)と別の大陸との衝突の痕跡を遺している。多くのモデル再建図では、ローレンシアがロディニアの中心に配置されている。しかし、ロディニア地球の各大陸の向きと配置は、引き続き議論の対象となっている。

 約8億2,500万年~7億4,000万年前に発生したより大きな大陸のリフティングイベント、そのプルーム活動と、その他の兆候や大陸分裂の初期の兆候には、スペリオル湖を経由してカンザス州まで米国のミシガン州間に広がるミッドコンチネンリフトとしても知られる。そのキーウィナワンリフトKeweenawan Riftには、玄武岩の広大な山や大陸横断リフトが含まれている。玄武岩は主に火山の噴火でマグマが急激に冷えて固まってできた火山岩で、鉄やマグネシウムを多く含むため、色は黒っぽく重い。主に鉄・マグネシウムのかたまりの「橄欖石」や「輝石」が多く含まれている。この亀裂は11億年前のもので、ローレンシアを分裂させたわけではないが、ロディニアの崩壊に関与した活動の最もよく研究された領域の一部である。
 キーウィナワンリフトは、米国ミシガン州を中心に、ウィスコンシン州やミネソタ州にかけて広がる古代の地溝帯で、原生代中期の約11億年前、ロディニア形成期に活動し、大規模な引張応力(ひっぱりおうりょく)によって形成されたリフト(地殻の裂け目)における、火山活動と堆積作用をより顕著に証言する。
 ロディニアは約11億年前に形成され、約7.5億年前から分裂を始めたとされているが、キーウィナワンリフトの形成は、ロディニアの内部応力の変化を示す兆候とされ、超大陸の安定性が揺らぎ始めた証拠と見なされている。
 地質学的には、キーウィナワンリフトはローレンシア(現在の北米大陸の原型)を分裂させる試みの一部であり、ロディニアの初期崩壊プロセスの一端を担った可能性が高い。 ただ、完全な分裂には至らず、リフトは『失敗した地溝帯failed rift』として現在も痕跡を留めている。
  キーウィナワンリフトは、超大陸の形成と崩壊のサイクルを理解する上で重要な地質構造で、このリフトの活動は、地球内部の熱的・構造的変化、さらには『プレートテクトニクスの進化』を示す貴重な証拠となっている。

 他の証拠はアフリカにも現れており、約8億年前のカラハリクラトンでの広範な堤防開発に代表される。カラハリクラトンとは、現在の南部アフリカ(主にボツワナ・ナミビア・南アフリカ共和国)に広がる安定した大陸地殻の一部で、先カンブリア時代に形成された非常に古いクラトンと言われる。地殻変動に対して高い安定性を持つ。その堤防(ダイク)開発とは、地殻の割れ目に沿ってマグマが貫入し、冷却・固化してできた板状の火成岩体が広範な堤防群を形成している。数百kmに及ぶ直線的な岩脈が並行して形成されることがあり、これはリフト(地溝帯)形成の兆候とされている。一部の地質学者は、ロディニアの分裂は、約8億年前にコンゴのクラトンが超大陸と衝突し、ロディニアが真っ二つに分かれた後に本格的に始まったことを示唆している。
 約8億年前のカラハリクラトンにおける「広範な堤防開発」とは、地質学的に言えば大規模なマフィックmafic(苦鉄質)岩脈群の形成を指す。これは、ロディニア超大陸の分裂に関連した地殻の引張応力とマグマ活動によって生じた現象である。
 苦鉄質岩mafic rockの「苦鉄質」は、「マグネシウムMg」と「鉄Fe」に富むことを意味する(magnesium + ferric【鉄の】)。色が暗く、密度が高い火成岩の総称であり、火山岩・深成岩の両方に存在する。一般的な火山岩で、海洋地殻の主成分の玄武岩や、苦鉄質深成岩で海洋地殻の下部やオフィオライト帯に分布するガブロなど、双方の特徴は、苦鉄質はほぼ同じ、主成分の斜長石・輝石・橄欖石もほぼ同じ比率で、、二酸化ケイ素SiO2の含有量も45〜52%程度と同じ程度で比較的少ない。
 ただ、両者は同じマグマ由来であるが、冷却速度の違いによって姿を変える。玄武岩は、地表や海底での火山活動による噴出後、急速に冷却されるため、結晶時間が短いためが小さく緻密になる。ガブロは、マグマが海洋地殻の下部や地下深部の深成岩として地下に貫入し徐冷されるため、結晶化が顕著に進行して、粗粒であるが肉眼でも識別が可能になるほど鉱物結晶が大きく成長する。そのため化学的には兄弟でありながら、、物理的には対照的な存在となる。
 オフィオライトとは  地球上の造山帯に産する玄武岩・ガブロ・斑糲岩・橄欖岩などによる層状複合岩体で、大きなものは長さ数100km、幅数10km、厚さ10km以上に達し、過去の海洋性地殻が造山運動によって大陸地殻に衝上したものと考えられている。)

 花崗岩は、クラトンcratonや安定陸塊の「骨格」として、地球史の深層で静かに冷却されてきた岩石で、30億年以上前の太古代の花崗岩質岩体も世界各地のクラトンに見られる。クラトンは、地球の大陸地殻の中でも、最も古く安定した部分、地震活動が少なく、侵食されながらも構造的にほぼ変化しない領域を指す。
 花崗岩は珪長質深成岩で、軽くて強い性質を持つ。 高いSiO2含有量65〜75%により、浮力があり沈みにくいため大陸地殻として長く残る。変成作用や再結晶化を経て、トーナル岩や片麻岩などに変化しながらも本質を失わない、地球の「記憶の石」として残る。構造的安定性を保ち、 多くのクラトンでは、花崗岩質の岩体が基盤を形成しており、地球の初期大陸形成に深く関与している。
 カナダ楯状地は、約40億年前のアカスタ片麻岩(花崗岩質)。
 南アフリカのカープヴァルクラトンは、約30億年前の花崗岩質トーナル岩が基盤。
 オーストラリアのピルバラクラトンは、約35億年前の花崗岩質岩体が広く分布。
 インドのシンガブームクラトンは、花崗岩質片麻岩が広範囲に露出。

 
 中央にローレンシア、周囲に他クラトンが集結
 ロディニアの崩壊からパンゲアの誕生に至るまでのプレート配置の変遷
  ロディニアの分裂(約7.5〜6億年前)
 • ロディニアは原生代トニアン紀終期の約7.5億年前に分裂を開始。
  ローレンシア(北米)・バルティカ(北欧・ロシア)・シベリアなどが離れ、イアペトゥス海が形成される。
 • クライオジェニアン紀(約7億2,00~6億3,500万年前)には全球凍結Snowball Earth(約7億1,700~6億3,500万年前)が起こり、プレート運動が一時的に鈍化した。
 パノティアの形成と分裂(約6〜5.3億年前)
 南半球のクラトンが再集結し、パノティア超大陸が誕生したが短命で、エディアカラン紀(約6億3,500〜5億4,100年前)の末期には再び分裂した。この分裂によって、イアペトゥス海が拡大し、パンゲア形成の舞台が整い始める。
 パノティア超大陸が完成したのは、約6億年前、新原生代のエディアカラン紀の初期とされている。 この時期、ロディニアの分裂によって離れたクラトン、アフリカ・南米・インド・南極・オーストラリアなどが、
南半球中心に再集結し、短命ながら壮大な超大陸パノティアが誕生した。名前の由来もギリシャ語の pan-(すべて)と notos(南)から来ており、「すべての南の地」を意味する。 その後、古生代カンブリア紀初期の約5億3,000万年前には分裂が始まり、イアペトゥス海が形成され、パンゲア形成への道が開かれていく。
 プレートの収束と衝突(約5億〜3億年前) •
  カンブリア紀以降、プレートの収束が進行。
  • ローレンシアとバルティカが衝突し、ユーラメリカ(ローラシアの原型)が形成。
  • ゴンドワナ(南米、アフリカ、インド、南極、オーストラリア)が南半球で統合される。
  パンゲアの完成(約2.5〜2億年前)
 
赤道付近に三日月型の超大陸が広がる。
  ユーラメリカとゴンドワナが衝突し、中生代三畳紀初期に、超大陸パンゲアが約2億5,000万年前に完成した。
  形成の流れは
  • ローレンシア、バルティカ、シベリア、ゴンドワナなどの大陸が、数億年にわたるプレート運動によって徐々に衝突。
の  • 古生代最終紀のペルム紀末には、ほぼすべての大陸が一つにまとまり、パンゲアが完成。
  • この時期、地球上の陸地のほとんどが赤道付近に集まり、巨大な内海「テチス海」が形成されました。
  地球環境への影響
  • パンゲア形成により、陸地が一体化し、 生物の移動は容易だが多様性が低下した。
  • 内陸部は乾燥し、沿岸部に浅海が広がり、 海洋生物の繁栄した。
  • プレートの衝突は山脈形成(例:アパラチア山脈)や気候変動を引き起こす。
 • パンゲアの形成に伴い、地球内部からスーパープルームが上昇し、火山活動が活発化。
  • これがペルム紀末の史上最大級の大量絶滅(P-T境界)の引き金になったと考えられています。
  • パンゲアは三日月型に広がり、内海テチス海を抱えていた。

 安定陸塊は、クラトンのうち、先カンブリア時代以降、大きな変動を受けず、安定した地域を示す。造山帯や変動帯、付加体に対立する概念である。クラトンと安定陸塊は密接に関連しているが、完全に同義ではない。両者は地球の大陸地殻の中でも特に古くて安定した部分を指すが、使われ方や含意に微妙な違いがある。
 クラトンは、地球の大陸地殻のうち、非常に古く、約40〜25億年前、かつ構造的に安定した領域で、地震活動が少なく、プレート境界から離れている。
 安定陸塊は、クラトンのうち、地質活動が少なく安定している部分を指す広義の用語で、特に、長い地質時代を通じて浸食を受け、基盤岩が地表に露出したものは楯状地shieldと呼ぶことが多いが、プラットフォームも、クラトンの一部で、基盤岩の上に堆積岩が覆っている構造的な領域を指す。地質学的には「盾状地」に対する分類で、構造的安定性が重視される。楯状地とプラットフォームは、文脈によってはクラトンと同義に使われることもある。
 地質学の文脈では、「卓状地」と「プラットフォーム」は非常に近い概念であるが、完全な同義語ではない。それぞれの言葉が使われる場面やニュアンスに微妙な違いがある。「卓状地」は、古い基盤岩の上に水平または緩やかに傾斜した堆積岩層が「卓状(テーブル状)」に、広がる地形で侵食に強く、広大な平坦地を形成する。地質構造よりも地形的特徴に焦点を当てた言葉である。「プラットフォーム」は、クラトンの一部で、基盤岩の上に堆積岩が覆っている構造的な領域で、地質学的には「盾状地」に対する分類で、構造的安定性が重視される。また、地形は必ずしも卓状とは限らない。ロシア・プラットフォームや北中国プラットフォームは、古い基盤岩の上に堆積岩が広がる構造的に安定した領域である。 その中に、地形的に平坦で卓状の部分があれば、それが「卓状地」と呼ばれる。卓状地は、地形学的な表現で、例えばアメリカのコロラド高原やオーストラリアの卓状地など。
 群馬県甘楽郡下仁田町と長野県佐久市にまたがる荒船山は、地形学的に「卓状地」に分類される。荒船山の山頂は広く平坦な台地状で、周囲の山々とは一線を画す特異な形状を示す。この平坦面は、かつて噴出した安山岩質溶岩流が侵食され、硬い部分だけが残った差別浸食地形で、こうした地形は、地学用語で「メサmesa」と呼ばれる。楯状地やプラットフォームとは呼ばない。

  約8億年前のこの時期、ロディニア超大陸は内部応力の蓄積により分裂を始めていた。このカラハリクラトンでの現象では、マントルからの苦鉄質マグマが地殻の割れ目に沿って上昇し、このマグマが冷却され、広範囲にわたる堤防群を形成した。これらの堤防群は、クラトンが引き裂かれようとした地殻の引張応力の痕跡であり、ロディニア分裂の初期段階を示す。
 
 地質や気象などの検証から、数々の超大陸が存在したこと、その3億年から5億年と続く統合・崩壊・再統合は、周期的であるが様々なパターンを示している。超大陸サイクルの具体的な原因については議論の余地があるが、ほとんどの研究者は、このプロセスが主に地球のマントル内の上向きと下向きの循環による駆動と理解している。
 超大陸サイクルの背後にある「内向性モデルIntroversion Model」と「外向性モデルExtroversion Model」は、地球の深部構造とプレート運動の長期的な傾向をめぐる壮大な仮説であり、そのそれぞれが、次の超大陸をどこに形成するのか、そしてなぜそうなるのか、その動態を説明しようとする。超大陸サイクルを説明するために3つのモデルが開発されており、そのそれぞれの『沈み込み帯』 における海洋地殻がマントルに戻される領域における位置状態に依存している。各モデルでは、超大陸が巨大な外海に囲まれて始まり、その莫大な圧力で生じる各リフトは、大陸の破片の間に新しい内海を作り出す。
 内向性モデルでは、内海が形成され、その中に沈み込み帯が発達する前にしばらくの間拡大し、比較的新しい海洋地殻を消費し、大陸の断片を新しい構成で引き戻す。つまり、次の超大陸は、前回の超大陸が分裂した場所の内側に再び集まるという考え方である。
 そのメカニズムは
 閉じた海洋の収束: パンゲアが分裂してできた大西洋などの「内海」が、プレート収束によって再び閉じられる。
 マントルの記憶効果: 超大陸の下にあったマントルプルームや熱構造が残存しており、再びプレートを引き寄せる力となる。
 沈み込み帯の再活性化: 古い沈み込み帯が再び活動を始め、周囲のプレートを引き込む。
 パンゲアローラシアゴンドワナ、三つの大陸が繰り広げる
  「壮大な舞踏劇」のクライマックスの幕開き。

  パンゲア大陸のすべての始まりは古生代最終期の約3億年前
 パンゲアPangaeaは、古生代末期〜中生代初期に存在した超大陸で、ほぼすべての陸地が一つに集まっていた。
 名前の由来はギリシャ語で「すべての地(pan + gaia)」。この超大陸は、地球のプレート運動によって形成され、後に分裂していく。
 古生代最期のペルム紀(約2億9,900万年前〜約2億5,217万年前)までに、パンゲアは赤道から両方の極地にまで及ぶ範囲で統合された。その広大な広がりは、その統合部に形成されるネオテチス海に加えて、新たなスーパーオーシャンは、超大陸パンゲアを取り囲んだパンサラッサ海も含まれる。周囲の水域の海流と気候に大きな影響を与えた。

 石炭紀後期から発達した氷河がペルム紀後期まで存在していたため、ペルム紀前期は冷涼、後期にかけて気温が上昇したが、パンゲア超大陸の形成期にあたり、総じてかなり乾燥した気候だった。
 パンゲアの北部(アメリカ、ヨーロッパ辺り)には巨大な砂漠が広がり、大陸の縁に森林が広がるような環境だったと考えられている。 これにより湿潤な森林から乾燥に耐える植物群が増加した。シダ類やトクサ類が依然として繁栄していたが、特に種子を持つ裸子植物が大きく進化し、多様化した。
 石炭紀に巨大なシダ類が湿地帯に大森林を形成していた。これらの巨木は標準的なものでも20m〜30mの高さがあった。
 大森林を作っていた大型のシダ植物は衰退し、やがて種子を持ち、花を咲かせない植物群が、ペルム紀に最も繁栄した。代表的な属には、コルテセフェルスCorynephorusやペルモセリクスPermoselixがあり、松やイチョウのような原始的な植物が多様化し、乾燥した環境に適応した。裸子植物が乾燥地にも森林を作るように変化していった。
 ペルム紀は古生代の終わりであり、大規模な生物大量絶滅期(ペルム紀末大量絶滅)に繋がっている.。この絶滅により、多くの生物が消えた一方で、ペルム紀後期に多様化した裸子植物は中生代の植物相の基盤となり、恐竜時代の植物生態系を形成する重要な役割を担った。
 この時代の植物化石は地層から多く見つかっており、ペルム紀の植物はシダ類などの古代植物と裸子植物の多様化が特徴で、現代植物の進化の重要な過渡期を示している。
 厳密には「花」は被子植物だけの構造で、花の定義は、被子植物が持つ生殖器官の集合体、雄しべ・雌しべ・花弁・萼片などが揃っていること、その花弁の役割には、受粉を助けるために昆虫などを引き寄せる視覚的・嗅覚的な装置にある。
 ただし、裸子植物にも「雄花」・「雌花」と呼ばれる構造があり、花粉や胚珠をつける器官がある。それは便宜的な呼び方であり、学術的には「花に相当する構造」とされている。 花弁がない裸子植物には、色鮮やかな花弁や萼片のような装飾的構造は基本的に存在しない。
 裸子植物は、種子植物の祖先的な形態を保っている。被子植物の「花」は、裸子植物の生殖器官がより細分化し昆虫との共生に適した形に進化したと言える。
 
(ペルム紀末に史上最大の大量絶滅が起きて、95%の種を失い地球の真核生物相が一変した。陸では、ペルム紀の爬虫類がこ の時に絶滅し、次の時代の三畳紀に恐竜と哺乳類が出現した。海では、古生代型動物や両生類が絶滅し、現代型動物群が出現した。その原因はシベリアの巨大火山活動で、それ による極端な温暖化と海洋深部の無酸素化が、原因と考えられていた。)

 パンゲアは中生代初期三畳紀の約2億年前に、現在の北半球の大陸の多くが属す北側のローラシア大陸(北アメリカ・ヨーロッパ・アジア北部)と現在の南半球の大陸の多くを含む南側のゴンドワナ大陸(南アメリカ・アフリカ・オーストラリア・南極・インド)の二つの大陸に分裂する。
 この分裂は、地球内部のマントル対流を起因にするプレート運動を原因とする。
 ローラシアとゴンドワナもさらに分裂し、現在の大陸が形成された。例えば、インドはゴンドワナから分離し、後にユーラシアプレートに衝突してヒマラヤ山脈を形成した。南極は孤立し、氷に覆われるようになった。

 このモデルでは、次の超大陸「アマジア」が現在の太平洋を閉じるのではなく、大西洋を閉じて形成される可能性があるとされる。
 地球史における内向性モデルの対応事例では、
 ロディニア → アマジア(仮説) では、古生代後期の石炭紀(約3億6000万~約3億年前)の約3億年前、ロディニアが分裂し、大西洋が形成された。この仮説モデルでは、大西洋が閉じて再び超大陸が形成されると考えられる。地球史的には、原生代の約10億年前、ロディニア→ パンゲアの流れが、内向性に近いとする説もある。
  マントル対流と超大陸形成における地球内部では、マントル対流が熱を運び、プレートを動かす原動力となっている。
 *対流の下降流(コールドプルーム)が沈み込み帯を形成し、プレートを引き寄せる。
 *対流の上昇流(ホットプルーム)が、超大陸の分裂を促す。
 このマントル構造 • 超大陸の下にあったマントル構造は、数億年にわたって残存する可能性がある。これが「内向性モデル」の根拠となり、地球がかつての結びつきを『記憶』しているかのように振る舞う。

 地球の未来地図 『アマジアの構図』 は、約 2億5000万年後 に形成されると予測される次の超大陸、 名称は「アメリカ」+「アジア」=「アマジア(Amasia)」。
 プレートテクトニクスとマントル対流の長期的なシミュレーションに基づく予測は、
  海洋研究開発機構JAMSTEC)によるスーパーコンピューターを用いた3次元マントル対流シミュレーションが、アマジア形成の可能性を裏付ける。
 プレート運動の方向と速度、例えばオーストラリアの北上速度は年間約7〜8cmも考慮されている。
 プレートテクトニクスとマントル対流の長期的なシミュレーションに基づく予測。
 北アメリカは、北上しユーラシアと衝突し北極付近で融合する。
 ユーラシアは、現在の位置を維持しつつ、北米と接続。
 オーストラリアは、高速で北上し、ユーラシアと北米の間に割り込む。
 アフリカは、北半球寄りに移動し、ユーラシアに接近。
 南アメリカは、北上するが、アマジアの中心には加わらない可能性がある。
 南極は、孤立したまま残るか、オーストラリアの南側に衝突する可能性がある。
 日本列島は、ユーラシアとオーストラリアの間に挟まれ、アマジアの一部に組み込まれる。

 太平洋の運命
 
• アマジアの形成により、太平洋は消滅すると予測されている。
  • その跡地には、巨大な山脈が形成される可能性がある。
  • 地球深部からのプルーム現象(マントル上昇流)も活発化する見込み。

 外向性モデルでは、次の超大陸は、前回の超大陸が分裂してできた外側の海洋(外海)を閉じることで形成されるという考え方である。
 新しい内海が拡大し、破片が互いに漂流し、後で地球の反対側で衝突する事を想定している。かつての外側の海は収縮し、そのほとんどが新しい超大陸が合体するにつれて分割される。
 パンゲア分裂後に広がった太平洋などの「外海」が、プレートの沈み込みによって閉じられる。地球内部のマントル熱対流が、外側の海洋プレートを内側に引き込むように働く。 このモデルでは、アマジアが太平洋を閉じて、現在のアジア・北米・オーストラリアが集結する形で形成されると予測されている。
  かつての外向性モデルの例では、ロディニア → パンゲアの過程では、
 ロディニアが分裂し、外側の海洋(太平洋の祖先)が広がった。
 その後、外海が収束してパンゲアが形成されたと考えられる。
 この流れは、外向性モデルの典型とされる。

 外向性モデルのメカニズム(段階的な流れ
  ① 超大陸の分裂と外海の拡大
 超大陸(例:パンゲア)が分裂すると、新しい海洋(内海)が形成される(例:大西洋)。同時に、既存の外海(例:太平洋)は、既に広大で、プレートはその方向にも拡大していく。プレート境界では海嶺(中央海嶺)が活動し、新しい地殻が形成され、プレートが外側へ押し出される。
 ② プレートの慣性とマントル対流の影響
 プレートは一度分裂すると、慣性とマントル対流の流れに沿って外側へ移動し続ける。マントル対流の下降流(コールドプルーム)が外海の縁に集中し、沈み込み帯を形成。 この沈み込み帯が、外側へ広がったプレートを引き戻す力となる。
 外海での収束と衝突
 外海の縁では、沈み込み帯が活発化し、プレートが収束を始める。例えば、太平洋プレートがユーラシア・北米・オーストラリアプレートに向かって沈み込む。この収束運動が数億年続くと、外海が閉じて新たな超大陸が形成される。
 
 地球内部の力学的背景
 海嶺は、プレートを外側へ押し出す(拡大)。
  マントル対流は、プレート運動の原動力。下降流が沈み込み帯を形成する。
  沈み込み帯は、プレートを引き込む収束点。外海の閉鎖を導く。
  プレート慣性は、分裂後の運動方向を維持し、外海へ向かう。

 プレートテクトニクスの概念は1960年代に定式化された。この理論によれば、地球にはリソスフェアとして知られる硬い外層があり、通常厚さは約100 kmで、軟流圏と呼ばれるプラスチック層(成形可能で部分的に溶融)の上にある。
 リソスフェアは、7つの非常に大きな大陸と海洋サイズのプレート、6つまたは7つの中型の地域プレート、およびいくつかの小さなプレートに分かれている。これらのプレートは、通常、年間5〜10 cmの速度で互いに移動し、境界に沿って相互作用し、そこで収束・発散、または互いにすり抜ける。このような相互作用は、地球の地震活動と火山活動のほとんどに関与しているが、地震や火山はプレート内部で発生する可能性がある。
 プレートの動きにより、プレートが押し合ったり収束したりする場所に山が隆起し、プレートが離散したり発散したりする場所に大陸が割れ、海が形成される。大陸はプレートに埋め込まれ、プレートとともに受動的に漂流し、何百万年にもわたって地球の地理に大きな変化をもたらす。

 目次へ

   スノーボールアースは、地球の表面がほぼ完全に凍り、おそらく極から赤道まで氷で覆われていた地球の遠い過去の一連の期間、より正確には一連の期間を表しています。新原生代(約750〜5億8000万年前)に発生したこれらの極端な氷河現象は、地球の気候と進化の軌跡を劇的に変化させました。 スノーボールアース仮説は、まだ議論と改良の余地がありますが、地球はほぼ完全な氷河作用のいくつかのエピソードを経験したと示唆しています。これは単に特に厳しい氷河期ではありませんでした。それは地球全体の深い凍結であり、最近の地質学の歴史で経験されたどのものよりもはるかに深刻でした。赤道付近で発見された氷河堆積物から炭素同位体比の大幅な変化まで、いくつかの証拠は、地球が時々巨大なスノーボールアースであったという考えを裏付けています。
 そこでの根本的な疑問は、このような極端な出来事がどのようにして起こったのか、そしてさらに重要なことに、生命はどのように生き延びたのかということです。答えは複雑ではありますが、地球の気候システムのダイナミクスと壊滅的な環境変化に直面した生命の回復力についての貴重な洞察を提供します。
 スノーボールアースの背後にあるメカニズムを理解することは、単なる古気候学の演習ではありません。それは、私たち自身の惑星の脆弱性と適応性を理解するのに役立ちます。
 スノーボールアース仮説の証拠は多面的であり、さまざまな地質学分野から引き出されています。これには以下が含まれます。
 低緯度の氷河堆積物:最も説得力のある証拠の1つは、新原生代に赤道近くに位置していた地域で氷河のティライト glacial tillites (氷河の破片から形成された堆積岩)と縞模様の岩盤(氷河によって洗われた岩の表面)の発見です。これは、巨大な氷床が典型的な極地をはるかに超えて広がっていたことを示しています。
  炭酸塩のキャップ:これらの珍しい炭酸塩岩層 unusual carbonate rock formationsは、通常、より軽い炭素同位体¹²Cが豊富で、氷河堆積物の上にあります。それらの形成は、岩石の急速な風化と、その後の氷の融解に伴う大量の二酸化炭素(CO₂)の大気中に放出されることに関連していると考えられています。このCO₂は海水と反応して炭酸キャップを形成しました。炭素同位体比の急激な変化は、地球規模の炭素循環の劇的な変化を表しています。
 それらの形成は、岩石の急速な風化と、その後の氷の融解に伴う大量の二酸化炭素(CO₂)の大気中に放出されることに関連していると考えられています。このCO₂は海水と反応して炭酸キャップ cap carbonatesを形成しました。炭素同位体比の急激な変化は、地球規模の炭素循環の劇的な変化をもたらす。
  cap carbonates
 縞模様鉄層Banded Iron Formations (BIF):先カンブリア紀によく見られるこれらの鉄が豊富な堆積岩は、原生代の時代以降、地質学的記録から事実上消えました。スノーボールアース仮説の出来事の後にそれらが再出現したことは、海洋化学の劇的な変化を示唆しており、おそらく長期にわたる氷の覆いが大気との酸素交換を阻害することに関連しています。
 岩石内の鉱物の磁気配向を分析することで、科学者は岩石が形成された緯度を決定できます。このデータは、低緯度地域で発見された氷河堆積物が、新原生代に赤道付近で実際に形成されたことを裏付けています。
 Snowball Earth イベントの開始は、いくつかの要因の複雑な相互作用である可能性があります。
 新原生代Neoproterozoicの間、地球の陸地の大部分は赤道近くに集まっていました。これにより風化が集中し、大気中のCO₂が減少し、温室効果が弱まります。
 太陽光度の低下:遠い昔は太陽が弱かったため、地球に届く太陽放射が少なかったのです。唯一の原因ではありませんが、全体的な冷却傾向に貢献しました。
 アルベドフィードバックAlbedo Feedback:これはおそらく最も重要な要素です。氷と雪が赤道に向かって広がると、より多くの太陽光を宇宙に反射しました(アルベドが高くなりました)。これにより、地球が吸収する太陽エネルギーの量が減少し、さらなる冷却と暴走フィードバックループでの氷の形成が増加しました。
 火山ガス放出Volcanic Outgassing:風化により大気からCO₂が除去されましたが、火山活動によりCO₂が放出されました。しかし、火山のガス放出速度は、少なくとも当初は、大陸構成とアルベドフィードバックの冷却効果を相殺するには不十分だった可能性があります。
 スノーボールアースのイベントからの脱出には、重大な気候強制力も含まれていました。
 火山性CO₂の蓄積Volcanic CO₂ Buildup:何百万年にもわたる氷の覆いにわたって、火山のガス放出によりCO₂が大気中に放出され続けました。氷床はケイ酸塩風化によるCO₂の除去を妨げたため、CO₂レベルは臨界閾値に達するまで徐々に増加しました。
 メタン放出:氷の下に閉じ込められたメタンハイドレートは不安定化し、強力な温室効果ガスである大量のメタンを放出し、温暖化プロセスをさらに加速させた可能性があります。
 融解と後退:温室効果が十分に強くなると、氷が溶け始め、アルベドが減少し、正のフィードバックループpositive feedback loop が引き起こされ、急速な氷河解消につながりました。
 風化と炭酸塩の形成:氷が溶けると、露出した岩の表面が急速に風化し、大気中の余分なCO₂が引き込まれ、キャップ炭酸塩が形成されました。
 新原生代Neoproterozoicには、スターティアン氷河期(約7億20〜6億6,000万年前)とマリノ期氷河期(約6億50〜6億3,500万年前)の少なくとも2つの主要なスノーボールアースイベントがあったと考えられています。3番目のイベントであるガスキアー氷河作用(約5億8000万年前)の可能性を示す証拠がありますが、その世界的な範囲はまだ議論されています。
 氷のないレフジアIce-Free Refugia:一部の科学者は、火山や地熱噴出孔の近くに、生命が生き残った可能性のあるオープンウォーター、または「避難所」の地域があったと信じています。
 氷床の下の融解水プールは、特定の生物に居住可能な環境を提供した可能性があります。
 海の深さ:海面が凍っていたとしても、地熱と塩分濃度により、より深い海は液体のままであった可能性があります。
 スノーボールアース事件を生き延びた生命は、主に細菌、古細菌、単純な真核生物などの微生物でした。これらの生物は、低温、低照度、限られた栄養素の利用可能性などの極端な条件に適応していた可能性があります。 多くの科学者は、雪だるま式地球の出来事が、約 5 億 4,100 万年前に始まった生命の急速な多様化の時期であるカンブリア紀の爆発に重要な役割を果たしたと考えています。雪だるま式地球の極端な環境条件は、新しく、より複雑な生命体の発達を促進する進化の圧力を生み出した可能性があります。その後の融解により栄養素の洪水が解き放たれ、多様化が促進された可能性があります。
 「スラッシュボール地球Slushball Earth」は、新原生代の氷河作用中に地球が完全に凍ったわけではないことを示唆する別の仮説です。代わりに、赤道地域には薄く壊れた海氷覆いがあり、太陽光がある程度浸透し、光合成生命を支えていたことを提案しています。スノーボールとスラッシュボール地球の両方のシナリオの証拠が存在し、氷河作用の正確な範囲は依然として進行中の研究のテーマです。
 科学者たちは古地磁気を利用して、過去の大陸の位置を再構築します。火成岩が冷えて固まると、その中の磁性鉱物が地球の磁場と一致します。これらの鉱物の向きを測定することにより、科学者は岩石が形成された緯度を決定し、その時点での大陸の位置を推測することができます。
 火山は、スノーボールアースのイベントを終わらせる上で極めて重要でした。先ほど説明したように、地球が凍っているときもCO₂を大気中に放出し続けました。この CO₂ は何百万年にもわたって蓄積され、最終的には氷を溶かして急速な氷河化を引き起こすのに十分な強力な温室効果を引き起こしました。
 火山は、スノーボールアースのイベントを終わらせる上で極めて重要でした。先ほど説明したように、地球が凍っているときもCO₂を大気中に放出し続けました。この CO₂ は何百万年にもわたって蓄積され、最終的には氷を溶かして急速な氷河化を引き起こすのに十分な強力な温室効果を引き起こしました。
 雪だるま式地球仮説は、生命は極限環境でも生き残り、さらには繁栄できることを示唆しています。これは地球外生命体の探索に影響を及ぼし、以前は居住不可能と考えられていた惑星にも居住可能な条件が存在する可能性があることを示唆しています。
 

 地球史上最大の氷河作用は、原生代後期に発生した。それらのほとんどがその痕跡を現在まで遺存している。最もよく説明されている出来事の1つは、南オーストラリア州のフリンダース山脈で、厚さ4 kmのティライトTillite(氷河堆積物)とバーブド堆積物Varved sedimentsが400 x 500 kmの面積を占めている。南オーストラリア州のフリンダース山脈では、地球史上最大級の氷河作用「スノーボールアースSnowball Earth」の痕跡が、厚さ約4 kmにも及ぶティライトとバーブド堆積物として保存されている。これらは、約6億3500万年前のマリノア氷期Marinoan glaciationに形成されたと考えられている。
 ティライトの成因は、氷河が岩石や土壌を削り取り、氷の下や末端で堆積させた砕屑物(ティル)が、後に固結して岩石化したもので、礫・砂・泥が混在し、分級されていない「無層理」の堆積物として存在する。氷河が直接運搬・堆積した証拠であり、フリンダース山脈では、Elatina Formation として知られる層に厚く堆積した。 地層は傾斜しており、まるで「石の図書館」のように、地球の歴史をページごとにめくるような構造になっている。 • ティライト層の中には、氷河が運んだ角礫や丸礫が混在し、氷河の力強さと広範囲な作用を物語っている。
 バーブド堆積物は、氷河の融解水が湖や海に流れ込み、季節ごとに異なる粒径の堆積物を層状に積み重ねたもので、細かい粘土層と粗い砂層が交互に現れる「年縞(ねんこう)」構造である。Elatina Formation の下部に見られ、季節的な氷河の融解と再凍結のリズムを記録している。これにより、当時の気候変動の周期性や氷河のダイナミズムが読み取れる。地層の中には氷筍dropstonesも見られ、氷山から落下した岩石が堆積物に突き刺さるように保存されている。 この堆積物群は、スノーボールアース仮説の最も強力な証拠の一つ。
 地球全体がほぼ氷に覆われた時代に、赤道付近でも氷河堆積物が形成されたことを示している。 その後のエディアカラ生物群の出現と関連づけられ、生命進化の転機とも深く関係している。これらの地層はまさに「地球の凍てついた記憶」で、 氷が削り、運び、沈黙のうちに積み重ねた物語が、今もフリンダース山脈の岩肌に刻まれている。
 詳細な層序と同位体年代測定は、スターティアン氷河期(7億2000万年~6億6000万年前)、ヴァランジェ・マリノアン氷河期(6億5000万年~約6億3500万年前)、ガスキアー氷河期(約5億8000万年前に発生した34万年氷河期)の3つの世界的な氷河作用が起こったことを示している。