太陽系の物理


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 相対性理論「重力」 相対性理論「宇宙論」 相対性理論「光と電子」 太陽系の物理



 目次
 1)膨張する宇宙
 2)公転revolution
    光行差aberration
 3)ケプラーの法則
    第1法則(楕円軌道の法則)
    角速度(遠心力の公式)
    惑星の円運動
    第2法則(面積速度一定の法則)
    第3法則(調和の法則)

 
 1)膨張する宇宙
 2009年5月にESA(イーサ;欧州宇宙機関)が打ち上げたPlank衛星により精密な測定と計算がなされ、2013年3月「宇宙年齢は138億歳」と訂正され、この年齢がビッグバン以降の現在最も有力な年齢と言われている。だがすべての理論で、宇宙年齢が一致する状況には、まだ至っていない。衛星の名前は1918年にノーベル物理学賞を受賞したドイツの科学者マックス・プランクM. Planckにちなんでいる。
 プランク定数Planck constantは、光子のもつエネルギー量子ε は、振動数 ν の比例定数のことで、量子論を特徴付ける物理定数である。アインシュタインはプランクの理論から、1905年、光が粒子のような性質を持つという光量子仮説を提唱し光電効果を説明した。

 「1999年7月23日にコロンビアのスペースシャトルによって打ち上げられ、配備されたチャンドラX線天文台は、これまでに建設された中でも最も洗練されたX線天文台である。チャンドラの鏡は、最も大きな、最も正確に形作られ、整列し、これまでに構築された中で最も滑らかなミラーである。チャンドラは、宇宙の熱く激動の領域を詳細に観測し、宇宙の起源・進化・その運命に関する基本的な疑問に答えてくれる。チャンドラが作る画像は、かつて最高だった以前のX線望遠鏡よりも25倍の精度を備える。」
 スミソニアン天体物理観測所は、マサチューセッツ州ケンブリッジCambridgeのチャンドラX線センターからチャンドラの科学と飛行操作を制御している。‎

 軌道を回る天文台からのX線データを解析する天文学者は、重力によって結合された宇宙で最大の構造体である何百もの銀河や銀河団と、それらの見かけの特性が宇宙全体とどのように関わるかを研究している。
 宇宙論の柱の1つ、つまり宇宙全体の歴史と運命の研究では、「宇宙にはどこにも特別な場所がなく(一様性)、どの方向にも特別な方向がない(等方性)という」原理である。この【等方性】は、地球からの観測だけでなく、最近の精緻な宇宙背景放射の観測からも裏付けられている。つまり、宇宙のどの方向からやってくる宇宙背景放射を観測しても、その背景放射はわずかに偏光しているが、全て同じ絶対温度約2.7度(約-270℃)のマイクロ波で入射してくる。
 ハッブル-ルメートルの法則Hubble-Lemaitre lawは、宇宙の膨張を、「宇宙のどの方向を見ても、遠方の銀河ほど速い速度で天の川銀河(銀河系)から遠ざかり、その遠ざかる速度(後退速度)は銀河までの距離に比例する」と要約する。 

 完全に【等方性】ならば、我々が観測する天体の様子とは違うはずだ。夜空の星は疎らであるから美しく輝いて見える。宇宙創生当時から完全に一様ならば、エネルギー(=質量)の分布にムラは生じない。それなのになぜ偶然が重なったにしても、これほど物質が疎らに、天体として恒星や銀河が燦然と輝くのだろうか。
 1990年代に宇宙マイクロ波背景放射の温度の精密な観測が可能にり、それによって、その温度は完全に一様ではなく、10万分の1程度のムラがあることが観測された。2001年に打ち上げられたウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機WMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)や2009年のPlank衛星は、1989年に打ち上げられた宇宙背景放射探査機 Cosmic Background Explorer(COBE;コービー)より詳細に宇宙背景放射を観測した。
 2013年3月21日、世界中の宇宙論研究者が待ち望んでいたPlank衛星による初年度の測定結果が発表された。Plank衛星から得られた温度異方性の観測データと、WMAP衛星から得られた偏光のデータにより、宇宙は誕生直後急激な加速膨張を行い、その際に生成された時空の量子揺らぎによって宇宙を満たす物質の分布に不均一性が生じ、その不均一性から銀河や銀河団などの宇宙の構造が形成されたという仮説が有力となった。
 観測された宇宙背景放射のムラは、初期宇宙の物質のばらつきであった。ごくわずかな温度のムラが、重力の強さのムラとなり、宇宙の物質の密度のムラとなった。密度が大きいところに軽い元素がより多く集まって核融合を始めて星や銀河、銀河団を作る素になったと考えられている。

 天文学者は、一般的に、ビッグバンの後、宇宙が絶えず拡大していることに同意している。この拡大はレーズンパンのようなもので、パンが焼けると、レーズン(言わば銀河や銀河団などの宇宙の物体)はすべて、パン全体(空間を表す)が拡大するにつれて互いに均一に離れて行く。等方性の宇宙の場合と同様に、均一な混合では、膨張はすべての方向で均一に広がる。しかし、新しい観測結果では、その状況に合わない可能性が観察されてきた。
 観測データをクラスター分析することにより、どちらの方向を見て観測したかにより、宇宙が膨張する速度に違いが見られるかもしれない。これは、今日の宇宙論で使用されている最も基本的な仮説の1つと矛盾する。
 (観測されたデータの特徴から、サンプルをいくつかのグループ【クラスター】に分類する分析手法で、外的にグループを識別するアイテムがなくても、サンプルを共通の特徴を持つグループに分類することができる。)
 科学者たちは以前、宇宙がすべての方向で同じであるかどうかについて、爆発した星の光学観測と銀河の赤外線研究などで多くのテストを実施した。これらのいくつかは、宇宙が等方性ではないという可能性が観測されていた。しかし、いくつかの観測ではそうではなかった。
 最新のテストでは、銀河団に浸透する高温ガスの温度と、銀河団のX線輝度として知られるX線の量との関係を利用している。クラスター内のガスの温度が高いほど、X線の輝度が高くなる。つまり、クラスターガスの温度が測定されると、X線の量が推定される。
 そのデータを使用してクラスターのX線光度を推定する。宇宙の膨張速度などの宇宙論的量に依存する方法で光度を計算する。その結果が、宇宙全体における膨張速度を示すため、宇宙では、他の方向よりもある方向の方が速く遠ざかることが観測された。
 また、この作業を、他の様々な手法を使用して等方性の欠如の兆候を発見したグループの研究と比較すると、最も低い膨張率の方向ほど、よく一致していることが発見された。
 これらの結果で、2つの可能が説明できた。1つは、銀河団の大きなグループが一緒に動いている可能性があるが、それは宇宙膨張のためではなく、例えば、他の銀河団のグループの重力によって、いくつかの近くの銀河団が同じ方向に引っ張られている可能性がある。また、動きが速すぎる場合、クラスターの光度を推定する際にエラーが生じる可能性があることであった。
 これらの種類の相関運動は、様々な方向に様々な膨張率の外観を与える。相互の重力引力が物体の動きを制御することが知られているが、通常8億5000万光年未満の距離で、比較的近くの銀河で同様の効果があると見ていた。しかし、この近年の研究の調査では、最大50億光年まで、宇宙の膨張にクラスターの動きに関わるエネルギーが及んでいると推定されている。
 考えられる2つ目は、宇宙は実際にはすべての方向で同一ではないということである。その理由の1つが、ダークエネルギー(宇宙の膨張の加速を促進しているように見える未解明の力)自体が均一でない可能性があるからである。言い換えれば、X線の量的観測により、ダークエネルギーが宇宙のある部分で他の部分よりも強く、異なる膨張率を引き起こしている可能性がある。
 「これは、パンの酵母が均一に混合されていない場合のようになり、ある場所では他の場所よりも速く膨張する」と、同じくボン大学のトーマス・ライプリッヒは述べている。
 ダークエネルギーが宇宙の様々な部分で様々な強さを持っていることがわかった場合、それは大いに注目されるが、説得力のある主張をするためには、はるかに多くの証拠が必要である。

 これらの2つの宇宙論的説明に関して、銀河団のX線研究を含む宇宙論の多くの研究者は、宇宙の等方性の原則には変わりはなく、ここで調査された距離での宇宙膨張と比較しても、その相関運動は無視できる程度と仮定している。
 NASAのマーシャル宇宙飛行センターはチャンドラのプログラムを管理している。スミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターは、マサチューセッツ州ケンブリッジとバーリントンからの科学と飛行の運用を管理している。

 「大きなスケールで見れば、宇宙は一様かつ等方である」という宇宙原理cosmological principleが成り立つようだ。端的に言えば「宇宙には特別な場所は存在しない」となる。
 しかし、アインシュタイン(1879~1955年)が1915年から1916年にかけて発表した「一般相対性理論」から生まれたブラックホールの概念は、その存在を示す直接的な証拠を史上初めて示せたというニュースが、2019年4月に発表された。観測されたのは、地球からおとめ座の方向に約5500万光年離れた場所に存在する銀河「M87」の中心部にあった。
 光の速度に近い超高速のプラズマのジェットが噴き出している様子が確認された。ブラックホール自身は、光さえも飲みこむ暗黒の天体である.が、その周辺で、宇宙の中で最も明るく激しい現象が起きていた。ブラックホールの近くにある天体や天体から流れ出る物質は、角運動量をもっているのでまっすぐにブラックホールに吸い込まれるわけではなく、ブラックホールの周囲を渦巻きながら、徐々に落ちていくことがわかっていた。この渦巻きを「降着円盤」と呼ぶ。ブラックホールの周りにガスの円盤が渦巻き、そのガスがブラックホールに落下するときに、天の川銀河の約100倍の激しさで光ると言う。

 宇宙を観測することで、ビッグバン以後の「宇宙の晴れ間」からの移行の赤方偏移の観測により138億光年と時の経過をある程度、測定が出来るかもしれないが、観測者が宇宙の中のどの地点にいるのかは知ることはできない。ここで言う「場所」「地点」とは3次元空間での位置を指す。よって宇宙原理では時間的な一様性までは要請していない。
 2020年4月9日のプレスリリースでの投稿論文は、ジャーナルAstronomy and Astrophysicsの2020年4月号に掲載された。その投稿のように、小さなスケール長で見れば宇宙は一様でも等方でもない。その一方.、宇宙には、ブラックホールのような大規模構造や銀河団や様々な銀河などの天体が散在するため、現在の観測による、ハッブル半径(約100億光年)程度のスケールで平均化してみると、我々の宇宙のある地点での物質密度は、平均密度からおよそ1/100程度のゆらぎが生じるている。

 宇宙が地球のような球体であるのか、方形なのか、あるいは無限の空間であるのかは、解明されていない。宇宙が地球と同じように大きさの決まった球面であれば、空間は有限であることが言えるが、それが永遠に広がるものであれば、その空間は無限であり、その宇宙の中心がどこにあるのかがどれほどの意味があるのだろうか。
 物質には、必ず終わりがあると言うが、無限の広がる宇宙には宇宙固有の力学が働き、永遠に膨張しているという説が有力である。温度のムラが種のようなものとなって、やがて銀河へと進化していったと考えられている。事実、宇宙は膨張していて、地球から観測される銀河間の距離もどんどん広がっている。

 アメリカの天文学者スライファーVesto Melvin Slipherは、ローウェル天文台に入り1926-52年まで台長を務めた。1910年から1920年代の中頃にかけて、銀河からの光のスペクトルを大量に観測し、それらの多くが赤方偏移を示していることを発見した。米国における天体分光観測のパイオニアで、特に、系外銀河(天の川銀河系の外にある惑星の総称)のスペクトルにおける赤方偏移を発見し、これが後にハッブル-ルメートルの法則の発見につながった。光の赤方偏移は、光を出している天体が観測者から遠ざかれば、その光の波長が赤い方へ伸びる現象と理解した。
 ハッブルはこの発見を契機に、銀河系外銀河の光のスペクトルを組織的に調べ、1929年に、かなり遠方にある銀河は、地球が属する銀河系からさらに遠ざかり、その速度は銀河までの距離にほぼ比例していることを発見した。この発見が、ハッブルの法則と呼ばれる。この発表は1931年であった。
 科学者たちは何十年もの間、宇宙の膨張速度を測定しようと試みてきた。その数字はハッブル定数と呼ばれている。宇宙の膨張は、「遠い銀河までの距離と赤方偏移の関係、すなわち、遠くの天体ほど、その距離に比例して速く遠ざかり、届く光の波長が伸びる」がアメリカの天文学者ハッブルHubble Edwin Powellにより1929年に発見された。その比例定数は「ハッブル定数Hubble constant」と呼ばれ、観測方法の違いに依って様々な値が得られてきたが、2012年、NASAの赤外線天文衛星「スピッツァーSpitzer Space Telescope(この宇宙望遠鏡の名前の由来は、1940年代初頭に宇宙望遠鏡の提案を行ったライマン・スピッツァー Jr.博士にちなむ。)」の観測から、宇宙の膨張率を表すハッブル定数が高精度で求められた。ハッブル定数は、74.3±2.1km/秒/Mpcとなった。10年前までの『宇宙論』に関する数値は、極めておおざっぱであったが、実に画期的なことに、数%レベルの誤差の範囲に精度が高められた。距離が1Mpc(メガパーセク:約326万光年)離れるごとに膨張速度が秒速74.3km大きくなることを示す。
 ハッブルの法則は、我々の銀河系が宇宙の中で特別な位置にあることを示すのではなく、その法則は、任意の2つの銀河が互いに遠ざかる相対速度も、その2つの銀河の間の距離に比例していることを示している。
 米・カーネギー天文台のウェンディ・フリードマンWendy Freedmanは、カナダのトロント生まれのカーネギー科学研究所のカナダ人の女性天文学者である。フリードマンらの研究チームでは、NASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」を用いて天の川銀河や大マゼラン銀河にあるケフェイド(ケフェウス座δ型変光星:「セファイド」などとも呼ばれる)を観測した。赤外線観測では宇宙空間の塵をも見通せるのでケフェイドの真の明るさを正確に求めることができ、その結果、距離測定もより精度が高いものになり、ハッブル定数が決定した。

 2012年10月5日、NASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」の観測から、宇宙の膨張率を表すハッブル定数が高精度で求められた。NASAのウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機WMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)の観測データと今回の結果とを合わせて、暗黒エネルギーの独自の測定も行われた。宇宙の膨張が加速していることが1990年代後半に判明しているが、その原因となる謎の力が「暗黒エネルギー」と呼ばれるものだ。WMAP衛星の9年間の観測ミッションによって、137.5億歳という宇宙の年齢が明らかにされた。その誤差は1パーセントほどと考えられており、「宇宙の年齢をもっとも正確に計測した」。宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎの全天マップは、2010年8月20日に最後の観測データを取得したあと、9月8日にエンジンの噴射を行って、これまでの軌道から太陽のまわりを回るパーキング軌道に投入され、ミッションを終了した。
 WMAPの観測データは、現在の宇宙を構成する物質の4.6%が通常の原子であり、残る大部分は実体のわからない2つのものが占めていることを明らかにした。そのうちの1つが、未だ検出されていない宇宙の23%を占めるといわれているダークマターであり、もう1つのダークエネルギーで、宇宙の72%を占めている、WMAPがその存在を確認したが、重力とは逆に斥力を働かせるそのエネルギーである。その正体は未だ不明である。

 研究者は、約138億年前のビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射CMB(cosmic microwave background)観測により、宇宙の歴史を解明しようとしてきた。CMBを研究する科学者たちは、過去を見ている。約138億年前のビッグバンの名残を、現在の地球から、つまり科学者が非常に遠くにある物体を見るということは、現在の宇宙ではなく観測できるレベルを宇宙の始まりとしている。さらにその先では、光速より速い速度で膨張しているため、マイクロ波背景放射による観測はできない。ビッグバンの勃発当時は、あらゆる素粒子が散乱し、光の直進を阻んでいたため、光子に頼る観測であるため観測の限界となっている。
 その測定であっても、これまで考えられてきたモデルの予測よりもはるかに速く膨張していることを示している。宇宙はCMBの観測に基づく計算で予測された値よりも9%速い速度で膨張している。
 今回の結果は、これまでの研究と同様に、宇宙が標準モデルの予測よりも急速に膨張していることを示している。研究者らはこの結果をハッブル宇宙望遠鏡のデータと比較したが、結果は同じであった。
「初期の宇宙と後期の宇宙の膨張速度の違いは、現在の標準モデルには何か欠けているものがあることを意味 する」と、天体物理学者のシェリー・スユSherry Suyu氏は最近の研究についてプレスリリースで述べた。
 「それは例えば、ダークエネルギーや、新しい相対論的素粒子、まだ発見されていない新しい物理学かもしれない」
 科学者たちによる従来の物理学や観測においても、宇宙の約72%を占める不可解で目に見えない力、ダークエネルギーの本質が、解明されていない。このエネルギーは、暗黒物質の重力を圧倒しながら、膨張を加速させることができる。
 この極めて難しいダークの解明となれば、当然、新たな宇宙のモデルの構築につながる。

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  2)公転revolution
 宇宙のもっとも奇妙な性質のひとつは、そのエントロピーentropyが非常に低いということである。エントロピーとは無秩序さ、つまり乱雑ぐあいを表す指標なので、秩序が高い状態はエントロピーが低く、秩序が低い状態は、エントロピーが高いというこになる。「エントロピー増大の法則」は、物理学の「熱力学」第二法則の基本的な大原則の1つで、自然界のすべての物質が従う「超重要ルール」となっている。
 「エントロピー増大の法則」は、宇宙全体にもおよんでいる。宇宙は、そのはじまりから、徐々に乱雑さを増していくようにして進化してきた。 最初、ほんのわずかな、「宇宙の種」ともいうべきものが、秩序立った宇宙世界に急激に広がり、あちこちでガスが集まり、そこから星ができ、やがて星が集まって銀河ができ、さらに複雑な大規模構造ができてくる。この138億年かけて進んだこのような宇宙の発展は、無秩序な世界への移行でもあり、エントロピーが増大した結果とも言える。
 エントロピーは低いほうから高いほうへ増大するだけで、逆に減少することはありえない。あたかも「時間の矢」のように、一方向にしか変化しない。 実は、物理学で時間の不可逆性が信じられているのは、まさにこのエントロピー増大の法則があるからである。

 中世までは宇宙の中心は地球であり、天体は地球を中心にして動いているという天動説が主流の考えであった。16世紀のプロシア生まれのポーランドの天文学者・聖職者のニコラウス・コペルニクスNicolaus Copernicus(ラテン語名である。 1473年〜1543年)は、天体観測を続け、古代ギリシャ哲学をうけて地動説を主張する。このコペルニクス以降は太陽を中心としてその周りを惑星が回るという地動説が主流になっていく。
 アリストテレス(BC384年-BC322年)はプラトン随一の弟子であり、「学派の心髄」[要出典]とまで讃えられた。後年、師プラトンのイデア論theory of Ideas(イデアとは、ギリシャ語で「見る・知る」という意味の「idein」の派生語であるが、その学説は自ずと時代やソクラテス(BC469年頃-BC399年)など人ごとに変遷する。プラトン自身も「理念として個々が思い描いた、理想的な【それそのもの】と説く。そのプラトンの学説も初期・中期・後期などで変遷している。)を批判して、「イデアすなわち実体であり、現実の現象的世界に内在するものであって、現象みずからの発展によって実現されるもの」と考えた。
 アリストテレスは「エジプトやキュプロスでは見えるが北寄りの地方では見えない星があることに気付いた。月食にかかる影が丸いのは、南北に移動すると地球が丸いことの根拠とした。その一方、地上の物質の構成は水・土・火・空気の4基本元素から成り、天体は第5の元素エーテル【古代ギリシャでは、輝く空気の上層を表す】でできているとして、デモクリトスBC460年頃-BC370年頃)の原子説に反対する。しかし、天体は、変形せず永遠に回転し続ける性質をもつと看破している。
 後にマケドニア王フィリッポス2世に招かれて、後のアレクサンドロス大王の教育にあたった。 公転とは、天体が系(それぞれの条件の下にある物体の見方を表し、それらの物体の様々な変化を一定の範囲内に括れるもの)の重心の周りを回る現象のことである。惑星が太陽の周りを回る運動ばかりでなく、衛星が惑星の周りを回る運動や、太陽系が天の川銀河系を中心に回る運動などが公転である。
 1周するのにかかる時間を公転周期と呼ぶ。 銀河年Galactic yearとは、銀河回転(銀河の中心に対する銀河円盤の回転運動)において、太陽が中心の銀河の周りを回るのにかかる時間と定義される時間の単位で、約2億2500万年から2億5000万年と推定されている。太陽は50億年の存続期間であれば20回以上は周回していることになる。
  地球は太陽を公転し、太陽は天の川銀河の中心を周回し、その一方、天の川銀河はビッグバンで放出された放射線の流れの中を疾走している。地球は秒速600kmという猛烈な速度で宇宙空間を突き進んでいる。しかしながら、宇宙には中心があるはずだが、肝心な「ビッグバン」が起こった位置が判明していないので未だ不明である。しかも、「宇宙の果て」までを見渡す技術がないため、「宇宙の果て」があるかどうかも分かっていない。「宇宙の果て」さえ見つけられれば、宇宙の中心点は自ずと分かる。

 光行差aberrationとは、
 自転している地球の観測者から天体を見ると、天体の方向が当初の方向から観測者の自転方向にずれて見える。この現象を光行差と呼ぶ。18世紀のイギリスの天文学者ジェームズ・ブラッドレー James Bradley(グリニッジ天文台の第3代台長, 1693年-1762年)により発見された。ただ、天体の位置と運動の方向との関係により、変化量は異なるが、観測者が運動方向にずれる際の速度をν、観測者が当初天体を観測した際の入射光方向(角度)をθ、自転によりずれた入射光方向(角度)をθとすると、
  Sin(θ-θ) = v/c sinθ    の数式が成り立つ。

  この観察状態の頂点に観察される天体を置き、観察者が自転に伴い移動する距離を地球上の底辺とすれば、それを三角形に図形化すれば、底辺【隣辺】は地球、観察者が観察当初の天体までを高さを【対辺】、移動後の観察者の場所から天体までの距離を斜辺と呼べば、Sinθ【サインシータ】は、対辺 / 斜辺 となる。
 見える方向が真の方向からずれる量の最大値を光行差定数と呼ぶ。光速c、地球の平均の公転速度をvとすれば、光行差定数はv/cとなる。1976年の国際天文学連合総会で採択された値は~20.49552"である。その数字v/cが光行差を示す。
 つまり、観測者からは、光が観測当初より自転の方向により前進する速度ν(より傾いた)により生じた角度差でもある。 光行差には地球の公転による年周光行差、地球の自転による日周光行差、太陽系全体の運動による永年光行差がある。
 年周光行差はおよそ~20.5"程度、日周光行差はおよそ~0.3"程度である(記号 ″は秒角の単位、1回転 = 360度、1秒角は3600分の1度である)。 太陽系の8つの惑星の公転方向は一致しており、惑星の軌道がほぼ同一の平面内にある。これは、太陽系のでき方に密接に関係すると考えられている。 公転は自明なことと考えがちであるが、地球が公転していることを証明するのは極めて難しい。年周光行差や年周視差地球の公転運動のために、近くの恒星とその背景の遠い恒星との相対的位置に生ずるずれを言う。そのずれの大きさの値0.300"、1年間に天球上の天体は、視差楕円と呼ばれる楕円を描く運動するように見える。そのみかけの動きの大きさを三角視差とも呼ぶ。地動説を直接証明するだけでなく、三角測量と同じ計算方法で、恒星までの距離を測定することが可能となった。)はその証拠になりうるが、とても小さな量で体感できるものではない。にもかかわらず、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーJohannes Kepler(1571年-1630年)は、惑星の観測結果を筋道立てて分析することによりケプラーの法則を見出し、地球も太陽の周りを公転する天体の一つであることをはっきりさせた。
 天体の方向が真の方向から観測者の運動方向によってずれて見える。そのずれの角度が光行差である。「一年」を「周」って観測されるのが「年周光行差」である。18世紀のイギリスの天文学者ジェームズ・ブラッドレーJ. Bradley(1693年-1762年)オックスフォード大学で神学を修得したが、天文学を研究し、ロンドンの天頂を通過する、りゅう座ガンマ星の観測をしている時に、地球の軌道運動による光行差を1727年に発見した。これによって、地球が太陽を中心に運動していることがはじめて証明された。また光行差の値20.5秒角から、光速度を299,042km/s (現代の値 299,792.458 km/s)と算定した。ブラッドリーの観測結果では、観測したどの恒星からの光の速度はいずれも同じであった。 光の速さが有限であるため、静止している観測者と運動している観測者とでは光の見える方向にずれが生じる。そのため天体からの光も実際に向かってくる方向とは違って見えることになる。 
 その光行差には地球の公転による年周光行差、地球の自転による日周光行差、太陽系全体の運動による永年光行差がある。年周光行差はおよそ~20.5"(秒)程度、日周光行差はおよそ~0.3"程度である。その変化量は、天体の位置と運動の向きの関係により異なるが、例えば銀河系の中心にある天体を観測した場合、年周視差は約3000万分の1度という人間の目では観測できない途方もない小さい値になる。 
 視差parallaxとは、二つの異なる地点から見た天体の位置(方向)の差である。地心から見た位置と地表から見た位置のずれを地心視差と呼ぶ。天体が天頂にある時は、地心視差は0になる。天体が近くにあるほど、視差は大きくなる。地平視差は、地球半径分だけ離れたときの地心視差である。特に赤道半径分だけ離れた場合の地平視差を赤道地平視差と呼ぶ。太陽と地球の場合は年周視差あるいは三角視差と呼ばれる。年周視差は宇宙の距離測定において重要な役割を果たすため、天文学では、星の距離を求める手法を一般的に「視差」と呼ぶ慣習がある。
 パーセクparsecは、年周視差が1角度秒(1″)となる距離で記号はpcである。 1 pc = 3.09 x 1013 km = 3.26 光年 黄道の極(こうどうのきょく)に含まれる天体は、黄道を中心に円軌道を描くように見える。黄道の極及び黄道面に含まれない天体は、天球上では楕円軌道を描くように見える。一般にこの軌跡を光行差楕円と呼ぶ。また、黄道に近い星ほど楕円の上を動くようになり、黄道付近の恒星は直線上を往復するように見える。
 年周視差は、星が本来ある方向から太陽のいる方向に少し変位して見える現象である。 年周視差は遠くの星(暗い星)と近くの星(明るい星)を同じ視野の中で観測してその相対的な位置の通年変化を検出する。年周視差は、星が本来ある方向から太陽のいる方向に少し変位して見える現象を示す。多くの人々が検出を試みたが、その年変化は1秒角以下と、あまりにも小さいため発見できなかった。
 年周光行差による星の移動は1年で最大約40秒角もある。また、年周光行差では、星は地球が公転運動で動く方向に変位して見える。つまり年周光行差の変位の方向は、年周視差で見える変異の方向より反時計回りに90°ずれた方向となる。このため、視差を調べるにはあらかじめ光行差の影響を除く必要があり、歴史的にも光行差のほうが先に発見された。
  『光行差の現象』は、アインシュタインの「特殊相対性理論」を用いれば旨く説明できると言う。アインシュタインは1905年論文の第Ⅱ部の「電気力学の部」で光の電磁波説に基づく波動論で、光行差の現象を相対性原理から直接、光行差の公式をより精密な形で導いていた。しかし、光はアインシュタインが、直前に光量子の論文を発表した「光量子説」に基づき、光を光速度で移動する粒子であると考えれば、電磁気学を持ち出さなくても、相対論的な運動学的知識のみで光行差の現象は完璧に説明できていたとされている。

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 3)ケプラーの法則
 デンマーク有数の有力貴族家系の出である天文学者ティコ・ブラーエ(1546年-1601年)はデンマーク王の援助を受け、ウラニボリ天文台で20年間にわたって精密な天体観測を行った。ティコの最大の功績は今までにないほどの精度で天体の位置の測定を行い、ケプラーの法則をはじめ、その後の天文学を進化させる契機となった。
 1599年、ティコは神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の皇室付帝国数学官としてプラハに在住した。この時代、助手としてケプラーを招請したあと、1601年に没した。このプラハ時代に、ケプラーの洞察力と論理力に感心したティコは、秘蔵していた膨大な天体観測記録を、複製することは許さなかったもののケプラーにだけは比較的自由に閲覧させていた。ケプラーの急死後、ティコの16年間にわたる天体観測記録を譲り受け、ケプラーの法則が体系化された。
 17世紀初頭、当時、神聖ローマ帝国に属した南ドイツのヴァイル・デア・シュタットで生まれたケプラーJohannes Kepler(1571年-1630年)は、太陽系の惑星の精密な観測結果を分析し、下記の3つの法則を発見した。このケプラーの法則が元になり、近代物理学の根幹を形成する切っ掛けとなり、イングランドの数学者・物理学者・天文学者ニュートンIsaac Newton(1642年- 1727年)の万有引力の法則を体系化させる理論的根拠となった。
 ニュートンは、ケプラーの惑星運動法則を、惑星が太陽のまわりを回り続けるのは、惑星と太陽との間に引力が働くためと力学的に解析した。また、その働く力に対する、物体の抵抗度合いの量が質量であり、物体に働く引力の大きさは、ケプラーの法則から、惑星と太陽の距離の2乗に反比例し、惑星の質量に比例するなどの基本法則を物理学を体系させた。さらに、この力は、惑星と太陽との間にだけに働くのではなく、天上の世界と地上の世界などあらゆる万物の間に働くとして、これを万有引力の法則と呼んだ。
 これにより物理法則の普遍性が見事に解説され、他の様々な事象についてもニュートン力学による解析が必然となり展開していった。 ニュートンは宇宙に存在する物体には重力と呼ばれる互いに引き合う力が働いていることを発見し、2つの物体の間に働く重力が物体の間の距離と物体の質量で決まることを万有引力の法則で示した。この法則によって、人類は重力の影響を定量的に分析する手法を手に入れ、さらにケプラーの法則と共に壮大な宇宙論を科学的に体系化する幕開けとなった。
 ロケットを打ち上げ、気象衛星などで地球環境を知り、国際宇宙ステーションを建造し、さらに未知の宇宙を探る科学探査機を飛ばすなど、現在、人類が進めている宇宙開発を支える科学技術には全てこのニュートンが発見した重力の理論が根底にある。
 ケプラーの法則は、すべて、太陽を不動と見なし、惑星間の相互作用を無視したうえで、万有引力の法則から導き出される。 そんな壮大なニュートンの重力理論に、一般相対性理論、つまりアインシュタインの重力理論は何をもたらしたか?どちらも重力理論と呼ばれているが、ただブラックホールなどの強い重力の世界では、アインシュタインの重力理論が嚆矢となった。
 重力波は重力の効果で生まれる時空の歪みが波として宇宙に伝わるという一般相対性理論が予測している現象である。この理論の予測では、物体が生み出す重力は重力波として光の速度で時空を伝わると言う。
 ニュートンの重力理論では重力は瞬間的に伝わるとしてきた(光速を超えることになる)。それがアインシュタインの重力理論では光の速度で伝わると説く。これも二つの重力理論の大きな違いである。一般相対性理論が予測する多くの現象は、その後の観測や実験で既に実証されているが、重力波だけはまだ観測されていいない。
 「重力波」は「波動現象」であるが、光など「電磁波」の仲間とは大きく異なる特徴を持つ。その名が示すとおり、重力波は「重力」を発生させる起源となる「質量」が運動することで起こる。重さを持つ物体は、その重力で周りの時空を歪める。その物体が運動をすると、周りの歪んだ時空が波のように宇宙空間に広がってゆく。これが重力波である。
 アインシュタインは、特殊相対性理論で、宇宙では光の速度はどんな観測者に対してでも一定であるとし、この関係は宇宙の何処でも成り立つとする。この「光速度不変の原理」は、観測者がどんな速さで動こうと、また光を発する光源がどんな速さで動こうと、光は常に秒速30万kmで進む。例えば、2つの星が互いの周囲を回る「連星」から発せられた光は、星が近づいた時も、遠ざかった時でも変わらず秒速30万kmであった。 時間と空間は不変ではなく、時間と空間は時空と呼ぶべき一つの世界を生み出し、時空は伸びたり縮んだりする存在であることを理論的に示した。
 重力の効果を時空の歪みと捉える一般相対性理論は、特殊相対性理論で発見された時空の世界に重力との関係を加えた理論になっている。質量をもった物体が存在すると、それだけで空間の曲がりを惹き起こす。さらにその物体が運動をすると、この空間のゆがみが光速で伝わってゆく。これが重力波で、その重力波はすべてを貫通し、減衰しないと考えられている。
 空間の曲がりは、質量が大きいほど大きくなる。質量が空間を曲げ、空間の曲がりが重力を惹き起こす。一般相対性理論では、大きな質量の太陽が周囲の空間を曲げ、太陽系の惑星はこの空間の曲がりに沿って太陽の周りを公転する。真空中であれば摩擦が生じないため、惑星は太陽の周囲を回り続ける。
 特殊相対性理論を完成させたアインシュタインは、天体の運動は重力が決めており、宇宙は重力が支配しているとして、重力を取り入れた一般相対性理論を完成させ、その後の天文学に大きな功績を残した。一般相対性理論におけるアインシュタイン方程式には、宇宙が膨張したり収縮したりすることの解が含まれていた。しかも「重力波」や「ブラックホール」の存在も予言していた。また「重力波の伝播速度は光速度に等しい」ことも含めて、その後の観測で、その正しさが証明されている。

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  第1法則(楕円軌道の法則)
 太陽を含めた天体の集団を「太陽系」と言う。太陽のまわりには地球と同じような惑星があり、太陽に近い順で、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8個の天体が確認されている。8個の惑星を直線上に並べると、水星から火星まではほぼ等間隔で並んでいるが、木星は火星から大きく離れ、太陽系の中でも大きさ、質量ともに最大の惑星である。その質量は、実に地球の318倍、直径は11倍以上、重力は2倍以上、しかも非常に強い磁場が存在し、探査機の観測成果としてオーロラも計測されている。
 木星の月(衛星)は4大衛星を筆頭に、70個以上が確認されており、周囲に小さな粒子が周回する輪が存在する。
 木星の質量と半径からその平均密度を求めてみると、水の約1.3倍しかない。地球型惑星と比べると、随分と小さい、むしろ太陽の平均密度に近い。地上や惑星探査機の観測によれば、木星は水素約90%にヘリウム約10%、つまり太陽とほぼ同じ成分からできている。どっしりと光って見える惑星の王者木星の実体は、非常に軽いものからできている。
 天文物理学astrophysicsとして面白くなるのはここからで、木星を覆う大気中をどんどん中心に向かい降りていくと、圧力が急速に増していく。地球同様、大気の量がどんどん増え、その重さが気圧となる。100kmほど降りると、その圧力のために液体状になった水素の層が現れる。この液体分子状の水素の層は厚さ約2万kmもある。木星の外側3割ほどを占め、その下部では圧力が300万気圧に達する。さらに下れば、水素が液体金属状に変化する。この層が約4万kmほど続き、その底では圧力は3600万気圧、温度は約2万度に達している。
 水素は陽子1個と電子1個で構成される最も単純な元素で、原子番号1であるが、様々な100を超える元素を生み出した源である。しかも想像していたよりもずっと複雑な物理的な特性がある。
 水素は宇宙でもっとも豊富に存在する元素であり、ダークマターとダークエネルギーを除けば、宇宙の質量の4分の3を占め、総量数比では全原子の90%以上となる。水素は常温・常圧では気体で、2つの原子が共有結合した分子だが、-253℃(絶対温度; 20.4K)以下に冷やすと液体になる。固体の金属水素を作るという目的は、未だ達成されていないようだ。
 (1気圧のもとで氷が溶ける温度を0℃、水が沸騰する温度を100℃と定めたのがセルシウス温度。原子・分子の熱運動が殆どなくなる温度を0K(ケルビン)と定めたのが絶対温度。「ケルビン」とは、イギリスの物理学者で、絶対温度目盛りの必要性を説いたケルビン卿ウィリアム・トムソンにちなむ。
 熱の正体は、分子や原子の熱運動エネルギー、温度を下げていくと、熱運動が鈍くなり、原子・分子の熱運動が殆どなくなる温度が -273.16℃、これより低い温度はないため、絶対零度と呼び、つまり運動エネルギーが最低になった状態を言う。
 絶対零度に、ようやく結論を得たのは、紆余曲折を経ながら、1954年、東京工業大学物理学教室の木下正雄と大石二郎が導き出した-273.16℃であった。 -273.16℃=0Kとなり、1Kの温度上昇は、1℃の温度上昇を意味するので。
  熱力学温度[K] = 摂氏温度[℃]+273.15   との式が成り立つ。
 宇宙の中で一番冷たい温度は摂氏-270±2℃であった。物理学上で最も低いとされる「絶対零度」よりも1℃だけ高い温度で、絶対零度以上で、原子は互いに反発し合うとも言える。)

 太陽系の惑星は、水星・金星・地球・火星のように、大きさは小さいが密度がある惑星を「地球型惑星」、木星・土星・天王星・海王星のように大きさはあるが密度が小さい惑星を「木星型惑星」と大別される。
 地球型惑星は、太陽よりの現在の水星・金星・地球・火星軌道付近で、塵や固体や氷が形成する円盤を主体とする微惑星から組成された考えられている。やがて、火星軌道付近までの距離のところで、次第に岩石や鉄を主成分とする原始惑星が組成され、原始惑星同士の衝突合体によっていくつかの大きな天体へと成長していった。いずれも、固体表面を有し、その密度はほぼ岩石程度の大きな値をもつ。
 木星型惑星は、水素とヘリウムを主成分とした塵やガスが集まってできた星間雲の中で密度が高く濃い部分が、自己重力により収縮することで形成された円盤を起原とする。これを原始惑星系円盤と呼ぶ。この中で原始惑星系円盤のガスを、より多く取り込んだものにより惑星が形成されたと考えられる。木星型惑星のうち、木星と土星のことを巨大ガス惑星と呼ぶ。天王星と海王星も、水素とヘリウムを5-10%含むガス惑星であるが、天体の主成分はH2Oの氷成分である。そのため天王星と海王星を巨大氷惑星(きょだいひょうわくせい)と呼ぶことも多い。
 太陽系には、惑星の他に、火星と木星の軌道の間に「小惑星」と呼ばれる多数の小さな天体や、海王星よりさらに遠くにある「太陽系外縁天体たいようけいがいえんてんたい)」と呼ばれる天体がある。
 
 惑星は太陽の周りを回る公転運動の速度が遠心力として働き外に飛び出そうとする。その一方、惑星は太陽の万有引力(向心力)により引かれる。その遠心力と太陽の万有引力が釣り合う一定軌道を惑星は公転する。そこで、双方の力が釣り合うには、惑星の軌道半径と惑星の公転速度の間に一定の関係が必要となる。

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  角速度(遠心力の公式)
 円の中心から物体に向けて引いた線のことを動径ベクトルといい、動径ベクトルが1秒間に回転する角度(回転角)のことを「角速度」と言う。角速度は、物体が1秒間で何°回転したか(動いたか)を示す。円周に沿って一定の速さで動く物体の動径ベクトルがt[s]間にθ[rad(ラジアン)]回転したとする。この時の求める角速度をω(オメガ)とすると、
 ω=θ / t [rad/s] の角速度の公式になる。
 角速度は単位[rad]を時間[s]で割っているので、角速度の単位は[rad/s]となる。
 物体が円周上をT[s]かけて1周する(T[s]を周期と呼ぶ。)。つまり、物体は周期T[s]の間に円周上2πr[m]移動することになる。円の半径をr[m]、物体の速度をv[m/s]とすると、その速度は、
 v = 2πr / T ・・・①
となる。
 物体が半径r[m]の円周上を1回転(1周)する時の回転角は2π[rad]となる。
 角速度の公式から
 ω = 2π / T・・・②
となる。
 ①の公式は、
 T = 2πr / v ・・・③
となる。
 ③を②に代入すれば
 ω = = 2π / (2πr / v) = v / r 
 これから
 v = r ω 
の角速度と円の半径に関する式が得られる。

 1秒間に2回の割合で回転させているということは、回転数=2ということであるから
 回転数 = 1 / 周期
なので
 2 = 1 / 周期 より
周期は0.5となり
 角速度の公式
 ω = 2π / T
より、
 = 2π / 0.5
 = 4π[rad/s]

となる。

 遠心力の公式
 遠心力の公式は、向心力の公式とまったく同じである。 遠心力を簡単に言うと、向心力と大きさが等しい。かつ、向心力とは反対向きにはたらく力であり、向心力の向き(円の中心)と逆向きには働く慣性力のことを言う。
 等速円運動している物体を外からみれば、中心向きの加速度をもって加速運動している。この力が向心力である。
 等速円運動している内部にいる立場からみれば、物体に働く力はつりあっている。この力が遠心力である。
 半径r[m]の円上を、質量m[kg]・速度v[m/s]で運動している物体であれば、この時、物体には、円の中心に向かって加速度(a[m/s]とする)が働いている。
 その加速度は
 a = vω  
 (この時のaを、向心加速度と呼ぶ。ωは角速度) となる。
 運動方程式より、上記の物体に働く、円の中心に向かう向心力Fは
  F = ma = mvω …【向心力】である。
 ここで、物体が円周上を1周するのにかかる時間をT[s]とすと
 v・T = 2πr また、
 角速度の公式
 ω = 2π / T
 また、ここに T = 2πr / v ③ を代入すると
 ω = = 2π / (2πr / v) = v / r ・・・④
  この2つの式から2πとTを消去すると、 v = rω ・・・⑤ となる。
  ⑤を【向心力】に代入し、さらに④を代入すると
  F = mvω = mrω2 = mv2 / r
 これが【向心力の公式】となり 、同一の【遠心力の公式】となる。

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  惑星の円運動
 円運動する物体の速度の大きさ v が、 軌道の半径 r と 角速度 ω との積として換算係数に頼らずに算出できる。
 完全な円軌道を公転する惑星は、計算上、遠心力と万有引力が釣り合う円軌道を回る。
 m=惑星の質量[㎏]、v=惑星の公転速度[m/s]、r=惑星の公転半径[m]、G万有引力定数【重力定数】=6.67408×10-11[単位はm3-1s-2]、M=太陽の質量[㎏]とする。

 惑星は、太陽をひとつの焦点とする楕円軌道上を動く。楕円とは、平面上のある2定点(焦点)からの距離の和が一定値となるような点の集合から作られる曲線である。それは、惑星の軌道が太陽を含む同一平面上にあることを示してもいる。
 この二つの焦点を通る線分を「長軸」といい、長軸を垂直二等分する線分を「短軸」と言う。また、長軸と短軸の半分の長さのことを、「半長軸」「半短軸」とも言う。つまり、太陽の位置は楕円の中心にはなく焦点の1つにある。
 宇宙空間は完全な真空ではない。微小な塵や宇宙空間の23%を占めるといわれているダークマターが漂っている。加えて、宇宙空間の72%を占めているダークエネルギーが力学的な作用をしている。そのため惑星の公転速度は、次第に落ちていく
。すると「遠心力F=mv2/r」なので、遠心力は弱まり、その一方「万有引力F’=GMm/r2」を構成する数字はいずれも定数であるため、万有引力は変化しない。したがって、遠心力 万有引力 となり惑星は太陽に近づく。
 万有引力の法則によれば、質量mとm′の2物体が距離rを隔てて作用する万有引力は、F’=Gmm′/r2で表される。ここでGは物質の種類に無関係な普遍定数であるため、万有引力定数と呼ばれる。そのGが余りにも小さい数値のため、地上の物体相互間の万有引力が感知できない。地球と地上の物体との間の万有引力をわれわれは、重力として素朴に感じている。
 (2つの物体に働く万有引力の大きさは、相互の質量の積に比例し、その間の距離の2乗に逆比例する。このときの比例定数を万有引力定数constant of gravitationと呼ぶ。重力相互作用の大きさを表す物理定数である。ニュートンの万有引力の法則において導入された。記号は一般に G で表される。
 アインシュタインの一般相対性理論の基礎方程式、アインシュタイン方程式においても比例係数としてこの重力定数が使われている。アインシュタイン方程式は重力場方程式とも呼ばれている。)
 普段日常生活で目撃する回転運動は、中心との距離が固定されている円運動が多い。しかし万有引力の世界では、中心との距離が固定されておらず、力が距離の2乗に逆比例する楕円運動になる。これは「角運動量保存の法則」から導くことができる。
 運動量momentumとは、物体の運動を量として表したもので、質量mの物体が速度vで運動しているとき、mvをこの物体の運動量と定義されている。体重60kgの人が、速さ1m/sで歩いている時の運動量は、60kgm/sという状態、この状態は、外から力が加えられない限り保存される。これが『運動量保存の法則law of momentum conservation』である。
 惑星の円運動の中心の太陽の引力が働く角運動量angular momentum (a)も保存される。その『角運動量保存則』は、ある回転軸に対して回転運動を行っている物体の運動に対して成立する保存則である。
 角運動量a=mrv  (m=回る物質の質量・r=回転する円の半径・v=回転速度)
 この運動量aが一定になる。つまり、惑星の公転半径を1/2にすると回転速度は2倍となり速くなる。
 つまり、角運動量a=m×r/2×2v=mrv=一定 となる。
 また、遠心力F = a2/mr3
 太陽と惑星の間にはたらく引力は、太陽の質量に比例し、惑星の質量にも比例し、太陽と惑星との距離の 2乗に反比例する。
 万有引力F’= G M m / r2

 角運動量a・万有引力定数G・太陽の質量M・惑星の質量mは何れも変化しない一定値であるから
 ① 遠心力F= a2/r3
 ② 万有引力F’= a/r2
 ①の式から公転する惑星に働く遠心力は、軌道半径rの3乗に反比例する。遠心力は、元々 F = mv2 / r であり、回転半径rに反比例し、速度の2乗に比例する。そして、惑星の公転速度は、回転半径rに反比例する。つまり、公転半径が1/2になると遠心力は2倍となり、更に公転速度が2倍になり遠心力は4倍になる。この2つの効果を合わせると、遠心力=2倍×4倍=8倍となる。

 宇宙空間に漂う微小な塵の影響で惑星の公転速度が落ちると、遠心力が弱まるため太陽の万有引力によって引き寄せられる。太陽に近づくと今度は、回転半径が短くなるため公転速度が速くなり、遠心力が強くなる。この2つの効果を合わさり惑星の遠心力が、太陽からの万有引力に勝れば遠ざかる。太陽から遠ざかると遠心力が弱まるため、再び万有引力の方が優勢となり惑星は太陽に寄せられる。これを繰り返しながら、惑星は楕円軌道を公転する。

 惑星として残っているものは楕円軌道を描いているが、円に近い楕円軌道を描く。長軸が短軸に比べて細長い楕円軌道を描くような物体は、他の物体の軌道と交わり衝突し合体してしまうからである。円に近い楕円軌道を描く物体だけが残り、それが水金地火木土天海の8つの惑星となった。そのため、太陽系の8つの惑星の公転方向は一致しており、惑星の軌道は太陽を含むほぼ同一の平面内にある。これは、太陽系のでき方に密接に関係すると考えられている。
 しかも、ケプラーの法則は、惑星と衛星の間のみならず人工衛星などの間でも成立する。このケプラーの法則の精緻さにより、天動説に対する地動説の優位を決定的なものにした。それまでは、ニコラウス・コペルニクスによって地動説が唱えられた以降でも、地動説に基づく惑星運動モデルは、従来の天動説モデルと比べても、理論上優れたものとは言えなかった。
 しかしケプラーの法則により、地動説モデルは天動説モデルよりも、はるかに正確に太陽系の軌道理論を体系化し、しかも地球含む惑星の形が、真円ではないことを証明した。

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  第2法則(面積速度一定の法則)
 角運動量保存則は、ある軸に対して回転運動を行っている物体の運動量で成立する保存則である。その保存則が惑星では「面積速度一定の法則」として成り立つ。
 実は面積速度一定の法則は万有引力に限らず、中心力運動ならば通常成立する法則である。 具体的な軌道の形や、中心力の種類に関わらず成立する。これは中心力が働く運動量に共通する著しい特徴の一つである。
 物体が中心力だけの作用を受けて運動する場合には、力の中心のまわりの角運動量は一定である。
 この角運動量が保存されるのは、
 円運動の場合、回転軸を中心とした角運動量(L)が、
 回転半径(r)、運動している物体の質量(m)、回転している速さ(v)の3つの量の積だからである。
  L=r×m×v

 角運動量は外から力が働かなければ一定量として維持される。これが『角運動量保存の法則』である。
 例えば、運動している物体の質量は変わらずに、つまり回転半径が縮まれば、回転速度は増すのである。
 回転運動をしている物体は、回転中心からその物体までの距離と、物体のもつ運動量(質量と速度をかけた量)をかけた、「角運動量」という量をもっている。外部から力を受けない限り、角運動量は保存される。これを「角運動量保存の法則」と言う。

 惑星と太陽とを結ぶ線分(動径)が単位時間に描く面積は、一定である。面積速度一定とは、それぞれの惑星の単位時間当たりの移動面積が等しいことを示す。惑星の運動は、中心力のみを受けた物体の運動であるため、「中心力のみを受けた物体の運動における面積速度一定則が成り立つ」。

 面積速度一定の法則
 動径とは太陽と惑星を結ぶ線分を意味する。文字通り「動径」=「動く半径」である。動径は刻々と変化していく。また、地球が公転する軌道は楕円軌道であり、太陽は楕円の二つある焦点の一つにある。しかし、他の焦点には存在しない。 惑星はこの太陽からの万有引力を受けて、太陽の周りの楕円軌道を周回する。
 惑星はこの楕円軌道のため、動径の長さ r が変化するため、その速さⅴを調節しながら運動することになるが、その運動の様子は、上で述べたような条件(面積速度一定)に従う。
 すなわち、面積速度一定の法則とは、惑星が太陽の周りの楕円軌道を周回するとき、時間が同じであれば、いずれの面積も等しいということになる。

 面積速度の式
 この面積速度は次の式で示される。
 動径長さ r 、惑星の速さ ⅴ 、動径と速度がなす角度の大きさを θ とする。
 三角関数の面積式から
 惑星から太陽の距離(動径r)と惑星の速さv が成す角度θから、sinθにより、斜辺(動径)から対辺(三角形の高さ)を算出し、求める面積速度を三角形の 面積として計算できる

  底辺 × 高さ ÷ 2 = r × (v sinθ) ÷ 2

  すなわち、

          1/2rⅴsinθ
   sinθの角度数直角三角形の動径の長さが分るため、三角関数を使えば、その対辺(高さ)などが算出され、面積速度が求められる。
 sinθ  1°  2°  10°  30°  40°  50°  60°  70°  80°
 角度関数  0.0175  0.0349  0.1736  0.5000  0.6428  0.7660  0.8660  0.9397  0.9848

  第3法則(調和の法則)
  惑星の公転周期Pの2乗は、軌道の長半径(楕円の長軸の半分)aの3乗に比例する。その比はほぼ一定である。
  a3 / p2 = const(一定)
 つまり、太陽からの距離が遠い惑星ほど一周するのに時間を要す。それは、惑星が太陽の万有引力を向心力として円運動している天体だと言うことを示す。

 惑星の公転周期をT、惑星と太陽の軌道の長半径をaとすると、a3:T2の値はどの惑星でもほぼ同一に近い。
 ここで、公転周期の単位としてを、惑星と太陽の軌道の長半径の単位として天文単位(AU)を使うと、地球の公転周期は1年、地球と太陽の軌道の長半径は1 AUとなるので、ケプラー第3法則の比の値は1ということになり、他の惑星との比較においても極めて分かり易くなる。
 AU(astronomical unit)は、長さの単位で、しかも定義定数である。地球と太陽の軌道の長半径を1AUとする、英語が端的に示すように天文学単位として用いられる。正確には 149,597,870,700m である。現在では、ケプラーの第3法則から求められた万有引力定数と太陽質量をもとに、地球と太陽との平均距離は、1.000000031AUに修正された。
 例えば、金星の公転周期は0.6152年、太陽との軌道の長半径は0.7233AUだから、ケプラー第3法則の比の値は0.9998、木星の公転周期は11.862年、太陽との軌道の長半径は5.2026AUだから、比の値は1.0008である。
 こうして求めた太陽までの軌道の長半径は、1.49597870×1011m、約1億5000万kmである。
 ただし、地球やその公転軌道は、完全な円ではないので、この距離は軌道の長半径である。地球半径は、天文学において地球の赤道における半径で示される。この地球と太陽間の軌道の長半径は、地球半径の約23,500倍である。
 ケプラー第3法則の比の計算式は、地球と金星の距離(a)を、電波の跳ね返りに要する時間から正確に求め、下のように地球と太陽の距離)、地球の公転周期(Te)、金星の公転周期(Tv)の間に、ケプラーの第3法則の式を適用すると

   地球一一一(a)一一一火星一一一一一(X-a)一一一一一一一太陽

   X3 / Te2 = (X-a)3 / Tv2  【Te ; 地球の公転周期、Tv ;金星の公転周期】

 これらの3法則が成り立つときの両天体間の力はニュートンが唱えた万有引力であり、このケプラーの法則は後に、ニュートンによる「物質には互いに引きあうという性質があり、2つの物体の間には質量に比例し、距離の2乗に反比例する引力が働く」万有引力則や力学確立の基礎となった。

 天文学者ケプラーが、ティコ・ブラーエ (1546年-1601年)の惑星の運動の観測データを解析することにより、コペルニクスの地動説を体系化し、ケプラーの法則を数学的なモデルとして構築した。ガリレオはケプラーの影響を受けて、自ら発明した望遠鏡により地球が動いていることを観測した。
 ガリレオは、重力による落下運動や振り子の運動の実験により、その法則を数学的に表現した。ニュートンの運動法則の第一法則である「慣性の法則」は、ガリレオが発見した。
 ガリレオは「自然という書物は、数学という言葉で書かれている」という至言を残した。

 17世紀、ニュートンは、自ら発明した微積分を用いて、天体運動が万有引力によることを数学的に示した。加えて、あらゆる力学的な運動を、ニュートンの運動法則の第二法則である運動方程式(微分方程式)によって解明した。運動方程式を解くことで運動力学が証明され、新たな力学の存在が予測された。

 力学の基礎理論は、ニュートンによって完成されたと思われていたが、20世紀の初頭に、量子力学が生まれ、原子や素粒子の世界ではニュートンの力学がもはや通用しないことが明らかになった。しかし、現代においてもニュートンの力学は、様々な分野で利用されており、現在でも有用であることに変わりはない。
 例えば、アインシュタインの「特殊相対性理論」は、重力波が光速で伝わるなど、ニュートン力学を修正したが、ニュートン力学を含んでいなければ成立し得ない、新たな物理学の誕生であった。
 「時空の歪みが極限まで大きくなると、ついに光さえも飲みこまれ二度と抜け出せない特異な領域がつくられる」と、「ブラックホール」の存在を予言した「一般相対性理論」もまた、重力が弱いレベルでは、ニュートンの重力理論と完全に一致している。

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