細胞の中の単量体
 
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 ヌクレオシドを構成する糖

 単量体(monomer)とは、類似した型の分子(構成単位)と連結して大きな分子(重合体polymer)を作る小分子を言う。細胞内の小さな有機分子は、分子量が100~1,000の30個程度までの炭素原子を含む炭素化合物である。
 地球上の炭素は、殆どが陽子6個と中性子6個を持つ炭素12という安定同位体だが、陽子6個と中性子8個を持つ不安定な炭素14という、ゆっくりと一定の速度で放射線崩壊する不安定同位体も少量存在する。
 その炭素12の原子の質量を12とし、これを基準に測った原子の相対的質量(relative atomic mass)を原子量(atomic weight)、分子の相対的質量を分子量(relative molecular mass)と呼ぶ。電子は非常に軽く、質量の合計に殆ど影響しないため、この2つの原子量と分子量は、その原子や分子に含まれる陽子と中性子の数の和にほぼ等しい。
 炭素の主な同位体は、原子量が12であるから12Cと書く、不安定同位体の炭素は原子量が約 14なので14Cと書く。原子や分子の相対的質量の単位として、通常「ドルトン」が使われる。「Da」と記号化もされている。その1ドルトンは、水素原子1個の質量にほぼ等しい。
  水素原子番号 1、1H、原子量 1(相対質量 1.0078)。
  ヘリウム原子番号 2、2He、原子量 4(相対質量 4.0026)。
  ホウ素原子番号 5、5B、原子量 10(相対質量 10.81)。
  炭素原子番号 6、6C、原子量 12(相対質量 12.01)。
  窒素原子番号 7、7N、原子量 14(相対質量 14.007)。
  酸素原子番号 8、8O、原子量 16(相対質量 15.995)。
  フッ素原子番号 9、9F、原子量 19(相対質量 18.9984)。
  ナトリウム原子番号 11、11Na、原子量 23(相対質量 22.99)。
  マグネシウム原子番号 12、12Mg、原子量 24(相対質量 24.305)。
  リン原子番号 15、15P、原子量 31(相対質量 30.973)。
  硫黄原子番号 16、16S、原子量 32(相対質量 32.065)。
  塩素原子番号 17、17Cl、原子量35(相対質量 35.453)。
  カリウム原子番号 19、19K、原子量39(相対質量 39.0983)。
  カルシウム原子番号 20、20Ca、原子量 40(相対質量 40.078 )。
  モリブデン原子番号 42、42Mo、原子量 96(相対質量 95.961  )。

 水は、Hの原子量が2個で、1.0078×2個、Oの原子量が1個で相対質量は15.995、分子量H2Oの水の相対質量は、1.0078×2 +15.995=18.011 となる。

 炭素化合物は、通常、細胞質の溶液中では遊離状態にあり、その炭素化合物に基づく有機化学で、生命化学の大部分が説明できるようになった。炭素化合物が更に重合して、細胞のタンパク質・核酸・多糖などの巨大分子を構成する単量体となる。重合は、生体内のエネルギー源をも作る。その一方では、分解されて細胞内の代謝経路で、他の分子に変換される。
 細胞内の小分子は、幾つもの多くの役割を果たしながら、同じ小分子が幾通りの経路をたどり、種々の巨大分子の単量体になる。別のルートでは、無機リン酸から合成される「C10H16N5O13P3」という複雑な化学式をもつATP(adenosine triphosphate; アデノシン三リン酸)が、生命活動の根源となる、数百もの代謝反応で、エネルギーの受け渡しを担っている。意外にも、小さな有機分子は、細胞内の巨大有機分子に比べ、その有機物質の総量の1割程度に過ぎない。それでも、典型的な動物細胞では、おおよそ1,000種類ほどの有機小分子が活動している。

 生物全体の有機化合物は、すべて簡単な化合物群から合成され、しかもそれが分解されて、元の簡単な化合物群に戻ることが繰り返されている。合成と分解は、各段階で生じる一連の厳密な化学法則に従う化学変化により起こるが、その化学変化の範囲は限られている。そのため細胞内の有機化合物は、化学的に類似したものが多く、殆どが糖・脂肪酸・アミノ酸・ヌクオチドの4種類に分類される。
 これら4種類の小分子とこれらを長く鎖状に繋げる巨大分子とで、細胞の質量の大半を占める。細胞内には、この分類に入らない化合物も多数あるが、細菌細胞の化学組成では、たった一種類の水分子が70%、次いで3,000種類の核酸・タンパク質・多糖類の巨大分子が24%、リン脂質が4種類(更に多くの種類に分類される)で2%、無機イオン・糖と前駆物質・脂肪酸と前駆物質が各1%、アミノ酸と前駆物質・ヌクレオチドと前駆物質が各0.4%と微少で、他の小分子にいたっては0.2%に過ぎない。
 糖・脂肪酸・アミノ酸・ヌクオチドは、細胞内で主要な4種類の有機小分子を構成する。この有機小分子が、細胞の殆どの巨大分子やその他の分子集合体を含む、より大きな有機分子を構成する単量体となる。また糖や脂肪酸は、エネルギー源にもなる。
 糖は、多糖やグリコーゲン、植物ではデンプンの単量体となり、脂肪酸は脂肪と膜を作る脂質となり、アミノ酸は巨大なタンパク質の分子となる。
   
 

 
 ヌクレオチドは、5個の炭素原子を環状に繋ぐ単糖からなるため、五炭糖(pentose;péntous)と呼ばれるが、その2種類が使われ、1個以上のリン酸基(PO43-)が結合して核酸(DNAやRNA)を構成する。
 2種類の五炭糖とは、リボ核酸(RNA)に使われる
 β-D-リボースと
 デオキシリボ核酸(DNA)に使われる
 β-D-2-デオキシリボースである。

 リン酸は、水と反応すると、3個のヒドロニウムイオン(hydronium ion;H3O+)を放出し、3 価の酸として作用する。
   リン酸二水素イオン(H2PO4−)→リン酸水素イオン(HPO42−)→リン酸イオン(PO43−

   H3PO4 + H2O ⇌ H3O+ + H2PO4-
   H2PO4- + H2O ⇌H3O+ + HPO42-
   HPO42- + H2O ⇌ H3O+ + PO43-

 リン酸基はPO4であるが、これをイオン化すると、PO4 3-の3価の陰イオンとなる。

 核酸は、ヌクレオチド単位が長く連結した鎖状の高分子化合物である。糖環の5‘炭素原子と3’炭素原子の間で、リン酸基を介するホスホジェステル結合により繋がり核酸となる。その3’末端には、遊離のヒドロシキ基(hydroxy group) があり、このヒドロキシ基は、水酸基ともいい、化学式は-OHと書かれる官能基であるから、リン酸基は、遊離のヒドロキシ基と結合してリン酸エステル(H3PO4)を作る。
 ヌクレオチドは、核酸の構成単位として、2種類の五炭糖がリン酸基とヒドロシキ基の間で共有結合であるホスホジエステル結合を次々と繋げて長い重合体を作る。この巨大分子が、DNAとRNA(リボ核酸)である。DNAに生物の生存に必要な情報を保存し、RNAがそのコードを読み取り、タンパク質を生成して、DNA上の遺伝子を発現させる。
 
 細胞にはRNAと呼ばれる成分があって、RNAは、設計図であるDNAから、細胞の形を作るタンパク質を生成するコードを転写する重要な働きを担う。核酸にはDNAとRNAとの2種類あるが、これはヌクレオシドを構成する糖の違いによるもので、RNAの糖部分は、リボースと呼ばれる。DNAでは、この部分がデオキシリボースに置き換わる。これによりDNAとRNAの役割は全く異なるものになる。この一組の「糖-リン酸―4種類の塩基」の単位を「ヌクレオチド(nucleotide)」と呼ぶ。



 DNAとRNAは、ヌクレオチドと呼ばれる構成単位からなる。ヌクレオシドは、4種類の塩基を構成する窒素を含む環状化合物が、五炭糖のリボースかデオキシリボースのいずれかに結合したものである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖に1個以上のリン酸基が結合してでき、大きく2種類に分けらええる。リボースを含むヌクレオチドがリボヌクレオチドで、デオキシリボースを含むヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドとなる。
 リボースやデオキシリボースにおける五炭糖の1'位に塩基が結合した化合物をヌクレオシド(nucleoside)という。そのヌクレオシドの5'位にリン酸がエステル結合した化合物をヌクレオチド(nucleotide)という。
 デオキシリボ核酸(DNA)分子は、DNA鎖(chain)と呼ばれる長いポリヌクレオチド鎖2本からなり、2本の鎖はそれぞれ4種類のヌクレオチドで構成されている。ヌクレオチドは、糖―リン酸―糖―リン酸と交互に並んだ主鎖とそれぞれが共有結合した4種類の塩基(A=アデニン・C=シトシン・G=グアニン・T=チミン)が突き出した構造を持つ。

 普通DNAは、この塩基の相補性の繋がりに従って、この「ヌクレオチド」が多数結合し鎖状のDNA分子となっている。この重合体が、DNAのねじれた「二重らせん」を作る。それが二重らせん構造になるのは、塩基の部分で規則性があるAとT、GとCとが対をなす塩基が並び(塩基配列)、その対の塩基が並ぶ部分で水素結合して、DNAの二重らせんが分離しないよう中心に引き付けているからだ。この点からも、DNA はRNA と比べて、部分的な欠損の修復を容易にする安定した優れた構造となっている。
 
 DNAの塩基配列の連なりが、RNAへ転写される領域となり遺伝子を構成する。遺伝情報(genetic information)は、タンパク質の合成を指令する。あらゆる細胞で、遺伝情報の流れは、DNAからRNAへ転写され、RNAからタンパク質への翻訳と繋がる。この遺伝情報の流れを、「セントラルドグマ(central dogma)」と言う。その後の研究で、セントラルドグマの概念の分子機構が明らかになり、mRNA分子・tRNA分子・遺伝暗号(genetic code; genétic códe)などが発見解明され、遺伝子発現が定義されるようになった。真核生物の遺伝子発現(gene expression)とは、細胞がDNAの二重らせんから遺伝子の塩基配列を、RNA分子の塩基配列に転写し、多くの場合、更にこれをタンパク質のアミノ酸配列へと翻訳する過程と言える。
 遺伝子の塩基配列を伝送するmRNA分子を介して、タンパク質のアミノ酸配列に変換する翻訳の規則を、遺伝暗号と呼ぶ。
 真核生物では、細胞核のDNAは、何本かの染色体に分かれて存在する。ヒトの核のDNAは、約3.2×109個のヌクレオチドが、23あるいは24種類の染色体(22対の常染色体と1対の性染色体、計46本の染色体からなる)に分配されている。染色体には、DNAを極小のクロマチンに畳んでまとめるタンパク質の他に、DNAの複製・修復や遺伝子の発現にかかわるタンパク質も結合している。
 ある細胞や生物の全染色体に書き込まれた遺伝情報全体をゲノム(genome; dʒíːnoʊm)と言う。

 H2O分子は分極しているので、隣り合った2個の分子間で、 酸素原子Oが正電荷(δ)を、水素原子Hが負電荷(δ)を持つため非共有結合である水素結合ができる。水素結合の強さは、共有結合の約1/20に過ぎないが、水素結合は、3個の原子が直線状に並んだ時が最も強い。塩基を構成する単量体でも、水素原子が電子吸引性原子の酸素や窒素に挟まれて水素結合をする。