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| 1)根石岳と天狗岳 夏沢峠を境に南北に分けられる八ヶ岳連峰において、根石岳はその北側に位置し、北八ヶ岳の最南端にあたる。八ヶ岳連峰は、長野県に広がる火山群で、一般的に「夏沢峠」を境に南北に分けられる。南八ヶ岳は、赤岳・硫黄岳・阿弥陀岳など、岩稜が険しくアルペン的な山容を見せる。北八ヶ岳は、蓼科山・縞枯山・天狗岳・根石岳など、比較的穏やかな山容で森林が多い。 根石岳(標高2,603m)は、夏沢峠の北側に位置し、北八ヶ岳の最南端にあたる。南八ヶ岳の険しさと北八ヶ岳の穏やかさのちょうど境目にあるため、両者の特徴を併せ持つ山とも言える。天狗岳のすぐ南にあり、八ヶ岳主縦走路の一部で、地質的には天狗岳と同様に火山性の地形を持ち、周囲には高山植物も豊富、登山者の間では、天狗岳とセットで縦走されることが多く、静かな穴場としても知られている。 根石岳は天狗岳と同様に火山性の地質を持つが、植生や地形の特徴には繊細な違いがあり、夏沢峠を含む周辺地形との関係からその形成過程が浮かび上がる。根石岳の地質は、天狗岳と同じく八ヶ岳火山群の噴出物に由来するが、根石岳は緩やかな稜線上の草原地形で比較的安定し穏やかで緑豊か、さらにコマクサ・チングルマ・ウルップソウなど花畑が広がる。南八ヶ岳や南アルプスの眺望も良好!ゆったりと高山植物が楽しめる。八ヶ岳火山群の火山岩は「輝石紫蘇輝石安山岩」で構成され、それによる地形形成は植生分布に大きな影響を与えた。鉱物組成の風化特性や土壌生成、浸食抵抗性になどに.直接関与している。 根石岳の輝石紫蘇輝石安山岩は、斜方輝石(紫蘇輝石)と単斜輝石(普通輝石)を含む中性火山岩で、玄武岩と流紋岩の中間に位置する。その輝石紫蘇輝石安山岩におけるSiO2含有率は、約52〜66 wt%(重量パーセント)で、これは一般的な安山岩のSiO2含有率の 57〜63 wt%範囲にほぼ納まる。 紫蘇輝石を含む安山岩は、特にソレアイト系列では、FeOが増加してもSiO2があまり増えない傾向があり、下限寄りの52〜58 wt%の可能性もある。ソレアイト系列の安山岩とは、鉄(FeO)に富みFeO/MgO比が高い。しかもアルミニウムAlO3に乏しい特徴をもつ安山岩で、主に海洋プレートや中央海嶺、背弧環境などで形成される火山岩である。結晶分化が進みやすい(マグマの進化)。 一方、日本列島のような島弧火山や大陸縁辺部であったためカルクアルカリ系列が主流となり、FeO含有量は低いが、Al2O3含有量は高いなどソレアイト系列の安山岩は比較的まれである。 輝石紫蘇輝石安山岩の輝石類には主に以下の2種が含まれる。普通輝石は緑黒色〜暗褐緑色で、透明感が乏しい単斜輝石に属する(単斜晶系)。単斜輝石とは、単斜晶系に属する輝石類の総称である。結晶の対称性が低く、三軸のうち二軸が直交しない構造を持つ。主な鉱物には、普通輝石Augite、緑輝石Diopside、灰鉄輝石Hedenbergiteなど。紫蘇輝石よりも後期に結晶化し、外側に成長することがある(並行成長)。 普通輝石は、単斜輝石の代表的な鉱物で、火成岩に広く分布する。化学組成は、(Ca,Na)(Mg,Fe,Al)(Si,Al)2O6のように多様で、マグネシウム・鉄・カルシウムを含む。柱状または短柱状の結晶を形成する。高温で結晶化し、玄武岩・安山岩・輝緑岩などに多く含まれる。 紫蘇輝石は、やや透明感がある(斜方晶系)。斜方輝石に属し、鉄とマグネシウムを含む珪酸塩鉱物、色は暗緑色〜暗褐色で、柱状結晶として産出する。火山岩中では斑晶として現れ、高温で結晶化する傾向がある。 両者を含む安山岩は「両輝石安山岩」とも呼ばれ、火山活動のマグマの冷却過程で同時に結晶化したことを示す。 根石岳は新生代第四紀チバニアン期の約20万〜30万年前の八ヶ岳火山群の活動によって形成されたとされる。その火山活動の終息期に噴出したマグマが冷却・固化し、輝石類を含む安山岩質の山体を構成した。 根石岳の輝石紫蘇輝石安山岩は、斜方輝石(紫蘇輝石)と単斜輝石(普通輝石)を含む中性火山岩で、マグマの結晶分化や混合履歴を物語る鉱物組成を持っている。つまり、輝石紫蘇輝石安山岩のシリカ含有量は約57〜63 wt%で、中性火山岩に分類される。その結晶は、長柱状・板状で、しかも安山岩・閃緑岩などでは高温でも先に結晶化される。 紫蘇輝石の含有は、鉄に富むマグマや高温環境を示唆する。しかも、高温下で紫蘇輝石が先に結晶化するため、後に普通輝石が外側に成長する「並行成長」が見られることがある。この構造はマグマの混合や温度変化の履歴を反映している。根石岳周辺では、これらの鉱物が斑晶として安山岩中に分布し、地質学的に重要な標本とされている。この並行成長Parallel Growth現象では、一部の紫蘇輝石の内部に普通輝石が外側に成長する「並行成長」が観察されることであるが、これはマグマの急激な化学変化や温度変化によるものである。
このマグマ混合Magma Mixingにより、異なる組成や温度のマグマが混合することで、両輝石が同時に晶出させた。例えば、玄武岩質マグマと流紋岩質マグマが混合すると、中間的な安山岩質マグマが形成され、普通輝石と紫蘇輝石の両方が安定に存在できるようになる。この 同化作用Assimilationは、周囲の地殻物質を取り込むことで、マグマの化学組成が変化し、晶出鉱物の種類も増え変化も多様になる。根石岳周辺の地質環境に由来する地殻成分の同化が、輝石類の多様性に寄与した可能性が想定される。 根石岳の輝石紫蘇輝石安山岩は、八ヶ岳火山列の活動履歴を物語る岩石であり、マグマの進化過程や火山活動の多様性を理解する鍵となる。紫蘇輝石の存在は、比較的高温で酸化的な環境下での結晶化を示唆し、普通輝石との共存は複雑なマグマプロセスを反映している。これは、マグマの温度と酸素の豊富さが鉱物の形成に影響したことによる。つまり、根石岳のマグマが比較的深部で酸素に富んだ状態で冷却・結晶化したことを示す。紫蘇輝石は、斜方輝石に属する鉱物であるから、主にマグネシウムMgと鉄Feを含む珪酸塩鉱物である。それは、 紫蘇輝石が約1000℃以上の高温環境で安定して晶出するからで、これはマグマの初期段階、または深部での結晶化を示唆する。酸化的とは、酸素分圧(fO2)が高い状態を指す。この環境では、鉄がFe2+からFe3+へと酸化されやすくなり、紫蘇輝石の分子式は (Mg,Fe)SiO3、または (Mg,Fe)2Si2O6 であれば、紫蘇輝石のような鉱物が安定して形成される。またその酸化的条件は、地殻の浅部や酸素を多く含む地殻物質との反応によってもたらされることもある。 根石岳の輝石紫蘇輝石安山岩に紫蘇輝石が含まれることは、地質的意味を持つ。マグマの酸化状態が高かった八ヶ岳火山群のマグマは、地殻物質との同化作用や水分の影響により酸化的になった可能性がある。 一方、深部からのマグマ供給と紫蘇輝石の晶出は、比較的深い場所での高温結晶化を示唆し、根石岳のマグマが深部起源であることを示す手がかりになる。鉱物共存によるマグマ履歴の復元 • 普通輝石との共存は、温度や酸化状態の変化に富んだマグマ履歴を反映しており、複数のマグマ系列の存在やその混合の可能性を示唆する。 普通輝石と紫蘇輝石の共存が示すマグマプロセスでは、多段階結晶化(分化) が見られ、普通輝石Augiteは比較的高温で晶出する単斜輝石であり、マグマの初期段階で形成され、紫蘇輝石Hyperstheneは斜方輝石でありながら、やや低温で晶出する傾向もあり、普通輝石の後に形成されることもあり得る。両者が共存することは、寧ろ、マグマが冷却する過程で複数の温度帯が生じ、それが入り組む過程で結晶化が進行したことを示す。 根石岳周辺にはスリバチ状の火口跡があり、これは爆裂火口や噴火口の名残と考えられている。地質的に天狗岳と連続しており、同じ火山体の一部として形成された可能性が高い。輝石安山岩は風化しやすく、ザレ地(砂礫地)を形成する。このザレ地は水はけが良く、栄養分が乏しいため、コマクサなどの高山植物が適応して群生する。特に、根石岳の山頂付近では、岩屑地に咲くコマクサが火山岩の風化と植生の関係性を如実に物語っている。 目次へ |
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| 2)地形が伝えてくれる事 根石岳の地形は比較的なだらかで、安山岩の風化による穏やかな稜線が特徴で、天狗岳に向かうにつれて岩稜が急峻になり、同じ地質でも地形の違いが顕著になる。 夏沢峠を挟んで南北に異なる火山活動の履歴があり、根石岳は北八ヶ岳の火山活動の代表例と言える。根石岳と東天狗岳の間には直径約300mのスリバチ状火口跡があり、かつての火山活動の痕跡とされている。 天狗岳の地質も同様に安山岩質の火山体で、特に東天狗岳は岩稜が鋭く、火山活動の名残を強く残す地形であるが、崩壊地形が顕著で、887年の南海地震の際に山体崩壊が起き、岩屑なだれが発生し松原湖などの天然ダム湖が形成された。その山体崩壊の痕跡が知られている。 887年(仁和3年7月30日)の南海地震は「仁和地震」として知られている。平安時代前期に起きた大地震で、その規模はマグニチュード8.0〜8.5と推定され、南海トラフ沿いで発生した巨大地震であった。震源地は、南海トラフ沿い(北緯33.0度、東経135.0度付近)、プレート境界型の『南海トラフ巨大地震』であった。仁和地震の影響で八ヶ岳山麓の山体崩壊が起こり、千曲川の河道閉塞や松原湖の形成につながった。翌年(888年)決壊し洪水で下流域に大きな被害が及んだ。これは、天狗岳の崩壊と関係しているとされ、地震の影響が内陸部にも及んだことも示している。 京都を中心に五畿七道で甚大な揺れが発生し、官舎や民家が多数倒壊、死者も多数、津波による溺死者が摂津(現在の大阪・兵庫)で特に多く、被害が深刻であった。余震は8月末まで続き、長期間にわたる地震活動が記録されている。淡路島では津波によって砂嘴が失われたという記録もあり、地形にも影響を与えた。
根石岳の山頂付近のザレ地は、火山活動に由来する安山岩の風化と浸食によって形成された地形で、特に、輝石紫蘇輝石安山岩の風化特性がザレ地の発達に大きく関与している。根石岳は、天狗岳と同様に火山性の地形を持つが、主に輝石紫蘇輝石安山岩という中性火山岩で構成されている。これは玄武岩と流紋岩の中間的性質を持つ岩石で、高山環境では、凍結融解作用(凍結破砕)が激しく、岩石が細かく砕かれやすい。特に安山岩は風化により脆くなりやすく、粒状に崩壊する。砕かれた岩片は、重力や降雨、融雪水によって斜面を移動し、礫・砂・細粒土壌が混在するザレ地を形成する。 ザレ地は水はけが良すぎて保水性が低く、土壌が安定しにくいため植生が乏しい。これがさらに風化・浸食を促進した。根石岳のザレ地には、コマクサやチングルマなど、乾燥・貧栄養・風当たりの強い環境に適応した高山植物が点在する。特にコマクサは、ザレ地の象徴的存在であり、根で礫を固定する役割も果たしている。 根石岳は稜線上の緩やかな草原地形で、南八ヶ岳の険しさと北八ヶ岳の穏やかさの境界に位置している。山頂部は岩と砂礫が広がる広場状の地形で、休憩や展望に適した場所でもある。 天狗岳は岩場が多く、植生は根石岳よりも乏しい。黒百合ヒュッテ周辺や天狗の奥庭では苔や針葉樹林が美しく、北八ヶ岳らしい原生林の雰囲気が濃い。 夏沢峠(標高約2,440m)は、南八ヶ岳と北八ヶ岳の境界とされる鞍部で、地形的には火山体の接合部に位置する。峠の南側には硫黄岳、北側には箕冠山(標高 2,590m)・根石岳が連なり、火山活動の時代的・地質的な違いが交錯する。箕冠山は、八ヶ岳連峰の北八ヶ岳にある山で、根石岳から夏沢峠への登山道の間に位置する。地形図を見ると、峠から箕冠山・根石岳にかけては比較的なだらかな稜線が続き、天狗岳に向かって急峻になる様子が分かる。 八ヶ岳火山群は第四紀カラブリアン期の約100万年前から活動を開始し、南八ヶ岳の赤岳・硫黄岳などが先に形成された。北八ヶ岳の火山活動は比較的新しく、根石岳や天狗岳は次の時代チバニアン期の約20万〜30万年前に噴火活動が開始されたと考えられている。根石岳のスリバチ火口や天狗岳の崩壊地形は、火山活動の終息期における地形変化の証拠となる。 天狗岳と根石岳はほぼ同時期に形成された可能性が高いが、詳細には微妙な違いがあると考えられている。東天狗岳 (標高2646m)、西天狗岳 (標高2645m)、輝石安山岩を主とする火山岩で、その形成は八ヶ岳火山群の中でも比較的若い火山体で、第四紀更新世後期(約10万年前以降)の活動によって形成されたと考えられている。887年の南海地震の際に山体崩壊が起き、岩屑なだれが発生し松原湖などの天然ダム湖が形成された。 根石岳(標高2603m)の地質も天狗岳と同様に輝石紫蘇輝石安山岩で構成されており、火山活動の産物であり、天狗岳と同じく八ヶ岳火山群の一部で、同じ火山活動期に形成された可能性が高いとされている。天狗岳と根石岳は、同じカルデラ構造の縁に位置しており、地質的に密接な関係が見られる。特に、天狗岳の山体崩壊は根石岳付近から中山峠にかけての範囲を含んでおり、両者が同じ地質イベントの影響を受けていることが分かる。 根石岳のザレ地に咲くコマクサは高山植物の象徴であり、天狗岳の岩稜と苔の森は北八ヶ岳の地形と植生の多様性を際立たせている。両者の対比は、火山活動と気候・標高の違いが生み出した自然の美のコントラストである。 ザレ地とは、風化した火山岩が砕けてできた砂礫地で、水はけが良く、栄養分が乏しいため、植物の生育には厳しい環境となる。コマクサは、高山植物の女王と呼ばれる多年草で、根石岳山荘周辺のザレ地に群生し、開花期には一面が淡紅色に染まるほど咲き誇る。特にコマクサは、ザレ地の象徴的存在であり、根で礫を固定する役割も果たしている。この厳しい環境に適応した植物で、根石岳の火山性地質と標高(約2,600m)が生育に適している。イワウメやウルップソウなども見られ、高山帯特有の花々が繊細に共演している。 天狗岳は岩稜と苔の森の二面性がある。その岩稜地形は、特に東天狗岳は鋭い岩稜が連なる火山性地形で、登山者にアルペン的な印象を与える。崩落地や火口跡もあり、火山活動の痕跡が地形に刻まれている。 天狗の奥庭〜黒百合ヒュッテ周辺の苔の森は、シラビソやコメツガなどの針葉樹林に覆われ、苔が一面に広がる幻想的な森は、湿度が高く、日照が限られる環境が苔の繁茂に貢献し、北八ヶ岳らしい静寂と神秘性を感じさせる。その天狗の奥庭は、八ヶ岳火山群の火山活動によって形成された岩場地形で、現在は高山植物と針葉樹林が広がる静かな絶景スポットで、特に、東天狗岳からの下りルートに位置する、稲子岳や中山方面の眺望は素晴らしい!天狗の奥庭は、天狗岳の東側に位置し、安山岩質の火山岩が風化・浸食されて形成された岩場地形で、八ヶ岳は約100万年前から活動を始めた複成火山で、天狗岳周辺は比較的新しい火山体である。天狗の奥庭は、火山噴出物(溶岩・火砕流)や火山岩の露出部が風化し、岩場やザレ地となった場所で、馬の背状の岩稜や断崖、岩壁が連なり、岩場を巻くように登山道が整備されている。風化した岩石が堆積し、礫混じりの不安定な地面が広がっている。 天狗の奥庭周辺には、ダケカンバやシラビソ・コメツガなどの針葉樹林が広がり、林床にはハクサンシャクナゲやチングルマなどの高山植物が点在する。東天狗岳から奥庭にかけては、稲子岳の断崖や中山の稜線、遠くに浅間山や金峰山・瑞牆山(みずがきやま)まで望める絶景ポイント! 唐沢鉱泉からの周回ルートや黒百合ヒュッテ経由のルートで訪れることもでき、晴天時には美しい展望が広がる一方、霧や悪天候時には道迷いの危険もある。天狗岳の険しさとは対照的に、奥庭は静寂に包まれた神秘的な空間で、登山者にとっては癒しと感動の場となっている。 天狗の奥庭は火山活動によって生まれた岩場地形が、風化と植生によって静かな高山庭園へと変貌した。 天狗岳は、岩稜・崩落地・火口跡、幻想的で湿潤な原生林、崩落地、爆裂火口、岩稜、苔、シラビソ、コメツガ。この対比は、標高・地質・水分条件の違いによって生まれたもので、八ヶ岳の多様性を象徴している。 八ヶ岳は天狗岳を境に、荒々しい岩稜が続く南八ヶ岳と、北に針葉樹の原生林が広がる北八ヶ岳とに景観が一変する。北八ヶ岳は新八ヶ岳期に活動した若い火山群で、蓼科山・北横岳・天狗岳・根石岳などが含まれる。 噴火はテフラtephra(ギリシャ語で「灰」の意、火山灰・軽石・スコリア・火砕流堆積物・火砕サージ堆積物などの総称)や溶岩流の形で繰り返し発生し、地層にその痕跡が残されている。 火砕サージ堆積物は、火砕流に似ているが火山ガスの比率が高いため密度が小さく、高速の風圧で薙ぎ払うように流動する。単にサージsurgeともいう。Surgeとは『波のように打ち寄せる』『殺到する』などの意味があり、火山ガスが多いため、火砕流とは異なり乱流するその風圧は、時には時速100kmを超える高速で移動する。 固体粒子が少なく主体が火山ガスの乱流であるため粒子が落ちやすく、サージとしての流動形態はあまり長続きしない。到達距離は最大で5km程度と考えられている。 目次へ |
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| 3)赤岳 赤岳は八ヶ岳連峰の最高峰で、標高2,899m。名前の由来は山肌の色、赤岳の岩肌は酸化鉄を含む安山岩や玄武岩が風化し、赤茶けた色を呈している。朝日や夕日に照らされると、周囲の山々よりも赤く見えることが多く、視覚的印象から「赤岳」と呼ばれるようになったとされている。山頂は、岩稜が鋭く、荒々しい雰囲気、赤岳神社があり、信仰の対象にもなっている。標高2,899mの赤岳南峰山頂に鎮座、隣には「太政宮」があり、六神三十柱を祀るとされる。
「太政官が建立する正式な太政宮」というものは歴史上存在しない。太政官は律令制における最高官庁で、行政・立法・司法を統括する機関であった。奈良時代から平安時代にかけて重要な機関であったが、宗教施設を建立する役割は担っていない。「太政宮」という名称について 古代日本の神社制度や律令制の中に「太政宮」という正式な社殿や神社は確認されていない。国家機関である太政官が建立したものは存在しない。 国家と宗教施設の関係 律令制下では「神祇官」が神事を司り、伊勢神宮などの国家的祭祀を統括した。太政官は政治の中枢であり、神社の建立は神祇官や地方豪族・氏族の役割であった。 周囲には諏訪信仰に特徴的な御柱が小規模ながら建てられ、西向きに夕陽を望むよう配置されている。赤岳は「摩利支天山」とも呼ばれ、御嶽山や乗鞍岳などと同様に摩利支天信仰の対象となった。摩利支天は、サンスクリット語の「マーリーチ(光の精霊)」に由来し、古代インドの神話に登場する女神で、陽炎や太陽の光を象徴し、目に見えない存在でありながら強大な力を持つとされている。摩利支天は、悪霊や邪気を祓う力を持ち、信仰する者を不可視の状態にして敵から守るとされている。 日本における摩利支天信仰は、奈良時代に仏教と共に日本に伝わり、平安時代には貴族社会の守護神として定着した。鎌倉時代以降、武士社会に浸透し、戦乱の時代において、摩利支天の「不可視の力」は武士たちにとって非常に魅力的であった。多くの武将が摩利支天を祀り、戦いにおける勝利と無事を祈願した。彼女は亥(イノシシ)の上に乗る姿で描かれることが多く、弓矢を持つ戦士としても信仰されている。また、摩利支天は商売繁盛や家庭円満を願う神としても信仰され、庶民の間にも広がった。摩利支天は、古代から現代に至るまで、多くの人々に信仰され続けている神であり、その信仰は日本文化に深く根付いている。 また、御柱の存在から諏訪大社系の信仰圏に属していたことが窺える。 山頂からは富士山・南北アルプス・奥秩父などが一望できる360度の大展望で、晴天時には富士山 • 南アルプス(甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳など)、 北アルプス(槍・穂高連峰)、中央アルプス(木曽駒ヶ岳など)、奥秩父連峰(瑞牆山・金峰山など)、植生は苔むす森から高山植物まで多彩である。しかも標高差が大きく、登山道ごとに植生が変化する。低〜中腹(美濃戸口〜行者小屋)は、苔むす森であり、シラビソ・コメツガなどの針葉樹林帯に、ミズナラ・ダケカンバなどの広葉樹も混在する。中腹〜稜線(地蔵尾根・文三郎尾根)は、立ち枯れ帯、風雪に晒された樹木が白骨化したような景観に、イワツメクサ・チングルマ・コマクサなど高山植物が見られる。 稜線〜山頂は、岩場が中心で植生は乏しいが、夏には岩の隙間に高山植物が咲き、苔や地衣類が岩肌に張り付くように生育いている。 赤岳の山頂が北峰と南峰に分かれている背景には、過去の大規模な山体崩壊が関係している。新生代第四紀更新世チバニアン期の約34万年前には、赤岳・阿弥陀岳・中岳は、合わせて標高3,400m級の一体の巨大火山だったと推定されている。赤岳と阿弥陀岳の地層が、中岳を中心に左右対称であることからも頷ける。中岳の存在は、八ヶ岳がかつて赤岳を中心とした巨大な成層火山だったことの証左とされている。中岳の地形や地質は、赤岳と阿弥陀岳の地層が中岳を挟んで対称的であることから、中岳はその中心軸にあたると考えられている。中岳周辺の鞍部や崩壊地形は、過去の大規模な山体崩壊の名残とされている。 行者小屋から中岳道を経て中岳のコルcol(鞍部)を通り、赤岳や阿弥陀岳へ縦走するルートが整備されている。中岳の山頂は森林限界を超えており、展望は良好、赤岳や阿弥陀岳を望む絶好のビューポイントになる。中岳周辺の鞍部や崩壊地形は、過去の大規模な山体崩壊の名残である。チバニアン期の約25万〜13万年前に大規模な山体崩壊が起こり、現在のような複数の峰に分かれた。この崩壊によって流出した岩石は甲府盆地にまで達し、日本最大級の山体崩壊とされている。 赤岳は、既に第四紀更新世カラブリアン期の約130万万年前以降に活動した火山であり、主に安山岩質の噴出物から成る成層火山体であるため、「第四紀の安山岩質火山体」に分類される。そのため地形や噴出物が比較的若く保存されている。赤岳の噴出物は主に安山岩質の溶岩流や火砕物であり、普通輝石・紫蘇輝石・橄欖石を含む中性~塩基性の鉱物組成を示す。安山岩は、SiO2含有量が中程度(約57〜63%)で、粘性も中庸で、これは、成層火山体の形成に適した噴出物と言える。 (成層火山を形成する安山岩のSiO2含有量は、一般に最低でも約57 wt%が目安とされている。これは火成岩の分類に基づくもので、安山岩は玄武岩(SiO2 45〜52 wt%)と流紋岩(SiO2 63 wt%以上)の中間に位置する「中間岩」に分類される。安山岩の定義では、SiO2含有量が 57〜63 wt% の火山岩とされる。玄武岩質安山岩basaltic andesiteでは、SiO2が 52〜57 wt% の岩石言う。安山岩よりもやや苦鉄質である。 成層火山は、比較的粘性の高いマグマによって形成されるため、SiO2含有量が高めの安山岩質マグマが適している。SiO2が 57 wt%未満 の場合、マグマの粘性が低く、車山のような盾状火山のような広がりやすい形状になりやすいため、成層火山の形成は不可能である。富士山・箱根火山・西之島などは安山岩質の成層火山として知られている。日本列島の沈み込み帯に形成された八ヶ岳は、安山岩質マグマが主流であり、その成層火山の形成に寄与している。 群馬県甘楽郡下仁田町と長野県佐久市に跨る標高1,422.7 mの荒船山の『荒波を進む軍艦』を思わせる山容は、SiO2含有量が 59.6 wt%の安山岩が、新第三紀中新世の約800万年前の火山活動による噴出で形成された。山体は安山岩質溶岩や火砕岩から構成されており、SiO2含有量は約59〜60 wt%とされ、成層火山的な特徴を持つ火山岩体であった。 現在の荒船山は、火山としての形状よりも侵食によって残された溶岩台地のような姿をしており、軍艦のような平らな山頂部を持つ「テーブルマウンテン」型で、遠くから見ると巨大な船が浮かんでいるように見えることから「荒船山」と呼ばれている。 伊豆大島の噴出物のSiO2含有量は 53.5〜56.9 wt% とやや低めで、玄武岩質安山岩に近い。この場合、成層火山というよりは、やや広がりやすい火山地形になった。) 赤岳の円錐形の成層火山体は、溶岩流と火砕物が交互に積み重なった構造を持つ。地形発達史的には、成層火山に分類される第四紀火山の典型例であり、第1期~第3期の発達段階を経た可能性が高いとされている。マグマの化学組成と鉱物相に基づく分類では、、安山岩質マグマは、沈み込み帯に特有の水を含む中性マグマで、還元的環境下ではFe2+に富む鉱物が安定する。還元環境でFe2+に富む鉱物が安定すると、地質には暗色化、磁性の変化、元素の移動性増加、そして特定の鉱物、例えば磁鉄鉱Fe3O4(Fe2+とFe3+の混合原子価を持つ磁性鉱物)や菱鉄鉱FeCO3(炭酸塩鉱物、還元的な湖底や地下水環境で形成)の生成といった特性が生じた。これらは堆積環境や地下水の化学、岩石の変質作用に深く関わる。 磁鉄鉱はマグマの冷却・分化過程で形成され、菱鉄鉱は熱水作用や堆積環境で生成されるため、両者はマグマとの関係性がそれぞれ異なる。 磁鉄鉱Fe3O4は火成岩の形成過程で晶出する代表的な鉄鉱物であり、マグマとの関係が深い。 マグマが冷却すると、比重の大きい磁鉄鉱などが先に晶出し、重力分化によってマグマ溜りの底に沈降・濃集する。この過程で形成された鉱床は「正マグマ鉱床」と呼ばれ、鉄・ニッケル・銅・白金などが含まれる。一部のマグマでは冷却中に金属硫化物融体(鉄・ニッケル・銅に富む)が分離し、底部に濃集して鉱床を形成する。また、マグマが周囲の岩石と接触し、高温の流体相が岩石を変成させることで磁鉄鉱が生成されることもある(岩手県釜石鉱山・埼玉県秩父鉱山)。 菱鉄鉱FeCO3は、炭酸塩鉱物であり、マグマとの直接的な関係は薄く、主に熱水作用や堆積環境で形成される。 マグマ由来の熱水が岩石の割れ目に浸透し、冷却されることで鉄分が炭酸イオンと結合し、菱鉄鉱として沈殿する。火山岩の隙間や酸化帯などに産出し、続成作用によって形成されることが多い堆積性鉱床では、菱鉄鉱は石炭層と共に産することがあり、泥鉄鉱の主成分として団塊状に産出する。石灰岩中の菱鉄鉱が風化して褐鉄鉱になることもある。 菱鉄鉱は酸化帯において風化・酸化され、褐鉄鉱などの二次鉱物に変化することが多く、酸化帯はその転移の場である。酸化帯は、鉱床の上部に位置する地表に近い酸素・水に富む環境で、鉱物が風化・酸化される領域である。主に硫化鉱物が酸化されて二次鉱物に変化する。酸化帯の下には還元帯(富鉱帯)があり、金属イオンが再沈殿して濃集することがある。 酸化帯では酸素や水の影響でFe2+がFe3+に酸化され、褐鉄鉱(goethite, limonite)などの水酸化鉄鉱物に変化する。 反応例: 4FeCO3+O2+6H2O ⇒ 4Fe(OH)3+4CO2 南八ヶ岳は、八ヶ岳火山列の中でも急峻な地形と安山岩質の火山体が特徴で、以下のような活動史が明らかになっている。 活動開始の約130万年前における最初期の活動は、中岳の玢岩(ひんがん)質噴出に始まり、これが南八ヶ岳の火山活動の起点とされた。この時期は「古八ヶ岳期」に分類され、火道岩体や貫入岩体、溶岩・火砕岩が形成された。中岳とは、南八ヶ岳火山群の中心部に位置する火山体の一部であり、八ヶ岳火山活動の初期段階において玢岩質火道岩や貫入岩、溶岩、火砕岩などを噴出した「火山の根」に相当する地質構造で、南八ヶ岳の火山活動は、地質学的に「古八ヶ岳期0期」に分類され、この時期に形成された火山体が中岳と呼ばれる領域に該当する。現在の赤岳周辺(美濃戸~赤岳の中間部)にあたる地域が、中岳の地質構造に相当すると考えられている。 玢岩質火道岩とは、マグマが地表に達する前に地下浅部で冷却・固結した「半深成岩(地表近くで冷却された火成岩)」であり、大きな斑晶と微細な石基が混在する斑状組織(冷却速度が深成岩より速く、火山岩より遅い ため 結晶成長が途中で止まり、斑晶が形成される)を持つ中性~苦鉄質の火成岩で、SiO2含有量が中性(約55〜63%)、主な鉱物は斜長石(斑晶として顕著)と 輝石・角閃石などの苦鉄質、鉱物 の色調は、灰色~暗緑色が多く、斑晶が目立つ。主に安山岩やデイサイトに近い組成を持ち、火山活動の初期に火道岩体や岩脈として貫入し、後の火山活動の基盤となる。 火山活動の年代測定は、『K-Ar法』などによる年代測定で、赤岳の活動時期が第四紀に属することが確認されている。また、地形保存状態では、赤岳は侵食が比較的少なく、火山体の形状が明瞭に残っているため、第四紀火山として扱われる。 赤岳は、南八ヶ岳に属し、,主に安山岩質の溶岩と火砕物から成り、複数の噴火期を経て現在の険しい山容が形成された。 南八ヶ岳の火山活動は、カラブリアン期の約130万年前に始まり、特に赤岳・横岳などを中心とした安山岩質の成層火山群が形成された。これらは複輝石安山岩を主とする成層火山で、比較的粘性の高い溶岩と火砕物を繰り返し噴出し、急峻な山体を築いた。 その赤岳の「複輝石安山岩」が、厳しい風雪にさらされても崩れない緻密で堅硬な岩質となって、八ヶ岳のアルペン的な美しさを長く支え続け、特に赤岳の風化・浸食に対する抵抗性と成層火山としての構造的特徴を示している。 赤岳が主体とする複輝石安山岩は、普通輝石(単斜輝石)と頑火輝石(斜方輝石)を含み、結晶が緻密であるため、より硬質になる。この鉱物組成が風化に強く、浸食抵抗性を高め、山体の崩壊を抑制する。南八ヶ岳の古期活動では、塩基性〜中性の複輝石安山岩溶岩が広範囲に噴出し、裾野を広く形成した。広い裾野と厚い溶岩層が、山体の基盤を強固にし、重力崩壊に対する安定性を高めている。安山岩は密度が高く(約2.7 g/cm3)、吸水率が低い(1〜2%程度)ため、水による劣化や崩壊も起こりにくい。また 節理は存在するものの、塊状構造を持つため、大規模な崩壊を起こしにくい。 赤岳は南八ヶ岳の主峰であり、アルペン的な険しい山容を持ちながらも、火山岩の堅硬さによって稜線が長期にわたり保持されている。北八ヶ岳の穏やかな山容と対比されるが、南八ヶ岳の険しさはむしろ岩質の安定性の証左とも言える。複輝石安山岩の「節理」と「塊状構造」が一見矛盾するように見えるが、塊状構造は、溶岩が流出・堆積した後に比較的均質に冷却固化することで形成される。つまり輝石安山岩は結晶が多く、粘性が高いため、流動性が低く「塊状の岩体」として固まる傾向がある。そのため、全体としては「塊状構造」が基盤となる。 溶岩が冷却すると体積収縮が起こり、応力が解放される際に割れ目=節理が形成される。特に安山岩は玄武岩ほど規則的な柱状節理を作らず、不規則な節理網を発達させる。この節理が塊状構造の内部に「割れ目」として入り込む。実際、成層火山の山体は、自重・地殻応力・火山活動による膨張収縮など複数の応力が重なる。これにより、塊状の安山岩体の内部に方向性のある節理が追加される。その結果として「塊状の基盤+節理網」という二重構造が成立する。 塊状構造は「全体の骨格」 、節理は「骨格に走る亀裂」 、両者は、塊状の岩体の中に節理が刻まれているという関係になる。節理は風化や崩壊の起点になりやすいが、複輝石安山岩は結晶が緻密で硬質なため、節理が入っても大規模な崩壊を起こしにくい。塊状構造が山体の「強固な基盤」を維持し、節理は局所的な割れ目として存在することで、安定性と割れ目の両立が可能になり、全体は堅牢な塊として山体を支えながら、その内部には冷却や応力の記憶が節理として刻まれている。つまり「塊としての安定」と「割れ目としての記録」が共存している。 赤岳の複輝石安山岩に発達する節理は、山体の安定性を弱める「割れ目」として働き、過去の大規模山体崩壊や岩屑流の発生に直接関わってきた。節理は水の浸透や凍結破砕を促し、応力集中の場となることで、山体の一部が崩壊しやすくなる。節理は岩体の内部に「割れ目」を作り、応力が集中する場所となる。節理に沿って雨水や融雪水が浸透し、凍結融解作用によって岩盤が徐々に破砕される。地震や火山活動による振動が加わると、節理に沿って岩盤が一気に破断し、大規模な崩壊を引き起こす可能性を秘めている。 南八ヶ岳はかつて標高3400m級の巨大火山体でしたが、約25万〜13万年前に大規模な山体崩壊が発生し、現在の赤岳・阿弥陀岳の姿になったと考えられている。この崩壊では、節理に沿った岩盤の破断が進み、岩屑流が甲府盆地まで到達したとされ、日本列島最大級の山体崩壊であった。南八ヶ岳はかつて標高3400m級の巨大火山体でしたが、第四紀チバニアン期の約25万〜13万年前に大規模な山体崩壊が発生し、現在の赤岳・阿弥陀岳の姿になったと考えられている。この崩壊では、節理に沿った岩盤の破断が進み、岩屑流が甲府盆地まで到達した。節理は岩体の安定性を弱める要因であり、赤岳のような成層火山では山体崩壊のトリガーとなる。水・凍結作用・地震動が節理に作用すると、岩盤は急速に破断し、岩屑流として流下する。赤岳の現在の姿は、こうした節理を介した大規模崩壊の歴史的産物であり、地質的安定性と脆弱性が共存している。 輝石紫蘇輝石安山岩は、紫蘇輝石(斜方輝石)+普通輝石(単斜輝石)を主成分鉱物とし、比較的深部由来のマグマを成因とするため、特に紫蘇輝石・普通輝石・橄欖石に多く含まれるマグネシウムMg・鉄Feに富み、シリカ(二酸化珪素)が少ないため塩基性maficに分類される。シリカSiO2(二酸化珪素)の含有量は火成岩の分類において非常に重要な指標であり、シリカが少ないほど塩基性basicで、苦鉄質mafic岩に分類される傾向がある。紫蘇輝石・普通輝石・橄欖石は、高温で結晶化したため密度が高いという特徴があり、酸化還元状態redox stateがやや『還元的』になる。 赤岳の地質において、紫蘇輝石・普通輝石・橄欖石は、マグマの性質と冷却過程に深く関与し、還元的な酸化還元状態は鉄やマグネシウムの保持を促進し、これら鉱物の安定化を支えた。 目次へ |
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